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刑務所の1日編
昼休憩②
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俺とユウは、野外運動場の隅にあるベンチに並んで腰かけた。すぐ後ろは分厚いコンクリートの壁で、目の前には広々としたグラウンドがある。キャッチボールやジョギングに興じている囚人たちがちらほらいて、それを監視している看守たちがいた。……平和だ。
心地よい風が駆け抜けた。
「マッサージ室の機材、優秀なんだけどやっぱり限度があるんだよねぇ……。こういう時に『マッサージの日』があればいいんだけど、今はだいたいのイベントがストップしてるからなあ」
眩しそうに遠くの空を眺めながらユウが言う。彼の雄っぱいは俺よりも小さいけれど、毎日コンスタントに乳が出る。今も、囚人服越しにうっすらと母乳パッドが浮いていた。
「なんなんだ、マッサージの日って」
「外部のマッサージ師が来る日があるんだよ。もの凄い腕利きで、彼の施術を受けたらどんな囚人でもしばらく雄母乳が止まらなくなるって言われている」
「マジかよ」
俺はごくりと生唾を飲み込んだ。どんなゴッドハンドの持ち主なんだ。
だが、ユウは長ーい溜息をついた。
「でもねぇ。今はコクヨウ様がいないから、マッサージの日を含めて全部の催し物が無期延期状態なんだよ。集団労役も無し。シコは変なタイミングで収監されたからいまいちピンとこないかもしれないけれど、こんなに単調な日が続くことって滅多にないんだよ」
「コクヨウ様……って誰だ。コクヨウ一族の誰かがいるのか、ここ」
俺がそう言ったとたん、ユウが驚いたように叫んだ。
「あ、それすら知らないんだ!?」
その声は結構響いた。ちょうど近くを通りかかっていた巡回の看守が鋭い声を飛ばしてきた。
「そこ、高い声で喋らない! 両者それぞれ1ポイント減点」
ユウが慌てて自分の口を押え、凄く小さな声で「……ごめん」と謝ってきた。
万単位のポイントを持っている模範囚のユウにとって1ポイントの減点だなんて誤差の範囲だが、199ポイントしか持っていない俺にとっては結構デカい。
でもまあ、気にしない。俺が原因でユウが巻き添え減点食らったことだって何回もある。お互い様だ。
「いや、大丈夫だ。……それで、コクヨウ様って誰だ」
「ここの看守長だよ」
囁くような声でユウが言った。
「名前の通りコクヨウ一族の一員で、しかも本家にかなり近い分家の出身。普通、ここの囚人は初日にコクヨウ様直々の訓示を頂いて、嫌でも顔を覚えるもんだけど……そっか。シコが収監された時、コクヨウ様いなかったんだ」
「ああ。確かに、初めてここに来た日に『社会復帰目指して頑張りなさい』的な訓示貰ったけど、若くて柔和な感じの看守だったぞ」
「多分それは副看守長だね。コクヨウ様不在の今はその人が看守長代理を務めているんだけど、どうやらルーチン以外は全てやめておくって方針らしい。だから今は異常なくらい平和なんだ」
「はぁ……」
つまり、俺が刑務所の日常だと思い込んでいた日々は、実は現場トップ不在による非日常だったわけか。その看守長とやらがいる時こそが、本当の雄っぱい刑務所なのだろう。
言われてみれば、囚人も看守もちょっと平和ボケしている気がしないでもない。
「そんで、その看守長ってどうして今はいないんだ? いつ戻ってくるんだ?」
「詳しいことは伏せられているんだけど、シコにだけこっそり教えるね。本家に呼び出されて、そのまま用事が長引いているみたい。でも、来月には戻ってくる」
ユウの表情がちょっと硬い。看守長の帰還が恐ろしいんだろうか。
「だからね……シコも、来月までに、囚人としてある程度ちゃんとした成績を修めておいた方がいいと思う。じゃないと酷い目に遭うよ」
「そ、そんなに厳しいのか。コクヨウ様って」
「厳しいよ。それに……その、言いにくいんだけど……ただの僕の予想に過ぎないから、確定ってわけじゃないんだけど……」
ユウは口ごもる。なんなんだ、はっきり言って欲しい。
