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みんなが忘れた頃に、再びおっさん現る。
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「布団でも干すか」
「このマンション、ベランダにもの干すの禁止」
「げ~、じゃあお前布団干したことないの?
フッケツ~」
「お前犯すぞ」
昨夜のことを思い出して、オレは慌てて寝室から退散した。
「今日はロケだからいつ終わるか謎」
いつ終わるか分からないのはいつものことだろ、と心の中でツッコミを入れつつオレは窓越しに空を見上げた。
「…今日のロケ中止かも」
「何で」
「空にひつじがいるから」
オレの予想通り叶多は早々に帰ってきた。
「すげえなお前。
マジで中止。
地面濡れちゃって話繋がらなくなるからって」
ロケが中止でも他の仕事が入ってきたりすることが多いらしいけど、
「ホレ、お土産」
叶多が雑誌をよこしてきた。
?何だ?
オレは首をかしげながら受け取った。
「・・・これ!」
表紙には、まだ店には並んでいない月の数字と、オレが撮影した叶多が載せられていた。
中をめくると、巻頭ページから叶多のグラビアが何枚も続いていく。
そして最初のページの左端に小さく「Sora Kanbara」と書かれていた。
「いい出来だって評判も上々だけど、どうだ?」
どうだ?なんて聞いてきたけど、叶多の顔は確信に満ちていた。
最高に決まってるだろ、って。
「…不本意だけど、ちょっとスッキリした」
口をにっと開いて笑うと、叶多にポンポン、と頭を撫でられた。
「たいした奴だよ」
最初のころとはうって変わってトゲのなくなった叶多を前にして、正直オレは戸惑っていた。
滝の事を話してから、叶多は何だか優しくなった気がする。
…同情されてんのかな。
叶多はオレを可哀想なんて絶対思わない気がしたから話したんだけどな。
もう本音で何も言ってもらえないんじゃないかと思うと、心の中がモヤッとしてくる。
「別に。
夜晴れるか確認するために日中空を見る癖があって、自然に雲とかもよく見るようになっただけだし」
「お前はいっつも空が好きで上を向いてるんだな。
地面に突っ伏さないようにじゃなくて」
オレの頭の中には、大門にキスされた後に空を見ていたあのときの叶多の姿が浮かんでいた。
叶多も何かと戦っているんだ。
けど今のオレは、ちゃんと上を向けてるのかな。
違う、こんなのやっぱりオレじゃない。
「叶多、オレ…」
ガチャ。
オレたち以外誰もいないはずなのに、リビングのドアが突然開いて、オレは驚きのあまり飛び上がった。
「叶多。
私との約束を忘れたのかい?」
低い、中年の男の声。叶多にキスしたおっさん、大門だ。
何で入って来れたんだ?
ひょっとして大門の指紋も鍵に認証されているんだろうか。
「ああ、すっかり」
叶多は今思い出した、という風に平然と言ってのけた。
叶多の反応を見た大門はぴくりと眉をひそめ、オレのほうを見据えた。
「最近いやに反抗的だと思ったら、そのペットのせいかい。
人間、守るものがあると強くなるものだが、君のはただの虚勢だ。
おとなしく私に従っているほうが身のためだよ」
「俺はもうずっと前から芸能界に未練はない。
アンタに従う理由もない」
「誰のおかげで芸能生活を満喫できていると思っているんだい?
君が辞めたいといっても、まだ君をここまで育てた私たちに恩を返していないだろう。
不義理はいただけないね」
「恩返し?
確かに、裏帳簿のある給料明細じゃどれだけ搾取されているのか分かったもんじゃない。」
「もういい。
君が電話に出ないから急遽立ち寄っただけだから、今日はあまり時間がなくてね。
寝室に行こうか」
大門が叶多の頬に手を滑らせた。
「おい!」
大門がうんざりした顔でオレを見た。
「ああ、ペットがいたんだったな」
コイツ、忘れたフリかよ!
「ペットじゃねえ。
…週間スクープのカメラマンだ」
大門の動きが止まる。
「叶多、おもしろいものを飼っているようだね。
説明しなさい」
叶多に話す間を与えず、オレがしゃべり続けた。
「オレは、アンタの献金疑惑を追ってる。
そして今、重大な写真のデータを持ってる」
大門の口元がぐにゃりと歪んだ。
「どんな写真だね」
「言わなくても分かるんじゃないか?
いつでも雑誌に掲載できる用意は整ってるよ。
ここで油売るより、頭脳集団と作戦会議するべきじゃない?」
オレが持ってるのはキス写真一枚だけだ。
これで大門を追い払えるのか大博打だった。
大門は忌々しそうにオレをにらみつけた。
「叶多、次に私と会うまでにそのペットは捨てておくように」
大門は叶多から離れ、玄関に向かい始めた。
バタン!と勢いよくドアが閉められた。
「は、ははっ。
ハッタリかましたけどヤバかったかな」
ほっと一息ついて笑ってみたけど、顔がヒクヒクひきつってる気がする。
叶多は大門がいなくっても体をこわばらせたまま、ぽつりと呟いた。
「これが南叶多の本当の姿だ。
俺は、お前から成功を奪った滝と同じだ」
「このマンション、ベランダにもの干すの禁止」
「げ~、じゃあお前布団干したことないの?
