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お前が怒ってくれて報われたよ
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「お疲れ様です、滝さん。
これ、僕が愛用してる酵素ドリンクなんです」
滝の控え室から叶多の明るい声がもれてくる。
オレは控え室のドアの後ろに隠れているから、滝はオレがここにいることに気づいていない。
「ああ、ありがとう。
・・・うん、個性的な味だ」
「そう言わずに。
これで僕病気知らずなんですよ。
ほらぐぐっと♪」
滝が苦しみながら飲み干している音が聞こえる。
滝のむせる声がするなか、叶多が言った。
「実は、今日滝さんに紹介したいカメラマンがいるんです」
オレは叶多に指示されていた通り、扉の裏側から姿を現した。
滝に会うのは、学校を卒業して以来初めてだった。
記憶に残っているような学生っぽさは全くなく、バリバリ仕事している社会人になっていて、少しやつれているようにも見えた。
滝は、オレを見ると少し考え込み、満面の笑みを見せた。
「空!
久しぶりだなあ、元気だったか?」
妙に馴れ馴れしく肩を叩かれて、オレは気味が悪くなった。。
奇妙なテンションについていけず、声が出ない。
会ったところでどうすればいいんだよ。
オレが困惑しているのを見て、叶多が口を
「滝さんは、空の腕が確かなことを一番ご存知なんですよね?」
叶多の含みのある物言いで、滝はオレが姿を現した理由に勘付いたようだった。
「叶多くん。
何が言いたいのかなあ」
威圧的な声で尋ねてくる。
「最近の自分の評価は耳に届いてるんだろう?
実力も伴っていないのにいつまで空の写真の力を借りてやっていくつもりだよ。
いい加減盗作を認めたらどうだ」
「仮に言ったところで、
僕と空、世の中はどちらの言い分を聞くと思う?
僕はプロのフォトグラファー、かたや空は…」
滝はオレを上から下まで眺めて笑った。
「今何してるんだったっけ?」
「…週刊誌のカメラマン」
滝がぷっと吹き出す。
「けど、オレは滝よりいい写真を撮れる」
「はあ?
どの口が言ってる訳…」
「じゃあ、今から撮り比べしてみれば?」
叶多が滝に言った。
「空とアンタ、どちらがいいグラビアが撮れるか」
「何を言いだすかと思えば。
できるわけないじゃないか」
「あれ、自信ないんですか」
「ふざけるのも大概にしろ。
仕事は遊びじゃないんだ・・・・・・・・うっ!」
急に滝は苦しそうに腹を抱えると、もがくようにトイレに駆け込んでいった。
叶多はにんまりと笑いながら俺のほうを見た。
「即効性の下剤。
これで滝はしばらくトイレとお友達だ」
さっきの青汁に入れてたんだろうか。
…何て恐ろしいアイテムを持つ男なんだ。
「ほら来いよ」
ぐいっ、と手をつかまれて引っ張られた。
導かれるままに廊下を進んでいくと、両側に開かれた大きな扉が見えてきて、目の前はどんどんと明るい光に包まれていった。
撮影スタジオだ。
スタッフが叶多に気づいて声を掛けた。
「あ、叶多くん。
滝さん呼びますね」
「いや、滝さん体調不良だから代わりを連れてきました」
軽く背中を押され、オレはたくさんの人の前に立った。
「腕は俺が保障します」
スタッフは納得せず顔をしかめた。
「いや、でも」
「滝さん、ずっとトイレに篭ったまま出てこなくて。
昨日生牡蠣食べたみたいだから、ひょっとするとノロ………」
もう、滝を呼びに行こうとする人間は一人もいなかった。
「空、やるぞ」
叶多が自信満々の笑みを浮かべている。
「いや、オレは」
やるよな。
お前なら余裕だろ。
叶多の視線がそう語っているのが分かった。
すごく光の満ちた場所。
目の前には十分すぎるほどの撮影セットが完成されていた。
自分のカメラを構えた。
ファインダーをのぞくと、仕事モードの叶多と視線がぶつかった。
これ、僕が愛用してる酵素ドリンクなんです」
滝の控え室から叶多の明るい声がもれてくる。
オレは控え室のドアの後ろに隠れているから、滝はオレがここにいることに気づいていない。
「ああ、ありがとう。
・・・うん、個性的な味だ」
「そう言わずに。
これで僕病気知らずなんですよ。
ほらぐぐっと♪」
滝が苦しみながら飲み干している音が聞こえる。
滝のむせる声がするなか、叶多が言った。
「実は、今日滝さんに紹介したいカメラマンがいるんです」
オレは叶多に指示されていた通り、扉の裏側から姿を現した。
滝に会うのは、学校を卒業して以来初めてだった。
記憶に残っているような学生っぽさは全くなく、バリバリ仕事している社会人になっていて、少しやつれているようにも見えた。
滝は、オレを見ると少し考え込み、満面の笑みを見せた。
「空!