俺が無言でユウを凝視していると、やがて、慎重に言葉を選びましたといった感じの続きが来た。
「多分、シコみたいな身体つきの囚人は、コクヨウ様の目に留まりやすいと思うから……」
心地よい風が駆け抜けた。
「マッサージ室の機材、優秀なんだけどやっぱり限度があるんだよねぇ……。こういう時に『マッサージの日』があればいいんだけど、今はだいたいのイベントがストップしてるからなあ」
眩しそうに遠くの空を眺めながらユウが言う。彼の雄っぱいは俺よりも小さいけれど、毎日コンスタントに乳が出る。今も、囚人服越しにうっすらと母乳パッドが浮いていた。
「なんなんだ、マッサージの日って」
「外部のマッサージ師が来る日があるんだよ。もの凄い腕利きで、彼の施術を受けたらどんな囚人でもしばらく雄母乳が止まらなくなるって言われている」
「マジかよ」
俺はごくりと生唾を飲み込んだ。どんなゴッドハンドの持ち主なんだ。
だが、ユウは長ーい溜息をついた。
「でもねぇ。今はコクヨウ様がいないから、マッサージの日を含めて全部の催し物が無期延期状態なんだよ。集団労役も無し。シコは変なタイミングで収監されたからいまいちピンとこないかもしれないけれど、こんなに単調な日が続くことって滅多にないんだよ」
「コクヨウ様……って誰だ。コクヨウ一族の誰かがいるのか、ここ」
俺がそう言ったとたん、ユウが驚いたように叫んだ。
「あ、それすら知らないんだ!?」
その声は結構響いた。ちょうど近くを通りかかっていた巡回の看守が鋭い声を飛ばしてきた。
「そこ、高い声で喋らない! 両者それぞれ1ポイント減点」
ユウが慌てて自分の口を押え、凄く小さな声で「……ごめん」と謝ってきた。
万単位のポイントを持っている模範囚のユウにとって1ポイントの減点だなんて誤差の範囲だが、199ポイントしか持っていない俺にとっては結構デカい。
でもまあ、気にしない。俺が原因でユウが巻き添え減点食らったことだって何回もある。お互い様だ。
「いや、大丈夫だ。……それで、コクヨウ様って誰だ」
「ここの看守長だよ」
囁くような声でユウが言った。
「名前の通りコクヨウ一族の一員で、しかも本家にかなり近い分家の出身。普通、ここの囚人は初日にコクヨウ様直々の訓示を頂いて、嫌でも顔を覚えるもんだけど……そっか。シコが収監された時、コクヨウ様いなかったんだ」
「ああ。確かに、初めてここに来た日に『社会復帰目指して頑張りなさい』的な訓示貰ったけど、若くて柔和な感じの看守だったぞ」
「多分それは副看守長だね。コクヨウ様不在の今はその人が看守長代理を務めているんだけど、どうやらルーチン以外は全てやめておくって方針らしい。だから今は異常なくらい平和なんだ」
「はぁ……」
つまり、俺が刑務所の日常だと思い込んでいた日々は、実は現場トップ不在による非日常だったわけか。その看守長とやらがいる時こそが、本当の雄っぱい刑務所なのだろう。
言われてみれば、囚人も看守もちょっと平和ボケしている気がしないでもない。
「そんで、その看守長ってどうして今はいないんだ? いつ戻ってくるんだ?」
「詳しいことは伏せられているんだけど、シコにだけこっそり教えるね。本家に呼び出されて、そのまま用事が長引いているみたい。でも、来月には戻ってくる」
ユウの表情がちょっと硬い。看守長の帰還が恐ろしいんだろうか。
「だからね……シコも、来月までに、囚人としてある程度ちゃんとした成績を修めておいた方がいいと思う。じゃないと酷い目に遭うよ」
「そ、そんなに厳しいのか。コクヨウ様って」
「厳しいよ。それに……その、言いにくいんだけど……ただの僕の予想に過ぎないから、確定ってわけじゃないんだけど……」
ユウは口ごもる。なんなんだ、はっきり言って欲しい。
俺が無言でユウを凝視していると、やがて、慎重に言葉を選びましたといった感じの続きが来た。
「多分、シコみたいな身体つきの囚人は、コクヨウ様の目に留まりやすいと思うから……」
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