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この告り方はズルい
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「コーヒー買ってきて」
二時間ほど走った後に高速のサービスエリアに入ると、叶多がピッ、と一万円札を指にはさんでオレに向けた。
「お、おう」
オレは金を受け取って車から降りようとした。
う~ん。
いつまでたっても開けづらいドアだな、この車。
普通の車と違う方向に押すから壊れそうで嫌なんだよ。
「いい加減慣れろよ」
叶多が俺の上に乗っかるように助手席のドアに手を伸ばした。
叶多の体重が感じられて、心臓がびくっと震えた。
ダメだ。
変に意識してしまう。
「ご注文どうぞ~」
カフェエプロンをつけた店員に促されて、オレはスタンダードなコーヒーをひとつ頼んだ。
店内の大画面にはワードショーが映し出されている。
早くも叶多の暴走シーンが映し出されている。
あの目立つ車を長時間停めてると、人に気づかれて厄介なことになりそうだと思い、オレはコーヒーを受け取ると急いで車に戻った。
ドアを開けて車に乗り込む。
叶多は何かの台本を読んでいたけど、オレに気づくとすぐにシートの横へ差し込んだ。
「あれ、一個?」
「おう」
「自分のも買ってこいよ」
「いい。いらない」
オレはコーヒーとお釣りを渡すと横に座った。
叶多はコーヒを一口飲むとオレに差し出した。
「ほれ」
「叶多、本当に良かったのか?」
叶多はコーヒーを持ったままオレを睨んだ。
「何が」
「えっと、今ワイドショーでこの車の映像が流されてるの見たから…。
見つかって騒ぎになるのも時間の問題だぜ」
「だから何? 騒がれてお前何か変わるの」
「オレは変わらない。けど叶多が困る」
「じゃあ、急がないとな」
ぐいっとコーヒーをオレに押し付けた。
叶多はエンジンをかけると高速のレーンに車を走らせた。
「………ハワイ?」
うん、確かにハワイっぽいヤシの木は生えている。
けどね、うん。
芸能人がハワイって言うとアメリカ行っちゃうのかよ!とか思うよね?
叶多の横には「ようこそ羽合温泉へ!」と書かれたでっかい看板が立っている。
「オレ、日本にハワイがあるとは知らなかった・・・」
「行くぞ」
「へ?」
「ここから先、車は入れない」
叶多は車から降りると暗い砂浜を迷うことなくずんずん歩いていった。
ザアアア、ドオン。
海どのくらい近付いているんだろう。
とてつもない波の轟きに思わず体がすくんで、すがる思いで上空を拝んだ。
元々まばらだった街灯がさらに減った海辺では、真っ白な星屑たちがオレたちを待ち構えていた。
オレは口をぽかりと開けたまま夢中で満天の空を見上げた。
黒いベルベットに散りばめられた宝石が、今にもオレたちに降り注いできそうだ。
「………っ」
叶多の呆れた顔が目の端っこに映った。
「泣かないって言う割によく泣くよな、お前」
「うっせえな!
綺麗な星見るとだめなんだよ」
オレの目からボロボロと涙がこぼれる。
「綺麗、か。
ここにお前と来たら、どんな風に見えるんだろうって思ったけど。
お前、やっぱスゴいわ。
あのときは綺麗なんて思わなかった」
「あのとき?」
「大門と初めて枕した後に来た場所が、ここだよ。
真っ暗な砂浜にずっと一人で座ってた。
役者として売れたくて何でもやろうと思ってやったのに、あのときはもう誰にも見られたくなかった」
「暗闇は最高だって言うお前と一緒ならあの最悪だった気分も忘れられるかもな」
叶多は自分の心臓辺りの服をぐしゃっとつかんだ。
「心臓、空にわしづかみにされたみたいだ。
俺とは比べ物にならないくらいお前は綺麗だよ」
今度のドラマで言うセリフの練習か?なんて言おうかと思ったのに、叶多の顔が余りに真剣でふざけることができなかった。
「…オレみたいな奴どこにでもいるって」
目が合わせられない.
