世界で1人の死者

第５章 希望の光

第3回目のじゃんけん大会の開示が行われた。
僕の対戦相手は、僕の卒業した中学校に通っている中学2年生の女の子だった。
試合は現地ですることになり、当日を迎えた。
現地に行き、その女の子を探したが全然見当たらなかった。
このままでは不戦勝となってしまう直前で、やっと会えた。
その女の子は暗く、無口だった。
いざ、試合を始めようとなった時にその女の子は口を開けた。
「自分、グー出すのでパー出してください」と。

僕は呆れた。またこのパターンかよと。
気持ち悪い奴らばかりだなと思ったし、全く信用もしていないから僕は
「なんで？」と問いただした。

その女の子は「死にたいから。」と冷たく言った。
たしかに、死にたいからわざと負けるために相手に勝ってもらうというのはわかる。

しかし、そうであればそもそもこの会場まで来なければ試合不参加として殺されてしまうのだ。
なので来る必要が無いのである。
だから結局は勝ちたいのかと僕は思った。
こんな奴には余計に負けたくないなと思った僕は絶対に出してたまるかと思った。
相手が僕にパーを出したがってるということは
おそらく、チョキを出してくると思ったから
僕はグーを出すことにした。

試合が開始された

僕はグーを出した。
相手もグーだったのだ。

僕は目を疑った。
なぜ本当にグーを出したのだろうと。

あいこなので試合は続行

あいこで、しょ
僕はグー
相手もグー

相手はこちら凄く嫌な目で見つめてきた。

あいこで、しょ
相手はグー

僕はチョキを出した。

僕の負けだ。
相手は僕の頬におもむろに平手打ちをしてきた。
すごく痛かった。こんなのだったら負けた方が絶対良かったと思うくらいに。

相手は「なんでパー出さないの？ばかじゃないの？」とすごく暴言を吐いてきた。すごく怒っていた。

だから僕も言い返した。
「なんで今日ここにきたの？」
相手は「何が言いたいの？」と怒りながら言ってきた。

僕は落ち着いて
「君が本当に死にたいのであれば、ここに来なければ殺される。


本当は怖いんじゃない？


死ぬのが。」

と言うと
女の子は黙った。

僕は
「優しいね、自分が犠牲になってまで他の人を救いたいんだよね。

僕は思うよ。
じゃんけん大会が開催されてからこの世の中はおかしくなったなって。
もともと綺麗な世の中とは言わないけど、この大会のせいで人間の嫌なところ、汚いところ、いやらしいところ、たくさん見えるし感じる。

だから君みたいな人はいないと思ってた。」

女の子は号泣しだした。

なぜか僕も泣きそうになった。

ここで泣くと恥ずかしいので我慢して、
「もう帰りな、君は優しいから大丈夫。」
と言って、僕は帰った。



家に帰り、僕はまた負けてしまったなと
笑顔で、水で服を濡らした。