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1、ユノ
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「取り決めによりお前は隣国のスワニ帝国へ婿入りすることが決まった。 お前もこの国の王子だ。 分かっておるな? ユノ。 」
もうすぐ春とはいえ、まだ寒い3月、久々に会った目の前のユノの父親であるオズワルト国王は、ユノの目も見ずに冷たくそう言い放った。
隣国の大国であるスワニ帝国との婚姻があるらしい、という噂話はうっすら聞いてはいたが、まさか男であり、周りに忘れ去られていたような自分に白羽の矢が立つとは思ってもみなかったユノは、一瞬返事に詰まってしまった。
ギロッとオズワルトの両目が返事を急かすようにユノを睨む。
「はっ、はいっ、謹んで拝命いたします。」
これまで見向きもされなかったのに、一体どういう風の吹き回しか。 拒否出来ない命令に礼をとりながらユノは激しく混乱していた。
~○~○~○~○~○~
ユノはこの小国の王子だが、第7王子で、王位継承権も第7番、そして何より、13歳の時に亡くなった母が平民、ということもあり、何の後ろ楯も無い。
当時トップスターだった劇団員の美しい母はオズワルトの誘いを断れなかったのだろう、ワンナイトを楽しんだ結果が、ユノだ。
ユノは王宮の端っこにある離宮に住んでいるが、母が亡くなるとメイドも足を運ばなくなり、ユノが19歳になる今ではちょっとした廃墟のような有り様になってしまっている。
ユノの生活はギリギリだった。
王宮の端っこにある離宮の片隅に畑をこしらえ、季節の野菜を複数種類育てる。時折足を運んでくれる老紳士の庭師、グリエドが師匠だ。
グリエドも、まさかこんな所で第7といえど国の王子が畑を耕しているとは思わず、驚いた。
グリエドは時折ユノに奥さんの手作り惣菜パンの差し入れもしている。ユノが不憫で不憫でしょうがないのだ。あまり目立つのもよくないので、時折になってしまうのが歯がゆいが、見ていられなかった。
肉やパンも少量手に入る。
厨房に勤めるロイが週に1、2回、端肉や余ったパン、時折果物までを少しだけだが持ってきてくれるのだ。ロイは、王宮の下働きを支える厨房に勤めているが、新人の時に迷子になってユノの所に辿り着いた。まさか小汚ないユノが王子様とは思わず、普通に話をして厨房に帰ることが出来た。
ロイも王宮に不審者がいることに慌てたが、警備がしっかりしてる王宮にまさか不審者は無いだろう、と自分を奮い起こしてユノと喋っていたことは内緒だ。
後にユノの身分を聞き仰天してしまった。
同時に、この国大丈夫なのか? と心配になった。
ユノと会った後、先輩に「新人の癖にサボりやがって!」 と、こっぴどく怒られたことを早く忘れてしまいたいと常々思っている。ロイに対してその先輩が怒ったのはその一度きりなのだ。
普段優しい人は怒らせてはいけないらしい。
ユノは、もはや何色かも分からない灰色でバサバサの艶のないまるでネズミのような髪と、白く粉を吹いたようなカサカサの肌、死んだような目は精気の無い曇った緑をしていて痩せ細り、王族が持つとされる、プラチナブロンドにエメラルドの美しい瞳とはかけ離れた容姿をしていた。 なので、色味も、小汚なさも相まって、基本王宮の誰にも相手にされず、忘れ去られた存在になっていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
◎ロイ→「先輩」にはあれから一度も怒られていない。むしろ迷子になってしまっていたことを説明したら、「今後は気を付けるんだぞ。」と肩を叩いてくれた。その後は良くしてもらっていて、後にも先にも怒られたのはその一回だけだが、インパクトが強すぎて時折怒鳴った顔を思い出してしまうことがある。
もうすぐ春とはいえ、まだ寒い3月、久々に会った目の前のユノの父親であるオズワルト国王は、ユノの目も見ずに冷たくそう言い放った。
隣国の大国であるスワニ帝国との婚姻があるらしい、という噂話はうっすら聞いてはいたが、まさか男であり、周りに忘れ去られていたような自分に白羽の矢が立つとは思ってもみなかったユノは、一瞬返事に詰まってしまった。
ギロッとオズワルトの両目が返事を急かすようにユノを睨む。
「はっ、はいっ、謹んで拝命いたします。」
これまで見向きもされなかったのに、一体どういう風の吹き回しか。 拒否出来ない命令に礼をとりながらユノは激しく混乱していた。
~○~○~○~○~○~
ユノはこの小国の王子だが、第7王子で、王位継承権も第7番、そして何より、13歳の時に亡くなった母が平民、ということもあり、何の後ろ楯も無い。
当時トップスターだった劇団員の美しい母はオズワルトの誘いを断れなかったのだろう、ワンナイトを楽しんだ結果が、ユノだ。
ユノは王宮の端っこにある離宮に住んでいるが、母が亡くなるとメイドも足を運ばなくなり、ユノが19歳になる今ではちょっとした廃墟のような有り様になってしまっている。
ユノの生活はギリギリだった。
王宮の端っこにある離宮の片隅に畑をこしらえ、季節の野菜を複数種類育てる。時折足を運んでくれる老紳士の庭師、グリエドが師匠だ。
グリエドも、まさかこんな所で第7といえど国の王子が畑を耕しているとは思わず、驚いた。
グリエドは時折ユノに奥さんの手作り惣菜パンの差し入れもしている。ユノが不憫で不憫でしょうがないのだ。あまり目立つのもよくないので、時折になってしまうのが歯がゆいが、見ていられなかった。
肉やパンも少量手に入る。
厨房に勤めるロイが週に1、2回、端肉や余ったパン、時折果物までを少しだけだが持ってきてくれるのだ。ロイは、王宮の下働きを支える厨房に勤めているが、新人の時に迷子になってユノの所に辿り着いた。まさか小汚ないユノが王子様とは思わず、普通に話をして厨房に帰ることが出来た。
ロイも王宮に不審者がいることに慌てたが、警備がしっかりしてる王宮にまさか不審者は無いだろう、と自分を奮い起こしてユノと喋っていたことは内緒だ。
後にユノの身分を聞き仰天してしまった。
同時に、この国大丈夫なのか? と心配になった。
ユノと会った後、先輩に「新人の癖にサボりやがって!」 と、こっぴどく怒られたことを早く忘れてしまいたいと常々思っている。ロイに対してその先輩が怒ったのはその一度きりなのだ。
普段優しい人は怒らせてはいけないらしい。
ユノは、もはや何色かも分からない灰色でバサバサの艶のないまるでネズミのような髪と、白く粉を吹いたようなカサカサの肌、死んだような目は精気の無い曇った緑をしていて痩せ細り、王族が持つとされる、プラチナブロンドにエメラルドの美しい瞳とはかけ離れた容姿をしていた。 なので、色味も、小汚なさも相まって、基本王宮の誰にも相手にされず、忘れ去られた存在になっていた。
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◎ロイ→「先輩」にはあれから一度も怒られていない。むしろ迷子になってしまっていたことを説明したら、「今後は気を付けるんだぞ。」と肩を叩いてくれた。その後は良くしてもらっていて、後にも先にも怒られたのはその一回だけだが、インパクトが強すぎて時折怒鳴った顔を思い出してしまうことがある。
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