雨宿り

ゆき

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無花果

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そこに 綿飴がある

祭りで よくある 袋に入れられた綿飴が
2、3個 転がっている

(あぁ 今なら触れられるのに)

綿飴は 周りに壁が張り巡らされた状態じゃないと その甘い 繊細な 蜜を私に食べさせてくれないのだ

(終わらせたいけど終わりたくはない)

周りにいた綿飴が 溶けだす
ぐちゃりぐちゃりと 溶けだす
スーパーマンが書かれた 袋の中からドロドロに溶けだした 甘い蜜だったものが流れ出た

(ぁぁ そんなに儚いのか)
(嫌だ  私から奪わないでくれ)

私のことなど見向きもせず その蜜だったものは どこかへ向かう

(私のところへは来てくれないのね)

嫉妬と 愛しさが私の体を動かす
その蜜だったものが 向かった先は
壁だった
終わりがないように見えるくらい高い
その壁に デコボコをとてつもなく大きく作りながら 登っている

(なぜ あんなに不格好なの)
(まるで 上に登りたくないようだ) 

少しの蜜だったものはいつのまにか とてつもない量になり 壁をどんどん進んでいく

その上には何があるのだろうか
枯れることのない好奇心が湧き出る

(私が無花果だったのなら こんなこと思わなくても済んだのに)


無花果よ 坦々とした木の上で私達を見下ろす
なにもかも自分の前では無力だとでも言いたいかのよう

(いつまで続くのだ)

あぁ 私は無花果を食べる
蜜だったものが  私を追いかける
あぁ そうか、追いかけていたものは
あなたが追いかけていたものは
無花果だったのね

本当に欲しいものは それだったのか

わかっている わかっている
けれど   とてつもなく 
心が冷たくなる。   静観とするこの風景に染まりたくなくなる。

そしてそれはできないことを静かに悟ると、とても虚しくなった。
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