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5話
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「は……?え、峰谷……?」
何度かまばたきをして、目を擦る。もう一度目の前の人物を確認するが、変わらず峰谷がいるだけだった。峰谷はベッドに腰掛け、暗い表情をしている。今日は前髪はサイドに分けられ、端正な顔立ちが明らかだ。
「なんで、峰谷が……、だって、え……?」
先程まで側にいた犬飼はどこに行ったのだろう。どうして峰谷がここにいるんだろう。俺は何をしてたんだろう。思考がフル回転して、今の自分の姿に気づく。慌ててシーツをかきよせ、下半身を隠した。
「ごめん、川元」
「何が?」
「ずっと黙ってて……。騙す気はなかったんだけど……」
「峰谷、ちょっと待って、何言って……」
嫌な予感に、俺は峰谷の言葉を遮る。しかし、峰谷は続けた。
「犬飼は、……俺、なんだ」
ショックと驚きが一気に襲ってくる。犬飼の音声を初めて聞いた時から、今日までの記憶が脳内に溢れて、俺は頭を抱えた。
言われてみれば、峰谷の声のトーンは犬飼に似ている。体格はいいし、低い声もでるのだろう。それに峰谷はむっつりしてそうだ。変に納得した俺は、峰谷に尋ねた。
「なんで俺が、その、犬飼の音声を聞いてるって、わかったんだ?」
「合コンで酔い潰れた後、俺の部屋に来ただろ?その時に、川元が話してくれた。覚えてない?」
「……覚えて、ない……」
峰谷に介抱されたことは覚えているが、それ以外は覚えていない。なぜ犬飼の話をしたのだろうか。酔った勢いの怖さを実感しつつ、もしかしてあの夢は、と俺は思い出す。
「ごめん、もしかして、あの日夢だと思ってたことって……」
「え?あぁ、川元が乳首イキしたこと?」
「その言い方……」
峰谷がさらりと言いのけたので、俺のほうが恥ずかしくなった。同時に、夢ではなかったことに納得もしていた。あれほどリアルな感触は、夢ではありえなかったからだ。
「あの時は、ちょっと揶揄うつもりだったのに、川元が無防備に全部委ねて、可愛い寝顔見せてきて、エロい乳首にニップレスなんか貼って……。俺我慢してたのに、誘ってくるから……」
「峰谷、一旦落ち着こう」
話の雲行きが怪しくなってきたため、俺は話を遮った。峰谷の言葉のチョイスに、外見は峰谷だが、中身は犬飼なのだと認識した。そして、峰谷の言葉に俺は嫌でも悟ってしまう。
「違ったら悪いんだけど……、もしかして、峰谷って俺のこと……」
俺の言葉に、峰谷は頬を赤くして、恥ずかしげに顔を伏せた。その反応で、俺の予想は確信に変わる。
「俺、川元のことずっと好きで、テニスサークルに入ったのも、川元に親しくなりたいからで……」
先日テニスサークルに入った理由を『好きな人がいるから』と峰谷は言っていたが、その好きな人が俺だとは思わなかった。峰谷の告白に、俺はどういう反応をすればいいかわからず、黙っていた。
「でも、川元とは友達にはなれなくて、結局遠くから見てただけだったけど」
友達どころか、俺は峰谷のことを知らなかったのだ。流石にショックを受けるかもしれないと、それは内緒にしておくことにした。
「森田が犬飼の……、俺の催眠音声を紹介したのは偶然で、初めは驚いたし、聞いて欲しくないくらいだった。でも、川元はいつのまにかハマって、メスイキできるまでになってるなんて……」
顔を上げた峰谷は、眼をぎらつかせ、息が荒い。視線を下げると、峰谷の股間部分が盛り上がっていた。好きな人が目の前でオナニーしてたら、興奮するものなのだろう。俺は峰谷の股間から目が離せず、ごくりと唾を飲み込んだ。
「音声録ってるとき、いつも川元のこと想像してたんだ。どうやったら気持ち良くなってくれるか、色々調べたし、練習もした」
犬飼は熱を込めて話しながら、俺へとにじり寄る。俺はシーツで下半身を隠したまま、身を引く。ベッドの上で逃げるには限界で、俺は脱ぎ去った下着を探すが、ベッドの上には見当たらない。その間にも峰谷は近づいてくる。
「川元、お願い……」
峰谷の瞳は、熱っぽく、切なげに、獰猛に、俺を見つめる。
「俺と、一回だけでいいから……、セックスして」
峰谷のお願いに、俺は驚いた。しかし、身体は正直で、腹の奥がきゅんっと切なくなる。
昂った身体は、もう限界だ。峰谷のことが好きだとか嫌いだとか、相手が男だとか、そんな些細なことは、性欲の前ではもろく崩れ去る。
