嫌われ王子はしてはいけない恋をした。 ~彼と私の1年間~

虹色金魚

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番外編1、皇帝の弟 ジャスウェル

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 番外編になります。
 よろしくお願いします。


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「ジャス……、今日は二人で楽しく飲もうって言っただろ……?」



 スワニ帝国の頂点にいるジャスウェルの兄、シグウェルが酒の入ったゴブレットをテーブルに静かに置いて、ジャスウェルを呆れたように覗き込む。

 満月が美しい、まだ寒いとはいえ大分暖かくなった春の夜のことだった。

 月を見上げながらボーっとしている年の離れた、いつの間にか青年の顔をした弟が、呆れながらもやっぱり少しだけ心配になる。

 ……また、いつものやつだ……。

「また例の“月の妖精”のことを考えているのか?」

 シグウェルは皇帝として後宮を持ち、現在男女含め計3名と婚姻関係にある。子供もまだ小さいが1人おり、順調に役目を果たしている。
 どのお相手とも、事の始まりは契約ありきで、愛などは無かった。今は少し、いや、かなり事情が変わってきている者もいるが。

「……あぁ、はい。 兄上。 申し訳ありません。 つい……。 今日は例のお茶会がありまして……もう懲り懲りなんですが……。」

 傍目からもゲンナリして、今度は俯いてしまった弟を不憫には思うが、二人の母である正妃は手強い。兄であり既に帝王であるシグウェルにももうどうにもならない状況にまで来てしまった。

「そんな“過去の人”を追いかけるのはお辞めなさい。 もっと建設的な縁談はたくさんあるじゃないの。 それに、あなたなら選り取り緑だわ? 自信を持って。 いつも伝えている通り、こちらのご令嬢なんて最高よ? なんであなたが頷かないのか分からないわ。 宰相家とのご縁を更に強く出来るのよ? それからこちらのご令嬢は………………」

 ジャスウェルは遠い目をしていつものやり取りを思い出した。

 18歳にもなってジャスウェルには婚約者がいなかった。 いや、据えないでくれ、と父である時の帝王や兄に懇願したのだ。 せめて、最終学年である今年の夏になるまでは。





~~~◎~~~○~~~◎~~~





 ジャスウェルはまだやっと4歳になったころ、王宮内にひっそりと飾られていた小さな絵の中の美しい人に魅入られてしまった。

 小さな子供だから気付けるような、大人では目に入らないような位置に、誰からも忘れ去られてしまったかのように飾られていた絵であった。

 まず、自室に持って帰って良いのかお付きの侍女に確認し、確認が取れ次第大事に持ち帰った。

 絵に向かって話しかけるのを最初はほのぼのと見ていた周りも、それが8歳になるまでほぼ毎日続けば、何かおかしいことに気付く。

「ジャスウェル様、本日はユージン様と遠乗りに出掛ける日でございます。 さぁ、お支度をいたしましょう。」

「あぁ……もう時間らしい。 また参ります。」

 小さな絵を高価なガラスに閉じ込めて机に立て掛け、いつでも気軽に触れるようにしてある。
 もう何度撫でたか分からない頬の辺りをスリッと撫で、ジャスウェルは立ち上がった。











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