半笑いで俯いて砂を蹴ってみる。
「世界中探せばいるのかもな。
でも、俺の前に現れたのは、空だけだ」
叶多の真っ直ぐな視線に胸を打ち抜かれたみたいだ。
心臓が痛いくらいバクバクと振動している。
それとも、足元もほとんど見えないほど薄暗い砂浜で轟く波の音のせいなんだろうか。
どちらからともなく少しずつ叶多との距離が縮まっていく。
「星ばっか追いかけてるから、空は自分のことが全然見えてないんだよ」
そして、風になびくお互いの髪が触れ合うほどの近さになった時、オレたちはまるで初めてのようなぎこちないキスをしていた。
二時間ほど走った後に高速のサービスエリアに入ると、叶多がピッ、と一万円札を指にはさんでオレに向けた。
「お、おう」
オレは金を受け取って車から降りようとした。
う~ん。
いつまでたっても開けづらいドアだな、この車。
普通の車と違う方向に押すから壊れそうで嫌なんだよ。
「いい加減慣れろよ」
叶多が俺の上に乗っかるように助手席のドアに手を伸ばした。
叶多の体重が感じられて、心臓がびくっと震えた。
ダメだ。
変に意識してしまう。
「ご注文どうぞ~」
カフェエプロンをつけた店員に促されて、オレはスタンダードなコーヒーをひとつ頼んだ。
店内の大画面にはワードショーが映し出されている。
早くも叶多の暴走シーンが映し出されている。
あの目立つ車を長時間停めてると、人に気づかれて厄介なことになりそうだと思い、オレはコーヒーを受け取ると急いで車に戻った。
ドアを開けて車に乗り込む。
叶多は何かの台本を読んでいたけど、オレに気づくとすぐにシートの横へ差し込んだ。
「あれ、一個?」
「おう」
「自分のも買ってこいよ」
「いい。いらない」
オレはコーヒーとお釣りを渡すと横に座った。
叶多はコーヒを一口飲むとオレに差し出した。
「ほれ」
「叶多、本当に良かったのか?」
叶多はコーヒーを持ったままオレを睨んだ。
「何が」
「えっと、今ワイドショーでこの車の映像が流されてるの見たから…。
見つかって騒ぎになるのも時間の問題だぜ」
「だから何? 騒がれてお前何か変わるの」
「オレは変わらない。けど叶多が困る」
「じゃあ、急がないとな」
ぐいっとコーヒーをオレに押し付けた。
叶多はエンジンをかけると高速のレーンに車を走らせた。
「………ハワイ?」
うん、確かにハワイっぽいヤシの木は生えている。
けどね、うん。
芸能人がハワイって言うとアメリカ行っちゃうのかよ!とか思うよね?
叶多の横には「ようこそ羽合温泉へ!」と書かれたでっかい看板が立っている。
「オレ、日本にハワイがあるとは知らなかった・・・」
「行くぞ」
「へ?」
「ここから先、車は入れない」
叶多は車から降りると暗い砂浜を迷うことなくずんずん歩いていった。
ザアアア、ドオン。
海どのくらい近付いているんだろう。
とてつもない波の轟きに思わず体がすくんで、すがる思いで上空を拝んだ。
元々まばらだった街灯がさらに減った海辺では、真っ白な星屑たちがオレたちを待ち構えていた。
オレは口をぽかりと開けたまま夢中で満天の空を見上げた。
黒いベルベットに散りばめられた宝石が、今にもオレたちに降り注いできそうだ。
「………っ」
叶多の呆れた顔が目の端っこに映った。
「泣かないって言う割によく泣くよな、お前」
「うっせえな!
綺麗な星見るとだめなんだよ」
オレの目からボロボロと涙がこぼれる。
「綺麗、か。
ここにお前と来たら、どんな風に見えるんだろうって思ったけど。
お前、やっぱスゴいわ。
あのときは綺麗なんて思わなかった」
「あのとき?」
「大門と初めて枕した後に来た場所が、ここだよ。
真っ暗な砂浜にずっと一人で座ってた。
役者として売れたくて何でもやろうと思ってやったのに、あのときはもう誰にも見られたくなかった」
「暗闇は最高だって言うお前と一緒ならあの最悪だった気分も忘れられるかもな」
叶多は自分の心臓辺りの服をぐしゃっとつかんだ。
「心臓、空にわしづかみにされたみたいだ。
俺とは比べ物にならないくらいお前は綺麗だよ」
今度のドラマで言うセリフの練習か?なんて言おうかと思ったのに、叶多の顔が余りに真剣でふざけることができなかった。
「…オレみたいな奴どこにでもいるって」
目が合わせられない.
半笑いで俯いて砂を蹴ってみる。
「世界中探せばいるのかもな。
でも、俺の前に現れたのは、空だけだ」
叶多の真っ直ぐな視線に胸を打ち抜かれたみたいだ。
心臓が痛いくらいバクバクと振動している。
それとも、足元もほとんど見えないほど薄暗い砂浜で轟く波の音のせいなんだろうか。
どちらからともなく少しずつ叶多との距離が縮まっていく。
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