命の雫

SHIZU

文字の大きさ
25 / 32

レイクの心

しおりを挟む
次の日、俺はレイクに呼ばれ、日が暮れるとコミュニティに向かった。

いよいよか……

俺の姿を見て、レイクは手招きした。

人気ひとけのないところに俺を連れていく。

いよいよ行動に移すのか?

俺は隠し持っていた銀のナイフを服の上から確認した。

「アリス。呼び出して悪かったな」

「いいよ。どうせ余市に行って薔薇を売るか、庭でギターを弾くこと以外にすることないんだから」

「そうか。仕事を始めたんだな。いい事だ。あんな広い屋敷に1人で居てもつまらないだろう?  実は今日呼び出したのは聞きたいことがあってな。最近ユキが姿を見せないんだ。何か知らないか?」

……どういうことだ? 俺を試しているのか?

知らないと嘘をついて反応を見るか。

本当のことを話して反応を見るか。

本当のことを話すことにした。

「ユキは……ユキは死んだ」

言葉にするのはまだ辛い。

「ユキが……? どういうことだ? いつ? 何故?」

手下に殺すように命じたなら、ユキが死んだことも知っているだろう。

ということはやはり演技か?

「数日前に俺の家の前で話しているところを襲われた。銀の矢が飛んで来てあいつの腕に……」

「何故ユキが狙われる?」

「本当は俺を狙ったらしいが、それに気付いたユキが俺を庇って……」

「お前を……?」

「あぁ。俺には助けられなかった」

「そうだろうな。銀の矢じゃ俺だってどうにも出来ない」

「知っているものだと思っていた」

「何故俺が?」

「いや、最近ユキに会ったと聞いたから」

「会ったが狙われているなんて一言も……」

しばらく沈黙が続いたあと、

「お前を庇って死ねるなら、あいつも本望だろうな」

そう言ったレイクの目からは涙が溢れていた。

「どうして?」

「だってあいつはお前のことばっかり見ていたから。ちょっと違うか。アリスしか見えていなかったからな」

と切なく微笑んだ。

もしかして……

「レイク。お前もしかして……」

「あぁ。俺はずっとユキが好きだった。たとえユキがお前を好きでも」

「そうだったのか……もっと早く伝えれば良かったな」

「いいさ……それよりお前は元気にしてるのか?」

「このとおり。いつも通りだよ」

「そういえば、まだ不味い血を吸ってるのか?」

「どうしてそれを?」

「それはこの間ユキが教えてくれた。"アリスってば、犯罪者とか迷惑がられてる客とか、そんなのばっか狙って血を吸ってるんだよ? 世直しのつもりなのかなぁ!"って笑ってたよ」

ユキの話をするレイクは泣きそうな顔で笑う。

「そうか……他には何か言ってなかったか?」

「他にか? そうだな……コミュニティに怪しい動きをしている人は居ないかと聞かれたよ」

「なんて答えた?」

「特に居ないと思うと。どうしてあんなことを?」

「俺にも分からない。俺たちの命を狙ってるやつを突き止めようとしていたのかもな。もしまた何か思い出したら、俺に連絡くれるか?」

と俺はスマホをポケットから取り出した。

「アリス。お前ついにスマホを持つようになったのか! そういうの、嫌いだっただろ?」

「仕事に必要だったからちょっとな」

「そうか……俺も嬉しいよ。引きこもりのギタリストが労働に目覚めてくれて。何がお前を健全なヴァンパイアにしたんだ?」

と笑って自分のスマホに俺の番号を登録していた。

「じゃあ、また」

「ちょっと待てよ。今日こそ1杯付き合え」

「でも……」

「ユキのために献杯を……頼む」

「そうだな」

「よし」

俺たちはユキのために献杯をして、思い出話を語り続けた。

レイクは最後に、

「ここにユキが居て、3人で昔の話が出来たら良かったなぁ?」

と独り言か俺に対する質問か分からないくらい細い声で言った。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

白花の檻(はっかのおり)

AzureHaru
BL
その世界には、生まれながらに祝福を受けた者がいる。その祝福は人ならざるほどの美貌を与えられる。 その祝福によって、交わるはずのなかった2人の運命が交わり狂っていく。 この出会いは祝福か、或いは呪いか。 受け――リュシアン。 祝福を授かりながらも、決して傲慢ではなく、いつも穏やかに笑っている青年。 柔らかな白銀の髪、淡い光を湛えた瞳。人々が息を呑むほどの美しさを持つ。 攻め――アーヴィス。 リュシアンと同じく祝福を授かる。リュシアン以上に人の域を逸脱した容姿。 黒曜石のような瞳、彫刻のように整った顔立ち。 王国に名を轟かせる貴族であり、数々の功績を誇る英雄。

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

あの頃の僕らは、

のあ
BL
親友から逃げるように上京した健人は、幼馴染と親友が結婚したことを知り、大学時代の歪な関係に向き合う決意をするー。

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

処理中です...