フッケツ~」
「お前犯すぞ」
昨夜のことを思い出して、オレは慌てて寝室から退散した。
「今日はロケだからいつ終わるか謎」
いつ終わるか分からないのはいつものことだろ、と心の中でツッコミを入れつつオレは窓越しに空を見上げた。
「…今日のロケ中止かも」
「何で」
「空にひつじがいるから」
オレの予想通り叶多は早々に帰ってきた。
「すげえなお前。
マジで中止。
地面濡れちゃって話繋がらなくなるからって」
ロケが中止でも他の仕事が入ってきたりすることが多いらしいけど、
「ホレ、お土産」
叶多が雑誌をよこしてきた。
?何だ?
オレは首をかしげながら受け取った。
「・・・これ!」
表紙には、まだ店には並んでいない月の数字と、オレが撮影した叶多が載せられていた。
中をめくると、巻頭ページから叶多のグラビアが何枚も続いていく。
そして最初のページの左端に小さく「Sora Kanbara」と書かれていた。
「いい出来だって評判も上々だけど、どうだ?」
どうだ?なんて聞いてきたけど、叶多の顔は確信に満ちていた。
最高に決まってるだろ、って。
「…不本意だけど、ちょっとスッキリした」
口をにっと開いて笑うと、叶多にポンポン、と頭を撫でられた。
「たいした奴だよ」
最初のころとはうって変わってトゲのなくなった叶多を前にして、正直オレは戸惑っていた。
滝の事を話してから、叶多は何だか優しくなった気がする。
…同情されてんのかな。
叶多はオレを可哀想なんて絶対思わない気がしたから話したんだけどな。
もう本音で何も言ってもらえないんじゃないかと思うと、心の中がモヤッとしてくる。
「別に。
夜晴れるか確認するために日中空を見る癖があって、自然に雲とかもよく見るようになっただけだし」
「お前はいっつも空が好きで上を向いてるんだな。
地面に突っ伏さないようにじゃなくて」
オレの頭の中には、大門にキスされた後に空を見ていたあのときの叶多の姿が浮かんでいた。
叶多も何かと戦っているんだ。
けど今のオレは、ちゃんと上を向けてるのかな。
違う、こんなのやっぱりオレじゃない。
「叶多、オレ…」
ガチャ。
オレたち以外誰もいないはずなのに、リビングのドアが突然開いて、オレは驚きのあまり飛び上がった。
「叶多。
私との約束を忘れたのかい?」
低い、中年の男の声。叶多にキスしたおっさん、大門だ。
何で入って来れたんだ?
ひょっとして大門の指紋も鍵に認証されているんだろうか。
「ああ、すっかり」
叶多は今思い出した、という風に平然と言ってのけた。
叶多の反応を見た大門はぴくりと眉をひそめ、オレのほうを見据えた。
「最近いやに反抗的だと思ったら、そのペットのせいかい。
人間、守るものがあると強くなるものだが、君のはただの虚勢だ。
おとなしく私に従っているほうが身のためだよ」
「俺はもうずっと前から芸能界に未練はない。
アンタに従う理由もない」
「誰のおかげで芸能生活を満喫できていると思っているんだい?
君が辞めたいといっても、まだ君をここまで育てた私たちに恩を返していないだろう。
不義理はいただけないね」
「恩返し?
確かに、裏帳簿のある給料明細じゃどれだけ搾取されているのか分かったもんじゃない。」
「もういい。
君が電話に出ないから急遽立ち寄っただけだから、今日はあまり時間がなくてね。
寝室に行こうか」
大門が叶多の頬に手を滑らせた。
「おい!」
大門がうんざりした顔でオレを見た。
「ああ、ペットがいたんだったな」
コイツ、忘れたフリかよ!
「ペットじゃねえ。
…週間スクープのカメラマンだ」
大門の動きが止まる。
「叶多、おもしろいものを飼っているようだね。
説明しなさい」
叶多に話す間を与えず、オレがしゃべり続けた。
「オレは、アンタの献金疑惑を追ってる。
そして今、重大な写真のデータを持ってる」
大門の口元がぐにゃりと歪んだ。
「どんな写真だね」
「言わなくても分かるんじゃないか?
いつでも雑誌に掲載できる用意は整ってるよ。
ここで油売るより、頭脳集団と作戦会議するべきじゃない?」
オレが持ってるのはキス写真一枚だけだ。
これで大門を追い払えるのか大博打だった。
大門は忌々しそうにオレをにらみつけた。
「叶多、次に私と会うまでにそのペットは捨てておくように」
大門は叶多から離れ、玄関に向かい始めた。
バタン!と勢いよくドアが閉められた。
「は、ははっ。
ハッタリかましたけどヤバかったかな」
ほっと一息ついて笑ってみたけど、顔がヒクヒクひきつってる気がする。
叶多は大門がいなくっても体をこわばらせたまま、ぽつりと呟いた。
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俺は、お前から成功を奪った滝と同じだ」
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