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運命じゃない二人
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「護衛はいらない。絶対に身分は割れないようにする」
「そういう訳にはいきません」
そういったやり取りの末、当然ながら護衛がついてきたせいだろうか。ダリウスは少し不満げな顔のままアンバーの手を絶対に離さんとばかりに握っている。
「離れたところからなのだし、そんな顔をするな」
「……二人きりがよかったのに」
そう言ってダリウスはまるで子供のように唇を尖らせる。
(ただ優しくしてくれた人間に一時的に執着しているだけだとは思うが……)
そう思いつつも、アンバーはにやけてしまいそうになるのを抑えるのに必死だった。アンバーとてαであり、αが人やものに支配欲や執着心を抱きやすいことは身をもって知っている。そして好いた相手がその矛先を自分に向けているのだから、嬉しくない訳がなかった。
「……勘違いするなよ、これは貴様との仲が悪くないことを表すためだからな」
そういった建前の元、定期的なお忍んでないデートに来ていたアンバーは、ダリウスに腕を絡める。
最初こそアンバーの悪評、年齢差、国力差などから不安が囁かれた結婚であったが、このところは作戦が功を奏して不仲の噂は聞かなくなり、街での立ち振る舞いのお陰でアンバーの暗い評判も薄まりつつあった。ダリウスの隠そうともしない恋する乙女のような表情と少しつっけんどんながらも照れ隠しにしか映らないアンバーの態度に、周りは微笑ましそうな表情をしている。
「ここは特に発展しているし、普段見るオステルメイヤー領とは雰囲気が違うな」
「港町ですからね。いろんな文化が入ってくる場所なのでどこか異国情緒に感じられるかもしれません」
この日、二人はオステルメイヤー屈指の港町メイフィオラ港へと来ていた。屋敷の周りなどとは様相が大分違うそこは、威勢のいい露店の店員の声や、観光客達で賑わいを見せている。
一通り街を周り終えた二人は、少し脚を休めるべく、入った店の店主に紹介された茶屋へと向かうことにした。
興味津々の子供の様にキョロキョロするアンバーの横で一応の確認の為に護衛の方を振り返ったダリウスは、そのことを後悔する。ダリウスを呼ぶハンドサインを出した護衛が少し離れた場所に見えたからだ。
「すみませんアンバー、何か急用のようです。先に茶屋へ行ってもらえますか?」
「ああ、構わんぞ」
ダリウスはすんなりと承諾したアンバーの手を、少し寂しそうにむすっとした顔をしながら離すと側を離れて行った。
海の見える場所にあるらしい茶屋へと近づいていくと、潮風が鼻をくすぐる。
「確かここを曲がれば……」
アンバーが道順の最後に差し掛かった時だった。
「や、やめてください!」
不意に聞き覚えのある声がアンバーの鼓膜を揺らした。その声に確かな動揺を覚えながらも、内容だけにアンバーは声のする方へと向かう。
「離しなさい!この方は高貴な御方で……」
そこには複数の男達に必死に抵抗する、Ωらしい。華奢で繊細な顔立ちの美少年と、それに引けを取らない華奢な身体つきの青年がいた。
「おい貴様、その者達を解放しろ」
そう言ってアンバーは二人に絡んでいた男の一人の手を捻りあげる。
「なんだお前っ!」
男達は一斉にアンバーの方を向く。内何人かは拳を握り締め、今にも殴りかからんばかりだ。
しかし、一人の男が呟くように言った一言で形成は逆転する。
「服が紫色……!?」
他の者達も、アンバーの服の裾にある程度の地位を持つことを示す紫色が入っていることに気がつく。それに伴ってよくみてみればアンバーはその場にいる誰よりも背が高く、筋肉量こそ劣りそうなものの、その威圧は凄まじい。
鋭い目つきで睨まれ、男達は面倒なことになる前に、とその場をそそくさと去っていった。
「ありがとうございます、助かりまし……」
少年についていた従者の青年の言葉が、振り返ったアンバーの顔を見た瞬間止まる。隣にいた少年もまた、驚きを禁じ得ない表情だ。
「……アンバー兄上?」
「……久しぶりだな、エリオス」