久しぶりだなあ、元気だったか?」
妙に馴れ馴れしく肩を叩かれて、オレは気味が悪くなった。。
奇妙なテンションについていけず、声が出ない。
会ったところでどうすればいいんだよ。
オレが困惑しているのを見て、叶多が口を
「滝さんは、空の腕が確かなことを一番ご存知なんですよね?」
叶多の含みのある物言いで、滝はオレが姿を現した理由に勘付いたようだった。
「叶多くん。
何が言いたいのかなあ」
威圧的な声で尋ねてくる。
「最近の自分の評価は耳に届いてるんだろう?
実力も伴っていないのにいつまで空の写真の力を借りてやっていくつもりだよ。
いい加減盗作を認めたらどうだ」
「仮に言ったところで、
僕と空、世の中はどちらの言い分を聞くと思う?
僕はプロのフォトグラファー、かたや空は…」
滝はオレを上から下まで眺めて笑った。
「今何してるんだったっけ?」
「…週刊誌のカメラマン」
滝がぷっと吹き出す。
「けど、オレは滝よりいい写真を撮れる」
「はあ?
どの口が言ってる訳…」
「じゃあ、今から撮り比べしてみれば?」
叶多が滝に言った。
「空とアンタ、どちらがいいグラビアが撮れるか」
「何を言いだすかと思えば。
できるわけないじゃないか」
「あれ、自信ないんですか」
「ふざけるのも大概にしろ。
仕事は遊びじゃないんだ・・・・・・・・うっ!」
急に滝は苦しそうに腹を抱えると、もがくようにトイレに駆け込んでいった。
叶多はにんまりと笑いながら俺のほうを見た。
「即効性の下剤。
これで滝はしばらくトイレとお友達だ」
さっきの青汁に入れてたんだろうか。
…何て恐ろしいアイテムを持つ男なんだ。
「ほら来いよ」
ぐいっ、と手をつかまれて引っ張られた。
導かれるままに廊下を進んでいくと、両側に開かれた大きな扉が見えてきて、目の前はどんどんと明るい光に包まれていった。
撮影スタジオだ。
スタッフが叶多に気づいて声を掛けた。
「あ、叶多くん。
滝さん呼びますね」
「いや、滝さん体調不良だから代わりを連れてきました」
軽く背中を押され、オレはたくさんの人の前に立った。
「腕は俺が保障します」
スタッフは納得せず顔をしかめた。
「いや、でも」
「滝さん、ずっとトイレに篭ったまま出てこなくて。
昨日生牡蠣食べたみたいだから、ひょっとするとノロ………」
もう、滝を呼びに行こうとする人間は一人もいなかった。
「空、やるぞ」
叶多が自信満々の笑みを浮かべている。
「いや、オレは」
やるよな。
お前なら余裕だろ。
叶多の視線がそう語っているのが分かった。
すごく光の満ちた場所。
目の前には十分すぎるほどの撮影セットが完成されていた。
自分のカメラを構えた。
ファインダーをのぞくと、仕事モードの叶多と視線がぶつかった。
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