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何をした?
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「そういえば、昨日俺が意識を失っている間、ソウは俺に何かしたか?」
「何かって?」
「いや、怪我してたところの治りが早くて、もしかしたら特別な薬でも塗ったのかと……」
何というつまらない言い訳だ。
「怪我してたの? 大丈夫? 倒れた時? 頭打ったとか?」
と俺の両腕を掴んで揺さぶってくる。
……今掴んでるその腕だよ。
「いや、なんでもない忘れてくれ」
「俺、ずっと怖くて泣いてただけだから、よくわかんないや」
「心当たりがないならいい。それで?何かして欲しいことは見つかったか?」
「うーん。じゃあ一緒に屋台手伝って?」
「俺が?」
「うん」
「……わかった」
~~~~~~~~~~
俺はソウが夜市で屋台を出す日は手伝うことにした。
「どこ行くの?」
今日はユキが来ていた。
「今から屋台を手伝いに行く」
「何それ? バイト? 珍しい」
「この間、ある人間に命を救われてな。その時の礼だ」
「救われた? 命を?」
「ああ……夜明け前に外で倒れてしまってな。彼が起こしてくれなければ、俺は今灰となって消えてただろう」
「そんなことがあったの?」
「だからしばらく手伝うことにした」
「へぇ……屋台ねぇ」
「店の店員なら次のターゲットを選ぶのにも都合が良さそうだしな」
「なるほど。じゃあもう手っ取り早く、その子の血を吸っちゃったら? それならバイト手伝わなくても済むじゃん」
「それだとまた次の月に困るだろう?」
「そっか……じゃあ僕帰るよ。頑張って」
「あぁ。またな」
俺は服を着替えて出かけた。
~~~~~~~~~~
「こっち、こっち!」
「待ったか?」
「大丈夫。じゃあそのコンロに火をつけて」
「あぁ」
俺は言われた通りに、コンロに火をつけた。
「このお肉にスパイスをかけて焼いて?」
あ、しまった。
手伝うと言ったが、スパイスにニンニクが入っていることを忘れていた。
鼻をつまんで作業をしようとした俺を見て、
「あ、スパイスの配合を変えたから大丈夫! ニンニクは入ってないよ!」
とソウが笑った。
1人の人間とこんなに長く関わったのは初めてだな。
いつもは30分もすれば目の前に横たわり、そのうち消えていくだけのただのエサだったのに。
「生焼けは困るからしっかり焼いてね?」
「どこへ行く?」
「この時間まだ暇だろうから、少し歌ってきていい?」
「いいが、俺を1人にするのか?」
「大丈夫! 1時間くらいしたら帰ってくるから」
そう言いながらソウは公園の方に走って行った。
「まったく。して欲しいことはないとか言いながら、人使いが荒いやつだな」
ハッとした。俺は何をニヤついている。
30分後。
「~🎵~♩」
「うまいじゃないか」
「そう? ありがとう! って店は!?」
「肉がなくなった」
「なくなった?」
「クーラーボックスの中のやつだろう? 全部売ってしまったが、他には無いのか?」
「えっ!? あれ全部売れたの? 30分で?」
「ああ。他に売るものは無いのか?」
「えっと……今日はあれだけしか持って来てないからもうすることないよ」
「そうか」
「あ! ちょっと待ってて!」
ソウは俺を置いて何処かへ走って行ってしまった。
しばらくして現れた彼は、いろんな色のバラの花が入ったバケツが乗った台車を押して現れた。
「薔薇か……」
「うん。うちの店この近くだから、ちょっと持って来た」
「綺麗だな」
「でしょ? 母さんもだけど、僕も薔薇の花が1番好きなんだ!」
「そうか……なら今度うちの庭を見にくるといい」
「いいの!?」
「ああ。たくさんの種類が咲いているから、気に入ったのがあれば持って帰ってもいい」
「ほんと!? 嬉しい! じゃあその時にこの間約束したDVDも持っていくね!」
あれは約束だったのか。