アンバーが助けた少年はここにいるはずのない、エリオス・ド・リリーシャその人だった。
「そういう訳にはいきません」
そういったやり取りの末、当然ながら護衛がついてきたせいだろうか。ダリウスは少し不満げな顔のままアンバーの手を絶対に離さんとばかりに握っている。
「離れたところからなのだし、そんな顔をするな」
「……二人きりがよかったのに」
そう言ってダリウスはまるで子供のように唇を尖らせる。
(ただ優しくしてくれた人間に一時的に執着しているだけだとは思うが……)
そう思いつつも、アンバーはにやけてしまいそうになるのを抑えるのに必死だった。アンバーとてαであり、αが人やものに支配欲や執着心を抱きやすいことは身をもって知っている。そして好いた相手がその矛先を自分に向けているのだから、嬉しくない訳がなかった。
「……勘違いするなよ、これは貴様との仲が悪くないことを表すためだからな」
そういった建前の元、定期的なお忍んでないデートに来ていたアンバーは、ダリウスに腕を絡める。
最初こそアンバーの悪評、年齢差、国力差などから不安が囁かれた結婚であったが、このところは作戦が功を奏して不仲の噂は聞かなくなり、街での立ち振る舞いのお陰でアンバーの暗い評判も薄まりつつあった。ダリウスの隠そうともしない恋する乙女のような表情と少しつっけんどんながらも照れ隠しにしか映らないアンバーの態度に、周りは微笑ましそうな表情をしている。
「ここは特に発展しているし、普段見るオステルメイヤー領とは雰囲気が違うな」
「港町ですからね。いろんな文化が入ってくる場所なのでどこか異国情緒に感じられるかもしれません」
この日、二人はオステルメイヤー屈指の港町メイフィオラ港へと来ていた。屋敷の周りなどとは様相が大分違うそこは、威勢のいい露店の店員の声や、観光客達で賑わいを見せている。
一通り街を周り終えた二人は、少し脚を休めるべく、入った店の店主に紹介された茶屋へと向かうことにした。
興味津々の子供の様にキョロキョロするアンバーの横で一応の確認の為に護衛の方を振り返ったダリウスは、そのことを後悔する。ダリウスを呼ぶハンドサインを出した護衛が少し離れた場所に見えたからだ。
「すみませんアンバー、何か急用のようです。先に茶屋へ行ってもらえますか?」
「ああ、構わんぞ」
ダリウスはすんなりと承諾したアンバーの手を、少し寂しそうにむすっとした顔をしながら離すと側を離れて行った。
海の見える場所にあるらしい茶屋へと近づいていくと、潮風が鼻をくすぐる。
「確かここを曲がれば……」
アンバーが道順の最後に差し掛かった時だった。
「や、やめてください!」
不意に聞き覚えのある声がアンバーの鼓膜を揺らした。その声に確かな動揺を覚えながらも、内容だけにアンバーは声のする方へと向かう。
「離しなさい!この方は高貴な御方で……」
そこには複数の男達に必死に抵抗する、Ωらしい。華奢で繊細な顔立ちの美少年と、それに引けを取らない華奢な身体つきの青年がいた。
「おい貴様、その者達を解放しろ」
そう言ってアンバーは二人に絡んでいた男の一人の手を捻りあげる。
「なんだお前っ!」
男達は一斉にアンバーの方を向く。内何人かは拳を握り締め、今にも殴りかからんばかりだ。
しかし、一人の男が呟くように言った一言で形成は逆転する。
「服が紫色……!?」
他の者達も、アンバーの服の裾にある程度の地位を持つことを示す紫色が入っていることに気がつく。それに伴ってよくみてみればアンバーはその場にいる誰よりも背が高く、筋肉量こそ劣りそうなものの、その威圧は凄まじい。
鋭い目つきで睨まれ、男達は面倒なことになる前に、とその場をそそくさと去っていった。
「ありがとうございます、助かりまし……」
少年についていた従者の青年の言葉が、振り返ったアンバーの顔を見た瞬間止まる。隣にいた少年もまた、驚きを禁じ得ない表情だ。
「……アンバー兄上?」
「……久しぶりだな、エリオス」
アンバーが助けた少年はここにいるはずのない、エリオス・ド・リリーシャその人だった。
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