星狩る人

仙崎 楓

文字の大きさ
9 / 28

やっと外に出られました。

しおりを挟む
 オレってジェットコースターに乗ったんだっけ?
 叶多ときたら、自前のスポーツカーを飛ばす飛ばす。
前の車と車の間をガンガンすり抜けていく。

…あ、ドアの開け方が分からない。
なんか、斜め上に開いてた気がするけど。叶多はオレが試行錯誤しているのに気づくと、俺の上に乗っかるように助手席のドアに手を伸ばした。
叶多の体重が感じられて、心臓がびくっと震えた。
一気に顔が熱くなる。
「どうぞ、お嬢様」
「!
 またバカにしやがって!」
 オレは車から飛び降りた。
くそっ。
あんな奴にからかわれてドギマギするなんて馬鹿みたいだ。
しかも相手は男だぞ、男!


 錆びた赤い階段を昇って、二階の角部屋の鍵を開ける。
ドアを開けると、ギイ、ときしんだ音がする。
玄関から全てが見渡せる小さな部屋がある。
家具はないけど、叶多の部屋と違って、畳の部屋にカメラの機材や本の入ったダンボールなんかがいくつも置いてある。
「散らかってるけど、どっか座って待ってて」
 叶多は無言のまま部屋に上がった。
そして、ノートパソコンが開かれたままの机の前に胡坐をかいて座った。

 オレは冷蔵庫を開けた。
 うん、見事に空っぽだ。
見る前から何もないとは思ってたけど、もしかしたら何かあるかもと一縷の望みをもって中身を確認してみた。
やっぱり叶多に出せるようなお茶のようなものは一本もなかった。
それどころか、コンビニ弁当についてた調味料程度しか見当たらなかった。
「悪い、何もない」
「そもそも期待してない。
 入った瞬間に肖像権料払えそうもないことも悟った」
「取るつもりだったのかよ!」
もてなすつもりが落ち込んでさらに腹が立っただだけだった。
とっとと要るものだけ用意するか。

「お、すげえ」
「あ、勝手に見るなよ」
叶多はオレのパソコンをいじって昔のフォルダを開いていた。
無数の天体写真が画面いっぱいに広がっている。
「何で?
 いいじゃん。
 極秘エロ画像とか出てくるとか?」
「出てこねえよ」
「これ撮ったのお前?」
「………そうだよ。
 オレが、学生のときに撮った大事な写真だ」
「・・・すっげえ綺麗」
 叶多はモニターに食い入るように写真を見ている。
「・・・ありがとう」
「パパラッチよりこっちのほうがお前っぽい。
 お前のこと良く知らないから何となくだけど」
 叶多の言葉を聞いて、オレは思わず身を乗り出した。
「本当か?
オレも!
 …オレも本当は星撮って食っていきたいんだ」
「この写真で応募とかすればいいじゃん・・・、て応募してるし」
 フォルダに保存された応募票を開かれている。
「昔の一枚にこだわるんじゃなくて、これからもっといいやつ撮ろうと思ってさ」
「ふうん」
「ホイ!」
オレはマウスをクリックして、ウインドウを閉じると、さっさとシャットダウンした。
「充電器も持ったし、準備オッケー。
 じゃあ叶多のマンションに」
「あ、ヤベ。
 仕事行く時間だ」
「お前またかよっ!」
ホントに寝る間もない男だな。
…まあ、邪魔してるオレも悪いんだけどさ。
「ここから直に行くから、お前も連れてく」
「え、どこに」
「スタジオ。
 これから雑誌の撮影だ」
…おいおい、大丈夫かよ~!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

嫌いなあいつが気になって

水ノ瀬 あおい
BL
今しかない青春だから思いっきり楽しみたいだろ!? なのに、あいつはいつも勉強ばかりして教室でもどこでも常に教科書を開いている。 目に入るだけでムカつくあいつ。 そんなあいつが勉強ばかりをする理由は……。 同じクラスの優等生にイラつきを止められない貞操観念緩々に見えるチャラ男×真面目で人とも群れずいつも一人で勉強ばかりする優等生。 正反対な二人の初めての恋愛。

寂しいを分け与えた

こじらせた処女
BL
 いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。  昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。

禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り

結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。 そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。 冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。 愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。 禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

勘違いへたれアルファと一途つよかわオメガ──ずっと好きだったのは、自分だけだと思ってた

星群ネオン
BL
幼い頃に結婚の約束をした──成長とともにだんだん疎遠になったアルファとオメガのお話。 美しい池のほとりで出会ったアルファとオメガはその後…。 強くてへたれなアルファと、可愛くて一途なオメガ。 ありがちなオメガバース設定です。Rシーンはありません。 実のところ勘違いなのは二人共とも言えます。 α視点を2話、Ω視点を2話の後、その後を2話の全6話完結。 勘違いへたれアルファ 新井裕吾(あらい・ゆうご) 23歳 一途つよかわオメガ 御門翠(みがと・すい) 23歳 アルファポリス初投稿です。 ※本作は作者の別作品「きらきらオメガは子種が欲しい!~」や「一生分の恋のあと~」と同じ世界、共通の人物が登場します。 それぞれ独立した作品なので、他の作品を未読でも問題なくお読みいただけます。

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

ショコラとレモネード

鈴川真白
BL
幼なじみの拗らせラブ クールな幼なじみ × 不器用な鈍感男子

処理中です...