6 / 9
第一章 奇妙な案件の発端
2─5
しおりを挟む“ギンピギンピ”――
オーストラリアに自生する植物であり、その形状は大葉やシソの葉を大きくしつつ、ハート型のように、もう少し丸くしたような葉っぱ。
その表面に白く生える、産毛というか、グラスファイバーのような微細な棘――
そして、“ここ”にこそ、おぞましくして凶悪な毒が宿る。
モロイジンという化学物質が主成分であるらしいのだが、この白い産毛のような棘に触れた者は、その程度にもよるが、数日から数週間――、酸をスプレーでかけられたような、まさに耐え難い激痛に苦しむ羽目になるとのことである。
なお、長いものでは、月から年単位で後遺症的に痛みに苦しむこともあるとの記録もある。
そのような“凶悪性”に、かつての宗主国の英国は、ある種の生物兵器として検討されり。また、その昔、野外でトイレットペーパー代わりにこの植物の葉っぱを使用してしまった男が、激痛のあまり拳銃自殺したとの、真偽不明な逸話もあるとのことである……
「いや、確かに……、“これ”、ヤバすぎだよ……」
ドン・ヨンファが、まさに『検索してはいけない言葉』を検索してしまったかのように、後悔した顔をした。
「――その、“御茶”か何かを作ればさ……、結構な激痛のする飲み物になるんじゃない? そして、招待された人の、激痛に苦しむ姿を堪能する……」
…………
少し溜めながらも、淡々と話す“ジグソウ・プリンセス”こと、パク・ソユンの言葉に沈黙が漂う。
沈黙が漂いつつ、
「――まあ、ギンピギンピに限らず、“充分で、多様な趣向を持つ”有毒植物なんて、他にもありそうだけどね……」
と、パク・ソユンは締めた。
「ちなみにだけどさ、……まさか、……君が犯人とかじゃないよね?」
恐る恐る聞くドン・ヨンファに、
「……」
と、ちょうどチジミを箸で持ち上げたパク・ソユンの手が、ピタリと止まる。
「……」
「……」
止まりつつ、
「――そんなわけないでしょ。もう、変なこと言ってっと、アンタ、……チェーンソーでバラバラにするわよ」
と、パク・ソユンはマンガのごとく――、どこから取り出したのか、チェーンソーを手にして構えてみせた。
「ひっ……!? じ、冗談だって! お、落ち着いてよ、ソユン!」
怯えつつ宥めるドン・ヨンファに、
「大丈夫よ。怒ってないから」
と、パク・ソユンは相変わらず淡々とした様子で答える。
「おい、こんなとこで“そんなもん”出すなよ。銃刀法なんとかで、通報されっだろが」
「まあ、それもそうね……」
やれやれとつっこんだキム・テヤンに、ごめんねとのようにパク・ソユンはチェーンソーをしまう。
なお、これが、このパク・ソユンの“異能力”――、スプラッタ系のガジェットや暗記を召還できる能力の一端であるのだが……
また、そんなパク・ソユンは続ける。
「――それに、……たぶん、私、犯人になりようがないと思うよ」
「うん? どういうこと、か?」
カン・ロウンが聞き、
「――だって、あの招待状……、私に届いたもん」
と、パク・ソユンはゆるりと、“例の招待状”を見せてみた。
「「「は? はいぃ……!?」」」
――続く
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる