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1・始業前
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静粛に。
皆さん、この度は『性奴隷養成学園男子部』への御入学おめでとうございます。
本校はその名の通り、政府公認性奴隷、人々へ性的奉仕を行う専門家を育成するための教育機関です。女子部とは違ってまだ歴史が浅い男子部ですが、昨年の四月に社会へ飛び立っていった一期生たちはすでに様々な方面で活躍しております。先月卒業したばかりの二期生も、これから良い結果を聞かせてくれることでしょう。
さて、ここに、そんな優秀な一期生たちが卒後どのような生活をしているのかを記録したPVがあります。卒業生及びそのご主人様の全面協力のもと撮影されたもので、プロの男子性奴隷のありのままの生活を記録した貴重な映像資料です。今後は図書室に置いて自由に貸し出し・閲覧できるようにする予定ですが、今回は入学後初めてのロングホームルームですので、ここで上映いたします。後で感想文を提出してもらいますので、集中してしっかりと見ましょうね。
【一期生・浅倉涼の場合 進路:社長秘書】
トーキョーシティ某所に、超高層オフィスビルが聳えている。全面ガラス張りの摩天楼は空を孕み、周囲のビル群をゆったりと睥睨している。世界トップシェアを誇る某電子機器メーカー本社ビルだ。
よく晴れた朝。この日、浅倉涼はいつもよりもやや早く出勤した。
浅倉の外見的特徴を一言で表すなら「無難」だろう。中肉中背の身体にダークグレーのスーツを纏い、まったく染めていない黒髪をビジネスショートカットにして軽く整えている。目鼻立ちはバランス良くすっきりと整っているものの、とりたてて美しいわけではない。首から下がっている社員証には、彼の顔写真と名前、そして『第二秘書課』という所属名が記されている。
どこからどう見ても、どこにでもいそうな、ごく一般的な若手サラリーマンだ。
ただ、ワイシャツの襟からちらりと覗く赤い首輪だけが、少しばかり異質な雰囲気を醸し出していた。細い革製の首輪で、首の後ろあたりにバーコードのような黒い線が数本刻印されている。これこそが、彼が売却済みの政府公認性奴隷である証だった。
浅倉は慣れた様子でエントランスを通り、専用の直通エレベーターを使って最上階に向かった。
目的階に到着するまでの間、浅倉はすっと背筋をのばしたまま沈黙していたのだが、ふいにエレベーターの監視カメラの方を振り仰いだ。
「……もしかして、もう撮ってたりします?」
無論、答える声はない。ただエレベーターの駆動音が静かに響いているだけである。
けれど浅倉は、少し照れ臭そうに笑った。
「はは……いつもの汎用監視カメラじゃなくて、収音マイク付きの高性能なやつに置き換わってますね。見えますか? 僕の姿。とても鮮明でしょう。それも我が社の製品なんですよ。……いやなんだか、一人でナレーションするの結構恥ずかしいな。大勢のスタッフに囲まれるタイプの撮影は在学中の実習でたくさん経験したから慣れているんだけど」
エレベーターが最上階に着く。浅倉は今まで話しかけていた監視カメラに背を向けて、さっさとフロアに出た。
清潔で近未来的なデザインの、広い廊下。両側の壁には扉が並び、それぞれ『第一応接室』だの『社長室』だの『第二秘書課』だのといったプレートが掲げられている。
このフロアが、浅倉の主な仕事場だった。
「ここは、社長が日常業務を行ったり、大切なお客様をおもてなししたりするためのフロアです」
浅倉は廊下の片隅に置いてある観葉植物に向かって言った。大きな葉の影に黒い小型カメラが潜んでおり、浅倉の姿をじっと追尾している。
このカメラだけではない。床に、天井に、壁に。ありとあらゆるところにカメラが仕込まれ、それらが全て浅倉の方を向いている。
「秘書課のオフィスやロッカーもこの階にあります。ええと、後輩の皆さん。多分、そちらの手元に届くのは色々と編集だとか修正だとかが加えられたデータになっていると思うんですけれど、僕の働きぶりはわかると思います。皆さんの進路選択の参考になれれば幸いです。今日は一日、どうぞよろしくお願いします」
浅倉はそう言って、観葉植物に向かって丁寧に頭を下げる。その姿を別のカメラがとらえている。
身請け先の了解と協力を得て設置した多数のカメラによって、ありとあらゆる角度から卒業生が働く姿を撮影する。無論、会社の機密情報や撮影の事実を知らない人間が映り込む危険性も大いにあるが、それは編集時に強めの「ぼかし」を入れるという契約になっている。その代わり、卒業生は余計なことには気を回さずいつも通りに……いや、いつも以上に一生懸命働く姿を見せなければならない。
栄えある性奴隷育成学園男子部出身の、性的奉仕の専門家として。
