15 / 29
Ωの少年・レイン
15
しおりを挟む
「何故、αだからと嫌われたのか分からない」
レインと出会った日から一週間が経ち、アンバーがふとそんなことを言ったのが始まりだった。
「……αがしてきたことの歴史を考えれば分かるのでは?」
ダリウスは呆れた様な目線でアンバーを見る。しかし、それでもアンバーには理解できなかった。
「それは過去の話だろう?今は違う」
「はぁ……?」
ダリウスは本を読む手を止め、険しい目つきでアンバーを睨みつける。
「本気でそう思っているのなら、考えを改めるべきです」
「何故だ?」
「Ω差別なんて、国や地域によってはまだいくらでもあります。オステルメイヤーや、それこそ全性別平等を掲げるリリーシャとは違うのですよ」
ダリウスの言葉に対しアンバーは冷笑を浮かべた。
「リリーシャが全性別平等だと?それこそ本気で言っているのか?」
アンバーは冷たい目でダリウスを見ながら続ける。
「Ωの方がよっぽど優遇されている!」
「法律は性別関係なく全て平等で、民の間にもその意識が浸透している。何が優遇されているというのです?」
「皇帝はα嫌いのβだ」
「答えになっていませんし俄には信じ難いですが、そうなのだとしたらそれを表に出さない聡明な方なのでは?」
バチン。乾いた音が部屋に響いた。
「何も分かっていない……」
左頬を抑えながら呆然とするダリウスを他所に、アンバーは部屋を出ようとする。
「アンバー……!」
ダリウスの声に、アンバーが振り返ることはなかった。
屋敷を飛び出したはものの、アンバーに土地勘があるわけではなかった。
どこで時間を潰したものかと考えた末、アンバーは周辺を案内された際に見かけた茶屋へと向かうことにした。
むすっとした顔で街へと向かうと、休日ということもあり人通りはそこそこにあった。結婚式がこじんまりしたものだったこともあり、アンバーの顔はまだ民衆にはそれほど知れ渡っている訳ではないらしい。特に声をかけられることもチラチラと見られたりすることもなく、快適に目当ての店へと記憶を頼りに歩みを進める。
曲がり角を曲がったところで、その店と共に見覚えのある影がアンバーの目に映る。
アンバーは思わず身を隠そうとするが、それよりも早く相手は彼に気がついた。
「なっ、ジジイ!」
相手、レインは駆け寄ると、いきなりアンバーに怒鳴りかかる。
「なんでここにいるんだよ!」
「それはこちらの台詞だ。何故ここにいる。院から抜けていいのか?」
その言葉に、レインは痛いところを突かれた様に焦った顔になる。
「な、なんだっていいだろ!?」
「良くない。私は大人だ。子供を安全が確認できない状況に置くわけにはいかない。ほら、院に帰るぞ」
踵を返そうとするアンバーを止める様に、レインは彼の服の裾を掴む。
「……それは嫌だ」
「何故だ?」
「……家出してきたから」
レインは気まずそうに言う。
(こいつもか……)
自分も同じ立場故とやかく言えなくなったアンバーは、はぁっと諦めた様にため息をつくと、レインに対し代替案を突きつけた。
「ならその茶屋に居ろ」
「……見逃してくれるのか?」
「ああ、私も一緒に入るからな?」
そう簡単には理想通りにならなかったレインは、アンバーに文句を言う。
「全然見逃してくれてねーじゃん!」
「嫌なら今すぐ院に戻るか?」
レインはうっと押しだまると、悩んだ末茶屋へと入って行った。
「……オステルメイヤーの字は分からん。適当に頼め」
そう言ってアンバーは共通語の載っていないメニューをレインに押し付ける。
「あのな……俺が勉強得意な方に見えるか?」
「まだ貴様の方が読めるだろう?」
そう言われ仕方なくメニューの解読を始めたレインは、なんとか理解できた普通のお茶を二つ注文する。
「……勉強はしたほうがいいぞ」
「全く読めないジジイに言われたくねぇよ」
お茶が運ばれてくるまでの数分間、気まずい沈黙が流れた。お湯の沸く音や他の客の声が、更に気まずさを助長する。
やっと運ばれてきたお茶に救われた思いになりながら、二人は時間が経つのを待つかの様に座っていた。
「……なあ、ジジイはなんであそこにいたんだよ」
