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コミュニティ
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夜、俺は久しぶりにコミュニティに顔を出した。
誰かこの腕の回復の速さに、心当たりのあるやつがいたら話を聞きたいと思ったからだ。
「お、アリスじゃないか!」
「久しぶりだな、レイク」
「血が欲しいのか?」
「いや、俺はいいよ。儲かってそうだな」
「そんなこともないよ。お前がいつでも戻ってくるなら引き継ぐぞ? 元はお前の父親が始めた仕事だからな」
「いや、いいよ。1人気ままにやる方が俺には向いてる」
「たまにユキもくるけど、あいつも同じようなこと言ってたな」
とレイクは笑った。
この男は父さん達が死んだ後、父さんがしていたコミュニティの仕事を引き継いだ。
ヴァンパイアの中には、正体を隠して仕事をしている者も多い。
もちろん職種は限られるが。
子供や年寄りにちゃんと血液がいくようにするには、コミュニティで血液を買う方がいい。
そのためにみんな働いている。
父さんの時より値段がだいぶ上がっているのは気になったが、それも世の中の情勢に合わせて仕方ないことなのだろう。
「じゃあ」
「何しにきたんだよ。一杯くらい付き合えよ」
「今日は良いよ。忙しそうだから邪魔しちゃ悪いしな」
「そうか。また寄れよ!」
「ああ。そのうちな」
~~~~~~~~~~
俺は夜市に出かけた。
昨日の青年に礼をしたかったからだ。
今日も居るかはわからないが、会えたら名前くらい聞こう。
俺はいつも買う赤いリンゴ飴を頬張りながら、屋台の間を進んで行った。
昨日と同じ場所にはいないようだ。
今日は流石に休みか……
帰ろうとした時、聞き覚えのある声がした。
「あ! シンデレラ!」
なんだ?
「昨日のシンデレラのお兄さん!」
振り返るとそこには昨日の青年が立っていた。
「俺のことか?」
「そうだよ。舞踏会の途中で慌てて帰るシンデレラみたいだったから」
と彼は笑った。
「俺はシンデレラじゃない。アリスだ」
「え? そっち? そっかー。不思議の国から来たっぽいもんね」
「何の話だ?」
「え、アリスもシンデレラも知らないの? 今度DVD貸してあげる!」
DVD……うちにはプレーヤーが無いが。
「まあどっちでも良い。ちょっと話せるか?」
「良いよ! 今日は遊びに来ただけだから」
礼を言うだけで良いような気もしたが、俺の腕に起きたことを探るには人気のないところで話をしたかった。
「俺はアリス。歳は……25だ。向こうの山の方に住んでいる。君は?」
「俺はソウ。27歳。あ、お兄さんより俺の方が歳上じゃん」
おい。18くらいかと思ったぞ。
30くらいと言っておけば良かった。
「昨日はありがとう。世話になったな。3時間も膝枕を?」
「どういたしまして。なんかあっという間だった。それより目を覚まさなかったらどうしよう……ってずっと不安だったんだ」
「あんなくらいじゃ死にはしない……たぶん」
「やだよ! 目の前で人が死んでいくの見るの!」
そうだろうな。俺は月1で見てるが。
「何か礼を。して欲しいことや欲しいものはないか?」
「別にないけどなぁ……」
「そういえば、俺はニンニクの匂いに敏感なんだ。なのに昨日は気付けなかった。それはソウから別の匂いがしたからだ」
「どんな匂い?」
「薔薇だよ」
「あー。アリスは鼻がいいね。俺、昼間は花屋なんだ。薔薇の花屋」
「薔薇の?」
「そう。薔薇しか置いてない花屋」
「そんな店があるとは知らなかった。昼間は花屋で夜は屋台? 働き者だな」
「母さんがね。薔薇が好きなんだ。昼間は母さんと2人で花屋をやっていて、夜は屋台のアルバイト。俺、歌手になりたくて、今日みたいなアルバイトのない日は人の少ない公園や家の近くの河原で歌ってるんだ」
「そうか。俺の母親も薔薇が好きだったよ」
「だった?」
「そうだ。もうこの世にはいないから」
「あ、ごめん」
「どうして謝る?」