がんばろう、と、浅倉は気を引き締めた。
皆さん、この度は『性奴隷養成学園男子部』への御入学おめでとうございます。
本校はその名の通り、政府公認性奴隷、人々へ性的奉仕を行う専門家を育成するための教育機関です。女子部とは違ってまだ歴史が浅い男子部ですが、昨年の四月に社会へ飛び立っていった一期生たちはすでに様々な方面で活躍しております。先月卒業したばかりの二期生も、これから良い結果を聞かせてくれることでしょう。
さて、ここに、そんな優秀な一期生たちが卒後どのような生活をしているのかを記録したPVがあります。卒業生及びそのご主人様の全面協力のもと撮影されたもので、プロの男子性奴隷のありのままの生活を記録した貴重な映像資料です。今後は図書室に置いて自由に貸し出し・閲覧できるようにする予定ですが、今回は入学後初めてのロングホームルームですので、ここで上映いたします。後で感想文を提出してもらいますので、集中してしっかりと見ましょうね。
【一期生・浅倉涼の場合 進路:社長秘書】
トーキョーシティ某所に、超高層オフィスビルが聳えている。全面ガラス張りの摩天楼は空を孕み、周囲のビル群をゆったりと睥睨している。世界トップシェアを誇る某電子機器メーカー本社ビルだ。
よく晴れた朝。この日、浅倉涼はいつもよりもやや早く出勤した。
浅倉の外見的特徴を一言で表すなら「無難」だろう。中肉中背の身体にダークグレーのスーツを纏い、まったく染めていない黒髪をビジネスショートカットにして軽く整えている。目鼻立ちはバランス良くすっきりと整っているものの、とりたてて美しいわけではない。首から下がっている社員証には、彼の顔写真と名前、そして『第二秘書課』という所属名が記されている。
どこからどう見ても、どこにでもいそうな、ごく一般的な若手サラリーマンだ。
ただ、ワイシャツの襟からちらりと覗く赤い首輪だけが、少しばかり異質な雰囲気を醸し出していた。細い革製の首輪で、首の後ろあたりにバーコードのような黒い線が数本刻印されている。これこそが、彼が売却済みの政府公認性奴隷である証だった。
浅倉は慣れた様子でエントランスを通り、専用の直通エレベーターを使って最上階に向かった。
目的階に到着するまでの間、浅倉はすっと背筋をのばしたまま沈黙していたのだが、ふいにエレベーターの監視カメラの方を振り仰いだ。
「……もしかして、もう撮ってたりします?」
無論、答える声はない。ただエレベーターの駆動音が静かに響いているだけである。
けれど浅倉は、少し照れ臭そうに笑った。
「はは……いつもの汎用監視カメラじゃなくて、収音マイク付きの高性能なやつに置き換わってますね。見えますか? 僕の姿。とても鮮明でしょう。それも我が社の製品なんですよ。……いやなんだか、一人でナレーションするの結構恥ずかしいな。大勢のスタッフに囲まれるタイプの撮影は在学中の実習でたくさん経験したから慣れているんだけど」
エレベーターが最上階に着く。浅倉は今まで話しかけていた監視カメラに背を向けて、さっさとフロアに出た。
清潔で近未来的なデザインの、広い廊下。両側の壁には扉が並び、それぞれ『第一応接室』だの『社長室』だの『第二秘書課』だのといったプレートが掲げられている。
このフロアが、浅倉の主な仕事場だった。
「ここは、社長が日常業務を行ったり、大切なお客様をおもてなししたりするためのフロアです」
浅倉は廊下の片隅に置いてある観葉植物に向かって言った。大きな葉の影に黒い小型カメラが潜んでおり、浅倉の姿をじっと追尾している。
このカメラだけではない。床に、天井に、壁に。ありとあらゆるところにカメラが仕込まれ、それらが全て浅倉の方を向いている。
「秘書課のオフィスやロッカーもこの階にあります。ええと、後輩の皆さん。多分、そちらの手元に届くのは色々と編集だとか修正だとかが加えられたデータになっていると思うんですけれど、僕の働きぶりはわかると思います。皆さんの進路選択の参考になれれば幸いです。今日は一日、どうぞよろしくお願いします」
浅倉はそう言って、観葉植物に向かって丁寧に頭を下げる。その姿を別のカメラがとらえている。
身請け先の了解と協力を得て設置した多数のカメラによって、ありとあらゆる角度から卒業生が働く姿を撮影する。無論、会社の機密情報や撮影の事実を知らない人間が映り込む危険性も大いにあるが、それは編集時に強めの「ぼかし」を入れるという契約になっている。その代わり、卒業生は余計なことには気を回さずいつも通りに……いや、いつも以上に一生懸命働く姿を見せなければならない。
栄えある性奴隷育成学園男子部出身の、性的奉仕の専門家として。
がんばろう、と、浅倉は気を引き締めた。
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