レインの質問に、今度はアンバーが痛いところを突かれる。
「……お前と一緒だ」
その回答に、レインは意外そうな顔をする。
「家出ってことか?なんで?」
「……ダリウスといざこざがあっただけだ」
「ダリウス様と?ケンカ?離婚?まあ、どうせジジイが悪かったんだろうけど」
「ケンカだし、離婚はどうせその内されるだろうな。……にしても、ダリウスのことは信用しているのか?あいつもαだろう?」
「ダリウス様は……、カ、カイ様が信用してたから……」
つくづくカイは信用されているな。頬を少し染めるレインを見てアンバーはそう思う。
再びの沈黙が流れ始める前に、アンバーは呟くようにレインに尋ねた。
「……何故αが嫌いなんだ?」
「へ?」
想定外の質問に、レインは素っ頓狂な声を出す。
「『何故、αだからと嫌われたのか分からない』と言ったところから言い争いが始まったんだ。私の周りではむしろΩの方が愛されていた。だからダリウスの言うことが分からなかった」
窓の外を眺めながら、アンバーはポツポツとそう言う。
「……それはジジイの周りの方が珍しい。ジジイの言ってることが信じられない程度には」
「……やはりそうなのか。差し支えなければ教えてくれないか?何故αを嫌うのか。きっと私はこのままではいけない」
レインやダリウスの言葉に、アンバーは自身の感覚を疑い始めていた。
アンバーに真剣な眼差しでそう言われたレインは暫く悩んだ末、自分の過去を語り出した。本当に幼い頃は愛されていたこと。性別が分かった日から父親や兄達の態度が変わったこと。自分が受けた扱いは決して珍しくないこと。
「……私が無知だっただけなのだな」
レインの人生に胸が痛んだことや、自身の無知に対する羞恥を隠すようにしながら、アンバーはそれだけ言った。
「αなんてそんなもんだろ。同情だけはすんなよ」
レインはそう吐き捨てるが、また流れ始めた沈黙に耐えかねて逆に聞き返す。
「ジジイはなんでΩの方が優遇されてるって思ったんだよ。リリーシャで生きてたら『みんな平等』だって思うはずだろ」
アンバーは正直あまり答えたくはなかった。今まで自分の弱みを見せることは性格上出来なかった。
それでも、レインは腹を割って話してくれたのだからと重い口を開いて語り出す。
「色々とありはするが、一番の理由は……まあ『名前』だな」
「名前?」
予想だにしない理由に、レインは聞き返す。
「ああ。子を愛する親は皆、子の名前を必死になって考えるだろう?王族だからな、生まれてすぐ性別は分かった。Ωの兄弟は、兄は輝く者という意味の『リュミナス』、弟は太陽を意味する『エリオス』と名づけられた」
「じゃあ、アンバーは?琥珀だろ?なんで琥珀なんだ?」
アンバーは自分に言い聞かせるかのように言う。
「金髪だった。それだけだ。αのお前の名前に意味なんてないといつだったか父に……いや、皇帝に言われたな」
夕日に照らされたアンバーの髪は、確かに琥珀の様にキラキラしていた。
レインは悪いことを聞いたと思ったのか、静かに俯く。同じ境遇にいたレインには、アンバーも父親に『父と呼ぶな』と言われていたことがすぐに分かった。
「俺ですら『恵みの雨』なのに……。どいつもこいつも、碌でもない親ばっかだな……」
レインは悔しそうにそう言う。
アンバーはこんなことを人に話したのは初めてだった。ふっと笑いながらアンバーは問いかける。
「……孤児院はどうだ?」
突然の質問に動揺しながらも、レインは答えた。
「前までよりずっといい。本当の家族みたいだ……」
「なら、帰らない理由はないのではないか?」
アンバーの言葉に、レインはハッとする。
店を出ると、日は沈み始めたもののまだ明るさが残っていた。
「おいジジイ!来週は絶対に院に来いよ!みんながお前が来ないって泣くから家出する羽目になったんだぞ!」
そう言い残すと、レインは孤児院へと走っていった。
レインと出会った日から一週間が経ち、アンバーがふとそんなことを言ったのが始まりだった。
「……αがしてきたことの歴史を考えれば分かるのでは?」
ダリウスは呆れた様な目線でアンバーを見る。しかし、それでもアンバーには理解できなかった。
