星狩る人

仙崎 楓

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芸能人と逃避行

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 叶多のマンションの前は大勢のマスコミが溢れかえっていた。
外から外聞もなく「南さーん」と名前を連呼したり、時折インターフォンを鳴らしては舌打ちをしている。
とてもじゃないけど、オレがエントランスのインターフォンを鳴らせるような状況じゃなかった。
ただ叶多の部屋を見上げるだけで、時間だけが過ぎていく。

ここまで来てもどうしようもない。
 どうやったら叶多に気づいてもらえるんだろう?
 
ブォン!
ド派手なアクセル音がその場に響いた。
オレも含めたその場の人間全てが視線を向けたその先には、あのイカツイ真っ赤な車が姿を現していた。
車はもう一度大きな音を立てるとこっちに向かって走り出した。
報道陣たちが轢かれないように慌てて道を開ける。
オレ一人だけはがじっと動かず、運転席の人物を確認していた。

叶多だ。

「空」
中からドアが開いて、声がした。
弾かれる様に俺は車に体を滑り込ませた。
不慣れなドアをどうにか閉めた途端、車は急発進してあっという間に人だかりから遠ざかっていった。



 叶多がどこに向かって走っているのか見当もつかない。
けど叶多は闇雲に走っているわけでもなさそうだ。
何の迷いもなく高速で車を右、左へと滑らせていく。

オレが車に乗ってから、まだ一言もオレたちは言葉を交わしていなかった。
オレから言いたいことは山ほどあったけど、ひとつずつ順を追って話そうと
自分を落ち着かせていて、なかなか話し出せずにいた。

「叶多…お前が出版社に写真を送ったのか?」
車に乗って暫くして、ようやく言えた俺の最初の一言はこれだった。

会えて嬉しい。
最初に思ったことは言いづらくて、そんな素振りも出せずにいた。
だって叶多はオレと違って落ち着いた様子でハンドルを握っている。
「金が必要なんだろ。
 元々あの写真はばらまかせるつもりだったんだ。
 まあ、辞めれると思ったのにただの謹慎だし、大門はダメージ無しで全然意味なかったけど。
オレが売ったんだから気にすることもない。
 だからお前は気兼ねなく報酬を受け取ればいいんだよ」
「いらねえよ、」
「お前は自分の夢追いかけろ」
「何で自分はもういいみたいに言うんだよ。
お前にはやりたいことないのかよ」
「空に会いたかった」

不意打ちで、先に言われてしまった。
叶多は無言のオレに構わず続けた。
「あんなにこまめに家に帰ること今までなかった。
 空が家にいたからだ。
 空が出て行って、家が広くて、寒かった」
あの写真を出せば、空が俺に会いに来ると思ったからだ」
「オレを呼び出すためなんかにこんなやり方」
「なんかじゃない。
 空に会うことが一番の目的だった」
叶多も会いたいと思ってたんだ。
叶多の気持ちを聞いて、オレも少しずつ自分の気持ちを言い出せるようになった。
「元気そうで安心した。
…オレも叶多に会いたかったよ」

すると叶多はリズミカルにギアをトップまで上げた。
車がぐんと加速する。
「じゃ、逃避行といくか」
「えっ、どこに」
「ハワイ」
「オレ、パスポート持ってないぞ!?」
 叶多は構わずどんどんスピードを上げて、高速のインターを通過した。
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