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第二章 重慶からの依頼
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しおりを挟むそんな中、上市が定祐のパソコンを覗くように側に寄った。
「おい……、暑苦しいやねか」
「はぃい? 暑苦しいとか、女子に言わないでくださいよ。嫌な人ですね」
上市が、某特命係の右京さん風の上げ調子で反応しつつ言った。
そのまま、上市は定祐といっしょにネットサーフィン画面を眺める。
ニュースサイトに、SNSに、動画と、散らかったようにいくつも開いているウィンドウ――
その中に映っていたグルメ情報に、上市が目敏く気がついた。
「あっ――! それ、見せてくださいよ」
「何かね? めんどっちいのう」
定祐は鬱陶しそうな顔しながらも、クリックして拡大してやる。
そこに映っていたのは、何やらお隣は中国の都市のようであった。
赤茶色の大河に挟まれた半島に聳える超高層ビル群――
それから、現地の伝統的観光スポットらしき、中国屋根も赤々とした提灯の楼閣の画像。
また、別の画像には、金属鍋に赤々と煮られる火鍋と――
すなわち、中国内陸部の大都市、重慶にちなんだ画像であった。
「ああ、重慶行ってみたい。火鍋も食べたい……。今度、連れてってくださいよ、先生」
上市はうっとりとした目で眺めつつ、涎を垂らしかける。
「連れてってくれて……、重慶と火鍋屋のどっちかね?」
「もちろん、できるなら、どっちもですよ」
「図々しい答えだな。……というか、あんなクソ辛いものが好きなのかね? 私には分からんな」
「月に2、3回ほど、辛いもの食べたくなるんですよ。それも、飛び抜けたくらい辛いものを……。ああっ……、今度事務所の庭に、唐辛子の盛り合わせができるくらい色んな品種植えていいですかね?」
「フン、まったく……」
何を言っているのかねと、やれやれと定祐は呆れた。
まあ、これに関して定祐中年が呆れるのは無理もないだろうが……
そのように、二人は怠惰にして過ごしている中、“とあること”に気がついた。
「――あれ? 何か、少し風が強くなってきてないですか?」
「んあ……? ……ああ、確かにな」
と、天井のプロペラからの風が、気のせいか……、先ほどより強くなっているように感じた。
確かに、その証拠か……、上市の髪が揺れ、また定祐の天パも軽くフケ交じりに、バサバサとはためいていた。
さらに、そのように二人がポケーっとしているうちに、プロペラはさらに回転数を上げ始めた。
ブンブン! と、強烈な音を立てて高速回転を始めるプロペラ。
その風圧に、黒猫もさすがにニャッ! と鳴き声を上げ、思わず回避していた。
「うぬぅ! な、何かねっちゃ!? この風は!」
「ちょっ、何なんすか!? この風!?」
上市はすさまじい風圧に抗いながらも、「――もっふ!?」と不意打ちに転んでしまう。
そのまま、尻餅をつきながら
「おっふぅー!!!」
と、上市は断末魔の叫びが事務所書斎に響いた。
また、それだけでなく、さらに悪いことが起きる。
上市は転んだ拍子にスカートがめくれてしまい、赤と緑のツートーンのパンツが露わになるというコンボも決めてしまうという、まさに、踏んだり蹴ったりの有り様――
しかし、そこへ、
「――ほう……今日は中々にエレガントなパンティではないか? 低級動物の小娘よ」
と、どこかから“パンティ”とのパワーワードとともに煽る声が響いてきた。
――続く
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