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刑務所の1日編
朝食②
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囚人たちは、こうやって生活の細かいところでポイントを加算されたり、減点されたりする。このポイントは所内ネットワーク上にある個人情報ページにリアルタイム反映されており、囚人本人も閲覧可能だ。
このポイントというのが中々やっかいなもので、累積ポイントがそのまま囚人としての成績としてみなされる他、所内通販で買い物ができたりする。板チョコ一枚が150ポイント、煙草一箱が500ポイントだから、だいたい娑婆の金銭感覚と同じだな。
だから、今俺が「おう」って言ったことで減らされた1ポイントくらい、俺個人は屁でもないんだが、問題なのはここからだ。
部屋メンバーの合計ポイントが、そのまま部屋の評価に直結する。高ポイントの部屋は何かと優遇されるし、逆に低ポイントの部屋は看守たちから冷たく扱われ、細かな不利益を被るんだそうだ。このせいで、頻繁に減点を食らう囚人を一人でも抱えた部屋は、他の囚人がせっせとポイントを稼いで部屋の地位を回復させねばならなくなる。
現在、ユウが率いる俺たちの部屋には、問題行動を起こしすぎて懲罰房暮しになっているという大問題児が所属している(俺は会ったことがない)。ここに、収監されたばかりで右も左もわからず細かい減点を繰り返している俺が加わっているのだ。
いつも穏やかなユウだが、実はキリキリと胃を痛めているかもしれない。だから、俺も気を付けなければ――。
以降、俺は唇を固く引き結んで、絶対に私語しないようにした。
配膳台に並び、アルミ製のトレイに茶碗やら皿やらを載せていく。朝食のメニューは毎日だいたい同じ。白米、味噌汁、野菜、焼き魚というスタンダードな和食だ。これに、水が入った紙コップと複数の錠剤が乗った小皿を加えて、自分の席に向かう。
席は固定で、部屋ごとにまとめられている。俺たちの席は配膳台からちょっと遠い壁際で、他部屋の連中の間をすり抜けていかなければならない。
絶対に私語をしてはいけない。
「……ッ!」
とっくに着席して暇を持て余している囚人から、すれ違いざまに胸を触られても決して声を出してはならない。声を出したら負けだ。ついでに言うなら、ビビって食事トレイを落としても負け。そのまま朝メシ抜きが確定する。
俺が黙って通り過ぎると、また他の囚人がサッと手を出してきて、今度はわりと強い力で胸を鷲掴みにされた。試合後のハイタッチじゃねぇんだぞと声を大にして言いたいが、そんなことしたら500ポイントくらい引かれるのでやっぱり黙ってやり過ごす。
理不尽なことに、声を出したら即減点なのに、こういう軽いイタズラに対しては何のお咎めもないのだ。だから、食堂では無言の痴漢行為が横行している。俺みたいな新人は格好の的だ。
看守も見て見ぬふり……というかむしろ、イタズラされた側が声を上げないかどうかをじっと見張っている。なんというか、もう、食堂はこういうコンセプトなんだと諦めるしかない。
俺の一歩前を歩くユウなんかは、すれ違いに触られるどころか尻をガッツリ揉まれている。でも平然としている。食堂ではあの態度が正解だ。俺も見習わなければならない。
すれ違いざまのボディタッチに文字通り閉口しながら、俺らは自分の席に辿り着く。トレイを置いて着席し、食事開始の合図まで待機。
やがて、食事当番を除くすべての囚人が着席した。
食堂を見張っていた看守たちのうちの一人が、短く鋭い声を上げた。
「食事はじめ!」
静まり返った食堂に、食器が触れ合う音と咀嚼音が響いた。
このポイントというのが中々やっかいなもので、累積ポイントがそのまま囚人としての成績としてみなされる他、所内通販で買い物ができたりする。板チョコ一枚が150ポイント、煙草一箱が500ポイントだから、だいたい娑婆の金銭感覚と同じだな。
だから、今俺が「おう」って言ったことで減らされた1ポイントくらい、俺個人は屁でもないんだが、問題なのはここからだ。
部屋メンバーの合計ポイントが、そのまま部屋の評価に直結する。高ポイントの部屋は何かと優遇されるし、逆に低ポイントの部屋は看守たちから冷たく扱われ、細かな不利益を被るんだそうだ。このせいで、頻繁に減点を食らう囚人を一人でも抱えた部屋は、他の囚人がせっせとポイントを稼いで部屋の地位を回復させねばならなくなる。
現在、ユウが率いる俺たちの部屋には、問題行動を起こしすぎて懲罰房暮しになっているという大問題児が所属している(俺は会ったことがない)。ここに、収監されたばかりで右も左もわからず細かい減点を繰り返している俺が加わっているのだ。
いつも穏やかなユウだが、実はキリキリと胃を痛めているかもしれない。だから、俺も気を付けなければ――。
以降、俺は唇を固く引き結んで、絶対に私語しないようにした。
配膳台に並び、アルミ製のトレイに茶碗やら皿やらを載せていく。朝食のメニューは毎日だいたい同じ。白米、味噌汁、野菜、焼き魚というスタンダードな和食だ。これに、水が入った紙コップと複数の錠剤が乗った小皿を加えて、自分の席に向かう。
席は固定で、部屋ごとにまとめられている。俺たちの席は配膳台からちょっと遠い壁際で、他部屋の連中の間をすり抜けていかなければならない。
絶対に私語をしてはいけない。
「……ッ!」
とっくに着席して暇を持て余している囚人から、すれ違いざまに胸を触られても決して声を出してはならない。声を出したら負けだ。ついでに言うなら、ビビって食事トレイを落としても負け。そのまま朝メシ抜きが確定する。
俺が黙って通り過ぎると、また他の囚人がサッと手を出してきて、今度はわりと強い力で胸を鷲掴みにされた。試合後のハイタッチじゃねぇんだぞと声を大にして言いたいが、そんなことしたら500ポイントくらい引かれるのでやっぱり黙ってやり過ごす。
理不尽なことに、声を出したら即減点なのに、こういう軽いイタズラに対しては何のお咎めもないのだ。だから、食堂では無言の痴漢行為が横行している。俺みたいな新人は格好の的だ。
看守も見て見ぬふり……というかむしろ、イタズラされた側が声を上げないかどうかをじっと見張っている。なんというか、もう、食堂はこういうコンセプトなんだと諦めるしかない。
俺の一歩前を歩くユウなんかは、すれ違いに触られるどころか尻をガッツリ揉まれている。でも平然としている。食堂ではあの態度が正解だ。俺も見習わなければならない。
すれ違いざまのボディタッチに文字通り閉口しながら、俺らは自分の席に辿り着く。トレイを置いて着席し、食事開始の合図まで待機。
やがて、食事当番を除くすべての囚人が着席した。
食堂を見張っていた看守たちのうちの一人が、短く鋭い声を上げた。
「食事はじめ!」
静まり返った食堂に、食器が触れ合う音と咀嚼音が響いた。
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