「それは過去の話だろう?今は違う」
「はぁ……?」
ダリウスは本を読む手を止め、険しい目つきでアンバーを睨みつける。
「本気でそう思っているのなら、考えを改めるべきです」
「何故だ?」
「Ω差別なんて、国や地域によってはまだいくらでもあります。オステルメイヤーや、それこそ全性別平等を掲げるリリーシャとは違うのですよ」
ダリウスの言葉に対しアンバーは冷笑を浮かべた。
「リリーシャが全性別平等だと?それこそ本気で言っているのか?」
アンバーは冷たい目でダリウスを見ながら続ける。
「Ωの方がよっぽど優遇されている!」
「法律は性別関係なく全て平等で、民の間にもその意識が浸透している。何が優遇されているというのです?」
「皇帝はα嫌いのβだ」
「答えになっていませんし俄には信じ難いですが、そうなのだとしたらそれを表に出さない聡明な方なのでは?」
バチン。乾いた音が部屋に響いた。
「何も分かっていない……」
左頬を抑えながら呆然とするダリウスを他所に、アンバーは部屋を出ようとする。
「アンバー……!」
ダリウスの声に、アンバーが振り返ることはなかった。
屋敷を飛び出したはものの、アンバーに土地勘があるわけではなかった。
どこで時間を潰したものかと考えた末、アンバーは周辺を案内された際に見かけた茶屋へと向かうことにした。
むすっとした顔で街へと向かうと、休日ということもあり人通りはそこそこにあった。結婚式がこじんまりしたものだったこともあり、アンバーの顔はまだ民衆にはそれほど知れ渡っている訳ではないらしい。特に声をかけられることもチラチラと見られたりすることもなく、快適に目当ての店へと記憶を頼りに歩みを進める。
曲がり角を曲がったところで、その店と共に見覚えのある影がアンバーの目に映る。
アンバーは思わず身を隠そうとするが、それよりも早く相手は彼に気がついた。
「なっ、ジジイ!」
相手、レインは駆け寄ると、いきなりアンバーに怒鳴りかかる。
「なんでここにいるんだよ!」
「それはこちらの台詞だ。何故ここにいる。院から抜けていいのか?」
その言葉に、レインは痛いところを突かれた様に焦った顔になる。
「な、なんだっていいだろ!?」
「良くない。私は大人だ。子供を安全が確認できない状況に置くわけにはいかない。ほら、院に帰るぞ」
踵を返そうとするアンバーを止める様に、レインは彼の服の裾を掴む。
「……それは嫌だ」
「何故だ?」
「……家出してきたから」
レインは気まずそうに言う。
(こいつもか……)
自分も同じ立場故とやかく言えなくなったアンバーは、はぁっと諦めた様にため息をつくと、レインに対し代替案を突きつけた。
「ならその茶屋に居ろ」
「……見逃してくれるのか?」
「ああ、私も一緒に入るからな?」
そう簡単には理想通りにならなかったレインは、アンバーに文句を言う。
「全然見逃してくれてねーじゃん!」
「嫌なら今すぐ院に戻るか?」
レインはうっと押しだまると、悩んだ末茶屋へと入って行った。
「……オステルメイヤーの字は分からん。適当に頼め」
そう言ってアンバーは共通語の載っていないメニューをレインに押し付ける。
「あのな……俺が勉強得意な方に見えるか?」
「まだ貴様の方が読めるだろう?」
そう言われ仕方なくメニューの解読を始めたレインは、なんとか理解できた普通のお茶を二つ注文する。
「……勉強はしたほうがいいぞ」
「全く読めないジジイに言われたくねぇよ」
お茶が運ばれてくるまでの数分間、気まずい沈黙が流れた。お湯の沸く音や他の客の声が、更に気まずさを助長する。
やっと運ばれてきたお茶に救われた思いになりながら、二人は時間が経つのを待つかの様に座っていた。
「……なあ、ジジイはなんであそこにいたんだよ」
レインの質問に、今度はアンバーが痛いところを突かれる。
「……お前と一緒だ」
その回答に、レインは意外そうな顔をする。
「家出ってことか?なんで?」
「……ダリウスといざこざがあっただけだ」
「ダリウス様と?ケンカ?離婚?まあ、どうせジジイが悪かったんだろうけど」