俺は黙ったまま、峰谷を見つめ返す。俺の眼差しの意味を峰谷は悟ったようで、にやりと口角を上げた。
何度かまばたきをして、目を擦る。もう一度目の前の人物を確認するが、変わらず峰谷がいるだけだった。峰谷はベッドに腰掛け、暗い表情をしている。今日は前髪はサイドに分けられ、端正な顔立ちが明らかだ。
「なんで、峰谷が……、だって、え……?」
先程まで側にいた犬飼はどこに行ったのだろう。どうして峰谷がここにいるんだろう。俺は何をしてたんだろう。思考がフル回転して、今の自分の姿に気づく。慌ててシーツをかきよせ、下半身を隠した。
「ごめん、川元」
「何が?」
「ずっと黙ってて……。騙す気はなかったんだけど……」
「峰谷、ちょっと待って、何言って……」
嫌な予感に、俺は峰谷の言葉を遮る。しかし、峰谷は続けた。
「犬飼は、……俺、なんだ」
ショックと驚きが一気に襲ってくる。犬飼の音声を初めて聞いた時から、今日までの記憶が脳内に溢れて、俺は頭を抱えた。
言われてみれば、峰谷の声のトーンは犬飼に似ている。体格はいいし、低い声もでるのだろう。それに峰谷はむっつりしてそうだ。変に納得した俺は、峰谷に尋ねた。
「なんで俺が、その、犬飼の音声を聞いてるって、わかったんだ?」
「合コンで酔い潰れた後、俺の部屋に来ただろ?その時に、川元が話してくれた。覚えてない?」
「……覚えて、ない……」
峰谷に介抱されたことは覚えているが、それ以外は覚えていない。なぜ犬飼の話をしたのだろうか。酔った勢いの怖さを実感しつつ、もしかしてあの夢は、と俺は思い出す。
「ごめん、もしかして、あの日夢だと思ってたことって……」
「え?あぁ、川元が乳首イキしたこと?」
「その言い方……」
峰谷がさらりと言いのけたので、俺のほうが恥ずかしくなった。同時に、夢ではなかったことに納得もしていた。あれほどリアルな感触は、夢ではありえなかったからだ。
「あの時は、ちょっと揶揄うつもりだったのに、川元が無防備に全部委ねて、可愛い寝顔見せてきて、エロい乳首にニップレスなんか貼って……。俺我慢してたのに、誘ってくるから……」
「峰谷、一旦落ち着こう」
話の雲行きが怪しくなってきたため、俺は話を遮った。峰谷の言葉のチョイスに、外見は峰谷だが、中身は犬飼なのだと認識した。そして、峰谷の言葉に俺は嫌でも悟ってしまう。
「違ったら悪いんだけど……、もしかして、峰谷って俺のこと……」
俺の言葉に、峰谷は頬を赤くして、恥ずかしげに顔を伏せた。その反応で、俺の予想は確信に変わる。
「俺、川元のことずっと好きで、テニスサークルに入ったのも、川元に親しくなりたいからで……」
先日テニスサークルに入った理由を『好きな人がいるから』と峰谷は言っていたが、その好きな人が俺だとは思わなかった。峰谷の告白に、俺はどういう反応をすればいいかわからず、黙っていた。
「でも、川元とは友達にはなれなくて、結局遠くから見てただけだったけど」
友達どころか、俺は峰谷のことを知らなかったのだ。流石にショックを受けるかもしれないと、それは内緒にしておくことにした。
「森田が犬飼の……、俺の催眠音声を紹介したのは偶然で、初めは驚いたし、聞いて欲しくないくらいだった。でも、川元はいつのまにかハマって、メスイキできるまでになってるなんて……」
顔を上げた峰谷は、眼をぎらつかせ、息が荒い。視線を下げると、峰谷の股間部分が盛り上がっていた。好きな人が目の前でオナニーしてたら、興奮するものなのだろう。俺は峰谷の股間から目が離せず、ごくりと唾を飲み込んだ。
「音声録ってるとき、いつも川元のこと想像してたんだ。どうやったら気持ち良くなってくれるか、色々調べたし、練習もした」
犬飼は熱を込めて話しながら、俺へとにじり寄る。俺はシーツで下半身を隠したまま、身を引く。ベッドの上で逃げるには限界で、俺は脱ぎ去った下着を探すが、ベッドの上には見当たらない。その間にも峰谷は近づいてくる。
「川元、お願い……」
峰谷の瞳は、熱っぽく、切なげに、獰猛に、俺を見つめる。
「俺と、一回だけでいいから……、セックスして」
峰谷のお願いに、俺は驚いた。しかし、身体は正直で、腹の奥がきゅんっと切なくなる。
昂った身体は、もう限界だ。峰谷のことが好きだとか嫌いだとか、相手が男だとか、そんな些細なことは、性欲の前ではもろく崩れ去る。
俺は黙ったまま、峰谷を見つめ返す。俺の眼差しの意味を峰谷は悟ったようで、にやりと口角を上げた。
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