「なんか悲しいこと思い出させたかなって」
「気にするな」
と俺は言った。
誰かこの腕の回復の速さに、心当たりのあるやつがいたら話を聞きたいと思ったからだ。
「お、アリスじゃないか!」
「久しぶりだな、レイク」
「血が欲しいのか?」
「いや、俺はいいよ。儲かってそうだな」
「そんなこともないよ。お前がいつでも戻ってくるなら引き継ぐぞ? 元はお前の父親が始めた仕事だからな」
「いや、いいよ。1人気ままにやる方が俺には向いてる」
「たまにユキもくるけど、あいつも同じようなこと言ってたな」
とレイクは笑った。
この男は父さん達が死んだ後、父さんがしていたコミュニティの仕事を引き継いだ。
ヴァンパイアの中には、正体を隠して仕事をしている者も多い。
もちろん職種は限られるが。
子供や年寄りにちゃんと血液がいくようにするには、コミュニティで血液を買う方がいい。
そのためにみんな働いている。
父さんの時より値段がだいぶ上がっているのは気になったが、それも世の中の情勢に合わせて仕方ないことなのだろう。
「じゃあ」
「何しにきたんだよ。一杯くらい付き合えよ」
「今日は良いよ。忙しそうだから邪魔しちゃ悪いしな」
「そうか。また寄れよ!」
「ああ。そのうちな」
~~~~~~~~~~
俺は夜市に出かけた。
昨日の青年に礼をしたかったからだ。
今日も居るかはわからないが、会えたら名前くらい聞こう。
俺はいつも買う赤いリンゴ飴を頬張りながら、屋台の間を進んで行った。
昨日と同じ場所にはいないようだ。
今日は流石に休みか……
帰ろうとした時、聞き覚えのある声がした。
「あ! シンデレラ!」
なんだ?
「昨日のシンデレラのお兄さん!」
振り返るとそこには昨日の青年が立っていた。
「俺のことか?」
「そうだよ。舞踏会の途中で慌てて帰るシンデレラみたいだったから」
と彼は笑った。
「俺はシンデレラじゃない。アリスだ」
「え? そっち? そっかー。不思議の国から来たっぽいもんね」
「何の話だ?」
「え、アリスもシンデレラも知らないの? 今度DVD貸してあげる!」
DVD……うちにはプレーヤーが無いが。
「まあどっちでも良い。ちょっと話せるか?」
「良いよ! 今日は遊びに来ただけだから」
礼を言うだけで良いような気もしたが、俺の腕に起きたことを探るには人気のないところで話をしたかった。
「俺はアリス。歳は……25だ。向こうの山の方に住んでいる。君は?」
「俺はソウ。27歳。あ、お兄さんより俺の方が歳上じゃん」
おい。18くらいかと思ったぞ。
30くらいと言っておけば良かった。
「昨日はありがとう。世話になったな。3時間も膝枕を?」
「どういたしまして。なんかあっという間だった。それより目を覚まさなかったらどうしよう……ってずっと不安だったんだ」
「あんなくらいじゃ死にはしない……たぶん」
「やだよ! 目の前で人が死んでいくの見るの!」
そうだろうな。俺は月1で見てるが。
「何か礼を。して欲しいことや欲しいものはないか?」
「別にないけどなぁ……」
「そういえば、俺はニンニクの匂いに敏感なんだ。なのに昨日は気付けなかった。それはソウから別の匂いがしたからだ」
「どんな匂い?」
「薔薇だよ」
「あー。アリスは鼻がいいね。俺、昼間は花屋なんだ。薔薇の花屋」
「薔薇の?」
「そう。薔薇しか置いてない花屋」
「そんな店があるとは知らなかった。昼間は花屋で夜は屋台? 働き者だな」
「母さんがね。薔薇が好きなんだ。昼間は母さんと2人で花屋をやっていて、夜は屋台のアルバイト。俺、歌手になりたくて、今日みたいなアルバイトのない日は人の少ない公園や家の近くの河原で歌ってるんだ」
「そうか。俺の母親も薔薇が好きだったよ」
「だった?」
「そうだ。もうこの世にはいないから」
「あ、ごめん」
「どうして謝る?」
「なんか悲しいこと思い出させたかなって」
「気にするな」
と俺は言った。
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