ナツキ

SHIZU

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目が覚めるとそこは病院だった。
人のお見舞いに来て、自分が入院なんて情けない。
やっぱ俺のせいだった。
記事に過剰に反応したファンの子がしたのだろうか。
ふと隣を見ると、寝ている那月がいる。
心配かけたな。
声をかけようとして手を伸ばす。
「……」
那月。そう呼びかけようとしたのに、声が出ない。
ふと、那月が目を覚ます。
俺が目覚めた気配を感じたんだろう。
「夏?起きたのか?」
俺は軽く頷いた。
ナースコールに手を伸ばした那月の手を掴んで、俺は口をパクパクさせながら声が出ないと説明した。

お医者さんが言うには、精神的なものらしい。
治療すれば長くても1週間ほどで治るとのことだった。
出演するはずだった番組は、体調不良ということで降板した。
那月は単独の仕事にだけ出かけた。
俺は退院して、通院しながら様子を見ることに。
2、3日してあっきーが遊びに来た。
「どう?調子は?」
「だ、いじょぶ」
俺は少し掠れ気味の声でそう言った。
「掠れた声も嫌いじゃないけど、俺は早くお前の歌声聴きたいな」
「俺も…は…く…歌いたい」
「治るまで暇なんだろ?」
俺が頷くと、
「じゃあ歌でも作ってみたら?リリースするかしないかは別として、作っておけばアルバムに収録とかも可能だし」
「うん。そ、する」
「そういや、お前らどうなったの?」
「何、が?」
「付き合うことになった?」
俺が飲んでたお茶を吹くと、
「汚いなぁ」
と笑いながら俺の顔をティッシュで拭いた後、自分の服も拭いていた。
「何、で?」
「こないだ俺が泊まった日、なっちゃんと話してたんだよ…」
そう言って、彰人がこの間の夜の話を始めた。


「なぁ。何であいつ、今日は彰人って呼んでたんだ?」
「俺がそう呼んでって言った」
「何で?」
「そう呼んで欲しかったから。そういやなっちゃん、夏輝に告ったんでしょ?」
「何でそれ!?」
「夏輝が言ってた」
「そんなことまで話すのか?仲良すぎじゃね?」
「羨ましいか?」
「別に…」
「あとはこんな話もしてた。パンイチの崇さんにおちょくられてたって…」
「それは…」
「それは俺が思うに、おちょくられたんじゃなくて、煽られたんだろ?早くしないと、こんな風に誰かに取られるぞって」
「気付いたのか?話聞いただけで…」
「まぁね。だから今度は俺が夏輝を口説く!」
「何で!?」
「お前はお前で口説き続けろ。俺に口説かれることで、あいつも俺とお前に対する気持ちに違いがあるって気付くかもだろ?」
「なるほど…」
「あ、でももし那月への好きは友達で、本当に好きなのは彰人!ってなったら、その時は潔く身を引いてくれ」
「って万が一、本当にそうなったらどうすんだよ!お前が本気じゃないなら、あいつ可哀想だろ?」
「……本気じゃないなんて誰が言った?そん時は俺が喜んで夏輝を幸せにする。腕の傷残ったら、責任取って貰うつもりだったし!」
「嫁って…あんな浅いキズ、すぐかさぶたになって剥がれてたわ!」
「ふ。それは残念。いい口実だと思ったのになー」
「そんな明治や大正じゃあるまいし…」
「でも、自分より俺を選んだってなったら、なっちゃんも諦めつくだろ?」
「お前本気で好きなの?」
「好きだよ。あんないい子、他に居ないもん。まぁ、ともかく!せいぜい頑張れよ!おやすみ」


俺の知らないところで、てな感じの会話が繰り広げられていたらしい。
「彰人は、女性アイドルの…ファン…ったでしょ?恋愛は…男とするの?」
掠れた声の俺のことをギュッと抱きしめると、
「違うよ?俺は男と恋愛したいわけじゃない。好きなだけだよ。頑張ってるし、いい奴だから。俺みたいな奴のことも、許す器の大きさもあるしな!」
「嬉しいけど、俺、那月と付き合うことにし…た。だから彰人の気持ちには応えられない…」
「知ってる。でもこれだけ覚えてて。なっちゃんに泣かされたら、俺がいるから安心しろ」
「ありがと」
「それと、いつもありがとう。あと、お前は頑張り過ぎだ。だから頑張ってなんて言わない。これから先大変なこともあるかもしれない。けど、大丈夫だから…俺たちがいるから。早く治して歌ってくれ」
「うん。本当に…ありがとう」
帰る時振り向いて、見送る俺に笑顔で手を振る彰人の姿を見て、少し泣きそうだった。
本人には言わないでおくけど。
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