ナツキ

SHIZU

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家族の話

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「俺の母親、仕事は美容系の通販サイトの社長なんだけど、俺にはあんまり興味がないっていうか、育児をしない人っていうか…」
「え?」
「最近の言葉で言えば、ネグレクトってやつ?昔、父親が生きてた時は、家族みんなすごい仲良くて。でも俺が10歳の時、父親が事故で亡くなってさ。それからは心が壊れたっていうか、仕事ばっかして、家には寝に帰るだけみたいな。俺と目があっても、おはようくらいしか言わなくなって。人恋しくなったら、たまに男と付き合って…まあもちろん社長っていう立場もあるし、そんな男とっかえひっかえみたいなことはないし、節度ある付き合いはしてたけど、やっぱそういう方面はさ、息子じゃ埋められないじゃん?」
「まぁ…」
「毎日、テーブルの上に3000円置いてあって、中学になったらそれが5000円になったけど…」
とちょっと笑う俺の横で、真面目に話を聞く那月がいる。
「まぁお金さえあれば、食うには困らないし、住むとこも困らない。育児放棄っていうか、表現が難しいよな…こういうの」
「それで?」
「だから他の人とか、取材とかで実家のこと聞かれても放任主義なんでーって言ってる。まぁ間違いでもないし。食費用に置かれてたお金を、節約して貯めてたから、それで東京行って、沙織さんの事務所のオーディション受けた。中3の時にね。もしこれで芸能人とかなったら、母親の視界にちょっとでも入るかなって思ったんだけど、受けること言った時も、受かったこと報告した時も、あっそ。って感じでさ…まあそんなことくらいじゃ、状況は変わらんわな。それを沙織さんに相談したら、”だったら事務所の寮に入れば?東京だけど…困った時は、寮や会社の事務所に人がいるし、なんかあれば母親代わりに私が世話くらいするわよ。東京の高校受けて、こっちで生活すればいいじゃない?揉めるようなら私が間に入って説得するし”って言ってくれた。母親は、はいそうですかってなもんよ。揉めるまでもなかった。余計なお荷物居なくなって、ラッキー!とか思ったかな。実際不安はあったけど、歌の勉強出来るし、こっちの高校でも友達出来たし、事務所の先輩や社員の人はみんないい人だし、向こうにいた時より快適だったりしてさ」
というと、那月が俺をぎゅーっと抱きしめた。
「泣くか?悲しいなら肩貸すけど」
いつもクールだけど、少し柔らかい口調の那月に驚いた。
俺は那月を押し離して言った。
「泣かない!泣かない!悲しくないんだってば。俺は今、沙織さん、春陽さん、事務所の先輩や後輩、学校の友達にも恵まれて、幸せなんだよ?仕事もうまくいってるし。あの時は、2人で居ても孤独だったけど、今は1人でも孤独じゃないからな」
「俺は?」
「ん?何?」
「俺が出てこなかった…」
「ははは。そうだね。那月と組めたことが、1番の幸せかもな!」
と笑った。
俺は那月の家族のことも聞いてみた。
「那月んちはどんな感じ?」
「母親はとある会社の受付やってたって。俺が生まれるまで。父親は製薬会社に勤めてる。あとは腹違いの兄がいる。まぁそんなもんかな」
「へー。お兄さん居たんだ…」
「まぁ…」
なんか話しにくそう?
そうか腹違いって言ったもんな。
仲悪いとか、いじめられてるとかかな?
「那月はさ、寮に住む前は実家暮らし?」
本当のこと教えてくれるかわからなかったけど、聞いてみた。
「うん…」
やっぱ彼氏と住んでたとかは、言いづらいか…
相手、今のマネージャーだしな。
「前に知り合いの紹介で、うちの事務所のオーディション受けるの決めたって言ってたけど、知り合いって春陽さん?」
「何でそれ…春陽に聞いた?」
「いや、何となくそうかなって…」
「そうか…」
あんま突っ込んで聞いちゃ、ダメな感じだったかな…
「ごめん。怒ってる?詮索しすぎ?」
「怒ってない…なんか、えこひいきとか思われるの嫌で、知り合いが事務所に居るって、誰にも言ってなかったから」
「そんなん思わんよ。実力でしょ?那月のダンスはすごいよ!歌はまだ俺の方が良いけどな!」
「…ばーか」
「ばかゆうな!」
まだ踏み込めないエリアがある…
もう触れてはいけない気がした。











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