「ケンカだし、離婚はどうせその内されるだろうな。……にしても、ダリウスのことは信用しているのか?あいつもαだろう?」
「ダリウス様は……、カ、カイ様が信用してたから……」
つくづくカイは信用されているな。頬を少し染めるレインを見てアンバーはそう思う。
再びの沈黙が流れ始める前に、アンバーは呟くようにレインに尋ねた。
「……何故αが嫌いなんだ?」
「へ?」
想定外の質問に、レインは素っ頓狂な声を出す。
「『何故、αだからと嫌われたのか分からない』と言ったところから言い争いが始まったんだ。私の周りではむしろΩの方が愛されていた。だからダリウスの言うことが分からなかった」
窓の外を眺めながら、アンバーはポツポツとそう言う。
「……それはジジイの周りの方が珍しい。ジジイの言ってることが信じられない程度には」
「……やはりそうなのか。差し支えなければ教えてくれないか?何故αを嫌うのか。きっと私はこのままではいけない」
レインやダリウスの言葉に、アンバーは自身の感覚を疑い始めていた。
アンバーに真剣な眼差しでそう言われたレインは暫く悩んだ末、自分の過去を語り出した。本当に幼い頃は愛されていたこと。性別が分かった日から父親や兄達の態度が変わったこと。自分が受けた扱いは決して珍しくないこと。
「……私が無知だっただけなのだな」
レインの人生に胸が痛んだことや、自身の無知に対する羞恥を隠すようにしながら、アンバーはそれだけ言った。
「αなんてそんなもんだろ。同情だけはすんなよ」
レインはそう吐き捨てるが、また流れ始めた沈黙に耐えかねて逆に聞き返す。
「ジジイはなんでΩの方が優遇されてるって思ったんだよ。リリーシャで生きてたら『みんな平等』だって思うはずだろ」
アンバーは正直あまり答えたくはなかった。今まで自分の弱みを見せることは性格上出来なかった。
それでも、レインは腹を割って話してくれたのだからと重い口を開いて語り出す。
「色々とありはするが、一番の理由は……まあ『名前』だな」
「名前?」
予想だにしない理由に、レインは聞き返す。
「ああ。子を愛する親は皆、子の名前を必死になって考えるだろう?王族だからな、生まれてすぐ性別は分かった。Ωの兄弟は、兄は輝く者という意味の『リュミナス』、弟は太陽を意味する『エリオス』と名づけられた」
「じゃあ、アンバーは?琥珀だろ?なんで琥珀なんだ?」
アンバーは自分に言い聞かせるかのように言う。
「金髪だった。それだけだ。αのお前の名前に意味なんてないといつだったか父に……いや、皇帝に言われたな」
夕日に照らされたアンバーの髪は、確かに琥珀の様にキラキラしていた。
レインは悪いことを聞いたと思ったのか、静かに俯く。同じ境遇にいたレインには、アンバーも父親に『父と呼ぶな』と言われていたことがすぐに分かった。
「俺ですら『恵みの雨』なのに……。どいつもこいつも、碌でもない親ばっかだな……」
レインは悔しそうにそう言う。
アンバーはこんなことを人に話したのは初めてだった。ふっと笑いながらアンバーは問いかける。
「……孤児院はどうだ?」
突然の質問に動揺しながらも、レインは答えた。
「前までよりずっといい。本当の家族みたいだ……」
「なら、帰らない理由はないのではないか?」
アンバーの言葉に、レインはハッとする。
店を出ると、日は沈み始めたもののまだ明るさが残っていた。
「おいジジイ!来週は絶対に院に来いよ!みんながお前が来ないって泣くから家出する羽目になったんだぞ!」
そう言い残すと、レインは孤児院へと走っていった。
55
あなたにおすすめの小説
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
いい加減観念して結婚してください
彩根梨愛
BL
平凡なオメガが成り行きで決まった婚約解消予定のアルファに結婚を迫られる話
元々ショートショートでしたが、続編を書きましたので短編になりました。
2025/05/05時点でBL18位ありがとうございます。
作者自身驚いていますが、お楽しみ頂き光栄です。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる