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意外な素顔
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おいおい、ある意味スゴいもん撮っちゃったんじゃないか?
普通の熱愛写真でも撮るのはどうかと思うけど、あんなおっさんに無理矢理キスされた写真なんてひどすぎるよな。
オレは画像を消そう、と思いながらふと叶多の様子を窺った。
叶多はその場に立ち尽くしたまま、一歩も動いていなかった。
そしてゆっくりとサングラスをはずすと、真っ直ぐ上を向いて空を仰いだ。
街の明かりがまぶしすぎて、星なんてろくに見えやしないのに。
叶多は白い息を吐きながらずっと夜空を見つめていた。
その姿は、泣いてるみたいに見えた。
馬鹿げてる。
大の男がキスくらいで泣くわけないのに。
叶多の表情があまりに辛く苦しそうで、目が離せなくなった。
叶多とはもちろん話したこともないけど、昔のオレと似ている気がした。
夢を逃して、一晩中泣きベソかいたあの時の自分と。
ぐおおおおおお。
ドラゴンの咆哮のようなけたたましい音が辺りに響き渡った。
その瞬間、叶多がこちらに振り返った。
マジかよ!
外でここまで聞こえるオレの腹の音、どんだけ凄いんだよ!
視線が叶多とぶつかる。
吸い込まれそうな力のある瞳だ。
とにかく、何か言わなきゃ。
何か…。
「誰?」
クールで芯のある透き通った声だ。
叶多の声を直接聞くのは初めてだった。
「週間スクープのカメラマンだ」
たちの悪い記事ばかり掲載することで有名な週刊誌の名前を聞いた叶多は、ゆっくりとこちらに近づいてきた。
コイツ、歩いてくるだけですごい威圧感を感じる。
それに、近くで見てもすっげーキレイだ。
オレは目の前に叶多がやって来るのをじっと眺めていた。
だって、南 叶多のオーラがあまりに強すぎて、身動き一つとることができなかったんだ。
テレビに出てる奴なんかどうせ整形、画像処理ばっかだろうと思っていたけど、この男は違う。
見るからに才能あるやつって、本当にいるんだ。モデルとして撮影したらどんな写真が出来上がるんだろう…。
オレはプライベートで家族写真を撮ったりはするけど、作品として撮るのは天体写真だけだ。
自分から撮影の対象として見たのは、叶多が初めてだった。
叶多がオレのカメラに手を伸ばしてきた。
オレは慌ててカメラをしっかりと抱えてガードした。
「カメラに触んな!!」
オレが怒鳴ると叶多は手を引っ込めて、じっとオレの顔を見た。
驚いた様子は微塵もなく、ただこちらの様子を観察している。
「と、撮らせてもらいましたよ」
オレは咄嗟にいつか見たドラマに出てきたパパラッチのセリフを思い出して、見様見真似で言ってみた。
カメラを守るためだ、仕方がない。
演技は苦手だけど、できるだけ柄の悪い感じに。
オレは何を仕掛けてこられてもいいように身を構えて叶多をにらみつけた。
「勘弁してください!」
わっ!と、今までのクールな表情は一気に崩れ、叶多は両手で顔を覆ったままオレに頭を下げた。
「そんな写真が出回ったら、僕は生きていけません!」
「何言ってんだよ。
南 叶多って言えば自由奔放で、世論に振り回されるようなキャラじゃないだろ」
「あ、あれは事務所の売り出し方針で、僕は全然そんなんじゃないんです」
叶多は体を震わせている。
本当の叶多ってこんなにビクビクおどおどした奴だったのか?
「あのおぞましい瞬間を世間に知られるなんて耐えられない。
まだ裸撮られたほうがましです!」
なにっ!?
ヌードを撮るチャンス?
けど、青ざめた叶多を見ると、じゃあお願いします、と冗談でも言える様子ではなかった。
「もしかしてお前、利用されてるのか?」
叶多が顔からゆっくりと手をはずした。
そして助けを求めるように上目遣いでオレを見た。
その叶多の姿があまりにも頼りないもんだから、オレの中の罪悪感はもうパンパンに膨れ上がっていた。
「別にオレだってプライベートを暴こうなんて思ってねえよ。
献金のネタが撮れればこの写真を使ったりしない」
叶多がピクリ、と反応した。
「こっちは何週間もかけて情報つかんでるんだよ。
献金のネタが出せないって言うんなら、献金の橋渡し役の証拠としてこの写真を…」
使うつもりはなかった。
他人に利用されて泣きそうになってるような奴を踏みつけて幸せになんてなれっこない。
もし叶多が献金の証拠を出さなくても、この写真は売らないと思う。
けど、どうにかハッタリかましてでも献金の証拠が欲しい。
オレには時間がないんだ。
もうのんびりバイトなんかしてる場合じゃないんだよ。
「分かりました。
証拠は僕の部屋にあります。
外に持ち出すことはできません」
「じゃあ、オレを部屋に入れてくれよ。
南 叶多のプライベートマンションに」
非現実的な状況の中で、ドラマのようなセリフがどんどん飛び交っているせいで、頭がクラクラする。
けど緊張しているなんて、叶多には絶対に勘付かれちゃいけない。
もしこれで大金が手に入ったら、またプロのカメラマンを目指せる。
アイツを断ち切ることができる。
普通の熱愛写真でも撮るのはどうかと思うけど、あんなおっさんに無理矢理キスされた写真なんてひどすぎるよな。
オレは画像を消そう、と思いながらふと叶多の様子を窺った。
叶多はその場に立ち尽くしたまま、一歩も動いていなかった。
そしてゆっくりとサングラスをはずすと、真っ直ぐ上を向いて空を仰いだ。
街の明かりがまぶしすぎて、星なんてろくに見えやしないのに。
叶多は白い息を吐きながらずっと夜空を見つめていた。
その姿は、泣いてるみたいに見えた。
馬鹿げてる。
大の男がキスくらいで泣くわけないのに。
叶多の表情があまりに辛く苦しそうで、目が離せなくなった。
叶多とはもちろん話したこともないけど、昔のオレと似ている気がした。
夢を逃して、一晩中泣きベソかいたあの時の自分と。
ぐおおおおおお。
ドラゴンの咆哮のようなけたたましい音が辺りに響き渡った。
その瞬間、叶多がこちらに振り返った。
マジかよ!
外でここまで聞こえるオレの腹の音、どんだけ凄いんだよ!
視線が叶多とぶつかる。
吸い込まれそうな力のある瞳だ。
とにかく、何か言わなきゃ。
何か…。
「誰?」
クールで芯のある透き通った声だ。
叶多の声を直接聞くのは初めてだった。
「週間スクープのカメラマンだ」
たちの悪い記事ばかり掲載することで有名な週刊誌の名前を聞いた叶多は、ゆっくりとこちらに近づいてきた。
コイツ、歩いてくるだけですごい威圧感を感じる。
それに、近くで見てもすっげーキレイだ。
オレは目の前に叶多がやって来るのをじっと眺めていた。
だって、南 叶多のオーラがあまりに強すぎて、身動き一つとることができなかったんだ。
テレビに出てる奴なんかどうせ整形、画像処理ばっかだろうと思っていたけど、この男は違う。
見るからに才能あるやつって、本当にいるんだ。モデルとして撮影したらどんな写真が出来上がるんだろう…。
オレはプライベートで家族写真を撮ったりはするけど、作品として撮るのは天体写真だけだ。
自分から撮影の対象として見たのは、叶多が初めてだった。
叶多がオレのカメラに手を伸ばしてきた。
オレは慌ててカメラをしっかりと抱えてガードした。
「カメラに触んな!!」
オレが怒鳴ると叶多は手を引っ込めて、じっとオレの顔を見た。
驚いた様子は微塵もなく、ただこちらの様子を観察している。
「と、撮らせてもらいましたよ」
オレは咄嗟にいつか見たドラマに出てきたパパラッチのセリフを思い出して、見様見真似で言ってみた。
カメラを守るためだ、仕方がない。
演技は苦手だけど、できるだけ柄の悪い感じに。
オレは何を仕掛けてこられてもいいように身を構えて叶多をにらみつけた。
「勘弁してください!」
わっ!と、今までのクールな表情は一気に崩れ、叶多は両手で顔を覆ったままオレに頭を下げた。
「そんな写真が出回ったら、僕は生きていけません!」
「何言ってんだよ。
南 叶多って言えば自由奔放で、世論に振り回されるようなキャラじゃないだろ」
「あ、あれは事務所の売り出し方針で、僕は全然そんなんじゃないんです」
叶多は体を震わせている。
本当の叶多ってこんなにビクビクおどおどした奴だったのか?
「あのおぞましい瞬間を世間に知られるなんて耐えられない。
まだ裸撮られたほうがましです!」
なにっ!?
ヌードを撮るチャンス?
けど、青ざめた叶多を見ると、じゃあお願いします、と冗談でも言える様子ではなかった。
「もしかしてお前、利用されてるのか?」
叶多が顔からゆっくりと手をはずした。
そして助けを求めるように上目遣いでオレを見た。
その叶多の姿があまりにも頼りないもんだから、オレの中の罪悪感はもうパンパンに膨れ上がっていた。
「別にオレだってプライベートを暴こうなんて思ってねえよ。
献金のネタが撮れればこの写真を使ったりしない」
叶多がピクリ、と反応した。
「こっちは何週間もかけて情報つかんでるんだよ。
献金のネタが出せないって言うんなら、献金の橋渡し役の証拠としてこの写真を…」
使うつもりはなかった。
他人に利用されて泣きそうになってるような奴を踏みつけて幸せになんてなれっこない。
もし叶多が献金の証拠を出さなくても、この写真は売らないと思う。
けど、どうにかハッタリかましてでも献金の証拠が欲しい。
オレには時間がないんだ。
もうのんびりバイトなんかしてる場合じゃないんだよ。
「分かりました。
証拠は僕の部屋にあります。
外に持ち出すことはできません」
「じゃあ、オレを部屋に入れてくれよ。
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