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薔薇の代わりに
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俺たちは薔薇を売ることにした。
「いらっしゃいませー! 薔薇はいかがですか?」
隣でソウは声を張り上げて客を呼び込んでいる。
「ほら! アリスも!」
「そんなに声を張り上げる必要があるのか?」
「何言ってんの! こんなにたくさんのお店があるんだから、ちょっとでも目立たないと売れないよ!」
「そうか? では見ておけ」
俺はバケツの中から赤い薔薇を一輪取った。
店の前を通りかかった女と目が合う。
ふっと微笑みかけた。
「……それ、ください」
「ありがとうございます」
俺は代金を受け取って、薔薇の花にキスをし、彼女に花を渡した。
同じように2,3人相手をしている間に、店の前には長蛇の列だ。
隣のソウは驚きながらも、俺に花を渡すのに必死になっていた。
列がひと段落ついた時ソウが言った。
「何さっきの? どんな魔法使ったの?」
「魔法なんか使ってない」
「じゃあ色目使ったんだ?」
「まぁ、それは否定しない」
「そうやって串焼きも売ったの?」
「ま……そんなところだ」
「良いよね! イケメンは! でもそれ女の人にしか通用しないから!」
「本当か? じゃあ……」
俺は薔薇の花を一輪、ソウに差し出して言った。
「この薔薇の代わりに俺のキスを受け取るか?」
「……な……なんだそれ! う、受け取らねーよ!」
顔を真っ赤にしたソウが、しどろもどろで答える。
「ははは。冗談だよ。でもその反応を見れば、男にも通用することがわかったな!」
思わず笑ってしまった。
あの事件以来初めてじゃないだろうか。
「あっ……」
「どうした?」
「初めて笑った顔見た! ずっと笑ってなよ! その方がもっとカッコいいよ!」
「余計なお世話だ」
「もっと薔薇が売れていいじゃん!」
「ソウが売るんだろ? 俺じゃなくて」
「でもアリスが手伝うって言ったから」
「言ったが……」
「まぁクールな男ってのも悪く無いけどね!」
「どっちなんだよ」
「俺はどっちも好きだよ!」
「え?」
「えっ? あっ……いや、今のナシ!」
どっちも好きか……
俺はまた顔がニヤつかないようになんとか平静を保っていた。
~~~~~~~~~~
「薔薇も全部売れたな」
「うん。すごいよ! 過去最高の売り上げ!」
「それは良かった」
「手伝ってくれてありがとうね。これでもう貸し借りナシだからね!」
「えっ?」
「もう充分借りは返してもらったから大丈夫だよ」
「だがもう少し手伝うさ」
「本当に大丈夫だよ」
「お前は肉を焼けばいい。俺はお前の薔薇を売る。店が2倍なら売り上げも2倍だろ?それにソウが肉を焼くなら、スパイスも元のやつに戻せる」
「でも……」
「もちろん次からはバイト代をもらうからな」
「そっか。それならいいよ! じゃあ月、水、金の夜20時にここで!」
「あぁ。じゃあ今日はもう片付けようか」
「うん」
離れがたい……そう思った。
これで終わりは嫌だった。
「今日こそ日の出を一緒に見ようよ!」
時計を見てソウが言った。
「いや、今日も予定があって、帰らなければいけない。すまないな」
「えー……またシンデレラ? 本当にすごく綺麗なんだよ? ちょっとだけ! 最初だけでいいから!」
「……実は予定は嘘なんだ。俺には先天性の病気があってな。太陽の光を直接浴びると、そこが変色して壊死してしまうんだよ。怖がるかと思って言わなかったんだかな」
こうなったらもうヤケクソだな。
なんとかソウが納得する理由を考えた。
「えっ? そうだったんだ……なんかごめん。しつこくしちゃって。怖がるわけないよ。大変だよね?」
ソウは俺の頬にそっと触れた。
そこから温かい何かが流れ込んでくる。
「……大丈夫だ。俺も最初にちゃんと説明すれば良かったな」
「あまりにも太陽を避けるから、アリスは実はヴァンパイアなのかと思ったよ!」
「……そんなことあるわけないだろう」
「だよね? でもニンニクも苦手って言ってたし……これで十字架もダメなら確定だと思ってたのに」
意外と鋭いな。
「余計なこと言ってないで片付けてくれ」
「はーい」
俺がヴァンパイアだと知れば本当に怖がるだろうな。
父さんたちの時みたいに、ソウも俺を殺そうとするだろうか?