それにしても、人間というのはこんなにも表情が豊かな生き物だとは知らなかった。
この間は泣いていたが、今日はずっと笑っているな。
「何かって?」
「いや、怪我してたところの治りが早くて、もしかしたら特別な薬でも塗ったのかと……」
何というつまらない言い訳だ。
「怪我してたの? 大丈夫? 倒れた時? 頭打ったとか?」
と俺の両腕を掴んで揺さぶってくる。
……今掴んでるその腕だよ。
「いや、なんでもない忘れてくれ」
「俺、ずっと怖くて泣いてただけだから、よくわかんないや」
「心当たりがないならいい。それで?何かして欲しいことは見つかったか?」
「うーん。じゃあ一緒に屋台手伝って?」
「俺が?」
「うん」
「……わかった」
~~~~~~~~~~
俺はソウが夜市で屋台を出す日は手伝うことにした。
「どこ行くの?」
今日はユキが来ていた。
「今から屋台を手伝いに行く」
「何それ? バイト? 珍しい」
「この間、ある人間に命を救われてな。その時の礼だ」
「救われた? 命を?」
「ああ……夜明け前に外で倒れてしまってな。彼が起こしてくれなければ、俺は今灰となって消えてただろう」
「そんなことがあったの?」
「だからしばらく手伝うことにした」
「へぇ……屋台ねぇ」
「店の店員なら次のターゲットを選ぶのにも都合が良さそうだしな」
「なるほど。じゃあもう手っ取り早く、その子の血を吸っちゃったら? それならバイト手伝わなくても済むじゃん」
「それだとまた次の月に困るだろう?」
「そっか……じゃあ僕帰るよ。頑張って」
「あぁ。またな」
俺は服を着替えて出かけた。
~~~~~~~~~~
「こっち、こっち!」
「待ったか?」
「大丈夫。じゃあそのコンロに火をつけて」
「あぁ」
俺は言われた通りに、コンロに火をつけた。
「このお肉にスパイスをかけて焼いて?」
あ、しまった。
手伝うと言ったが、スパイスにニンニクが入っていることを忘れていた。
鼻をつまんで作業をしようとした俺を見て、
「あ、スパイスの配合を変えたから大丈夫! ニンニクは入ってないよ!」
とソウが笑った。
1人の人間とこんなに長く関わったのは初めてだな。
いつもは30分もすれば目の前に横たわり、そのうち消えていくだけのただのエサだったのに。
「生焼けは困るからしっかり焼いてね?」
「どこへ行く?」
「この時間まだ暇だろうから、少し歌ってきていい?」
「いいが、俺を1人にするのか?」
「大丈夫! 1時間くらいしたら帰ってくるから」
そう言いながらソウは公園の方に走って行った。
「まったく。して欲しいことはないとか言いながら、人使いが荒いやつだな」
ハッとした。俺は何をニヤついている。
30分後。
「~🎵~♩」
「うまいじゃないか」
「そう? ありがとう! って店は!?」
「肉がなくなった」
「なくなった?」
「クーラーボックスの中のやつだろう? 全部売ってしまったが、他には無いのか?」
「えっ!? あれ全部売れたの? 30分で?」
「ああ。他に売るものは無いのか?」
「えっと……今日はあれだけしか持って来てないからもうすることないよ」
「そうか」
「あ! ちょっと待ってて!」
ソウは俺を置いて何処かへ走って行ってしまった。
しばらくして現れた彼は、いろんな色のバラの花が入ったバケツが乗った台車を押して現れた。
「薔薇か……」
「うん。うちの店この近くだから、ちょっと持って来た」
「綺麗だな」
「でしょ? 母さんもだけど、僕も薔薇の花が1番好きなんだ!」
「そうか……なら今度うちの庭を見にくるといい」
「いいの!?」
「ああ。たくさんの種類が咲いているから、気に入ったのがあれば持って帰ってもいい」
「ほんと!? 嬉しい! じゃあその時にこの間約束したDVDも持っていくね!」
あれは約束だったのか。
それにしても、人間というのはこんなにも表情が豊かな生き物だとは知らなかった。
この間は泣いていたが、今日はずっと笑っているな。
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