命の雫

SHIZU

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特別な血

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お互いにどうなったのかわからない。

おそらく途中で2人とも気を失ったんだろう。

先に目を覚ましたのは俺だった。

「すまない。本当に……」

呟く俺の声に、ピクッとソウが反応した。

「ん……おはよう」

「おはよう。昨日は本当にすまなかった」

「え? ああ、うん。お互いちょっと飲み過ぎただけだよ」

「いや、あの、身体は大丈夫か?」

「大丈夫だよ。ちょっとびっくりしたし、男の人とするのは初めてだったから、最初は痛みもあったけど……」

「本当に申し訳ない!」

人間に土下座したのは初めてだった。

ヴァンパイアにもしたこと無いが。

「ほ、本当に大丈夫だから。そんな謝らないで」

「あと、他に何か感じなかったか?」

「何かって?」

「なんか乗り移ったような……体がいうことをきかないというかそんな感覚は?」

「なかったよ? やっぱ酔ってたんだよ!」

ヴァンパイアの俺が?

グラス数杯のワインごときで?

まぁいい。

「あの……」

「うん? どうしたの?」

「あんな俺を見て、嫌いになったりしなかったか?」

「ふ! ははは! なったりしないよ! あ、もう行かなきゃ。お店開けなきゃ、母さんが待ってる。また今日夜市でね!」

服を着替えるとソウは帰ってった。

「よかった……」

ヴァンパイアとさえ上手く関係を築けない俺が、人間に嫌われることをこんなにも怖がるなんて。

どうかしているな。最近の俺は……


~~~~~~~~~~


夜、夜市に行く前に俺はユキの家に寄った。

「どうしたの? アリスがうちに来るなんて珍しい」

「この間のことを謝っておきたくて。ただの薔薇なんて言って悪かった。ソウが触ったのがSnowだと知らなくて」

「いいんだよ。ただの薔薇と言ってしまえば、本当にただの薔薇なんだから」

「だからすまない。あれはお前のために母さんが植えたものだから……」

「うん。だから薔薇は大事だけど、それ以上に大事なのは思い出なんだよ。それをアリスがただのって言うから」

「わかってる……本当にすまなかった」

今日はずっと謝っているな。

「うん。もういいよ。許してあげる。その代わり、また遊びに行ってもいい?」

「あぁ。もちろん」

「そういえば昨日はハンティングの日だったでしょ?エサはどんなのだった?」

「過去最高に不味かったよ。ろくでもないやつの血だったからな」

「えー。最近そんな血ばっかだね。そんなのばっかだと体に悪そう」

「良いも悪いもないだろ。俺たちには」

「ふふ。まあね。今日もバイト?」

「あぁ」

「そっか。いってらっしゃい」

「ああ、行ってくる」

俺はユキの家を出ようとした。

「あ、聞きたいことがある」

「何?」

「お前は人間の血を吸って、何かに体を乗っ取られたみたいに、衝動を抑えられなくなったことはあるか?」

「ないと思うよ? どうしたの?」

「いや昨日のエサの血を吸ってから、自分が自分ではない感覚があったから……」

「それってなんか特別な血を持つ人間だったんじゃない?」

「特別な血……」

「アリスのお父さんが昔、調べてなかった?」

「いや、知らないな。聞いたことがない」

「そっか。じゃあろくでもないやつの血で不味かったって言ってたし、体が拒絶反応でも起こしたんじゃない?」

とユキは笑っていた。

「かもな」


~~~~~~~~~~


夜市に着くと屋台の準備をしているソウがいた。

「遅くなったな」

「ううん。大丈夫。こっちの準備してて? 俺は店の薔薇取ってくるから」

「わかった」

しばらくすると薔薇を積んだ台車を押すソウが帰ってきた。

「お待たせ。じゃあこっちよろしく!」

「ああ」

俺は通りのむかいで串焼きを売るソウを見ていた。

最初は昨日のエサの血液のせいかと思ったが多分違う。

昨日俺がおかしくなったのはソウとキスをした後だ。

あいつの血のせいだ。

「特別な血を持つ人間……」

ふと俺と目が合ったソウは慌てて目を逸らした。





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