「いらっしゃいませー! 薔薇はいかがですか?」
隣でソウは声を張り上げて客を呼び込んでいる。
「ほら! アリスも!」
「そんなに声を張り上げる必要があるのか?」
「何言ってんの! こんなにたくさんのお店があるんだから、ちょっとでも目立たないと売れないよ!」
「そうか? では見ておけ」
俺はバケツの中から赤い薔薇を一輪取った。
店の前を通りかかった女と目が合う。
ふっと微笑みかけた。
「……それ、ください」
「ありがとうございます」
俺は代金を受け取って、薔薇の花にキスをし、彼女に花を渡した。
同じように2,3人相手をしている間に、店の前には長蛇の列だ。
隣のソウは驚きながらも、俺に花を渡すのに必死になっていた。
列がひと段落ついた時ソウが言った。
「何さっきの? どんな魔法使ったの?」
「魔法なんか使ってない」
「じゃあ色目使ったんだ?」
「まぁ、それは否定しない」
「そうやって串焼きも売ったの?」
「ま……そんなところだ」
「良いよね! イケメンは! でもそれ女の人にしか通用しないから!」
「本当か? じゃあ……」
俺は薔薇の花を一輪、ソウに差し出して言った。
「この薔薇の代わりに俺のキスを受け取るか?」
「……な……なんだそれ! う、受け取らねーよ!」
顔を真っ赤にしたソウが、しどろもどろで答える。
「ははは。冗談だよ。でもその反応を見れば、男にも通用することがわかったな!」
思わず笑ってしまった。
あの事件以来初めてじゃないだろうか。
「あっ……」
「どうした?」
「初めて笑った顔見た! ずっと笑ってなよ! その方がもっとカッコいいよ!」
「余計なお世話だ」
「もっと薔薇が売れていいじゃん!」
「ソウが売るんだろ? 俺じゃなくて」
「でもアリスが手伝うって言ったから」
「言ったが……」
「まぁクールな男ってのも悪く無いけどね!」
「どっちなんだよ」
「俺はどっちも好きだよ!」
「え?」
「えっ? あっ……いや、今のナシ!」
どっちも好きか……
俺はまた顔がニヤつかないようになんとか平静を保っていた。
~~~~~~~~~~
「薔薇も全部売れたな」
「うん。すごいよ! 過去最高の売り上げ!」
「それは良かった」
「手伝ってくれてありがとうね。これでもう貸し借りナシだからね!」
「えっ?」
「もう充分借りは返してもらったから大丈夫だよ」
「だがもう少し手伝うさ」
「本当に大丈夫だよ」
「お前は肉を焼けばいい。俺はお前の薔薇を売る。店が2倍なら売り上げも2倍だろ?それにソウが肉を焼くなら、スパイスも元のやつに戻せる」
「でも……」
「もちろん次からはバイト代をもらうからな」
「そっか。それならいいよ! じゃあ月、水、金の夜20時にここで!」
「あぁ。じゃあ今日はもう片付けようか」
「うん」
離れがたい……そう思った。
これで終わりは嫌だった。
「今日こそ日の出を一緒に見ようよ!」
時計を見てソウが言った。
「いや、今日も予定があって、帰らなければいけない。すまないな」
「えー……またシンデレラ? 本当にすごく綺麗なんだよ? ちょっとだけ! 最初だけでいいから!」
「……実は予定は嘘なんだ。俺には先天性の病気があってな。太陽の光を直接浴びると、そこが変色して壊死してしまうんだよ。怖がるかと思って言わなかったんだかな」
こうなったらもうヤケクソだな。
なんとかソウが納得する理由を考えた。
「えっ? そうだったんだ……なんかごめん。しつこくしちゃって。怖がるわけないよ。大変だよね?」
ソウは俺の頬にそっと触れた。
そこから温かい何かが流れ込んでくる。
「……大丈夫だ。俺も最初にちゃんと説明すれば良かったな」
「あまりにも太陽を避けるから、アリスは実はヴァンパイアなのかと思ったよ!」
「……そんなことあるわけないだろう」
「だよね? でもニンニクも苦手って言ってたし……これで十字架もダメなら確定だと思ってたのに」
意外と鋭いな。
「余計なこと言ってないで片付けてくれ」
「はーい」
俺がヴァンパイアだと知れば本当に怖がるだろうな。
父さんたちの時みたいに、ソウも俺を殺そうとするだろうか?
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