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4章
堅い敵
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僕たちは3階層ボス部屋の前まで来ていた。
2階層のボスはミノタウロス、Cランクの魔物であったが、恐らくここは2階層より強い魔物になるだろう。
Bランクだとすれば、ここもみんなに任せてみようと思う。
「それじゃあ、扉を開けるよ」
「「はい」」
僕が声を掛けると、コハクとリーナが返事をし、ソフィーナさんは頷いた。
重い扉が音を立てて開く。
「・・・・・・・」
部屋の中には何もいない・・・いや、何か気配のようなものがある・・・。
「ボスがいない?」
「まだ、復活をしていないのでしょうか?」
ボスはダンジョンが生み出すのか、以前他のパーティが倒していても、次が来ると新たに魔物が配置されている。同じ魔物の場合もあるし違う魔物の場合もあるので、死んだ魔物が生き返っているというわけではないらしい。
「いや、何かの気配を感じる・・・気を付けて」
「解った」
僕がそう言うと、皆は警戒を始める。
どこからか、視線のようなものを感じるんだけど・・・どこだ?
僕は辺りを見るが、魔物らしきものは見えない、天井に張り付いていたり?と思って天井を見てみるがやはり何もいなかった。
透明な魔物なのだろうか?だとしたらやっかいだ・・・隠れられるような場所もないし・・・いや、あそこに一つ石像が置いてある。まさに魔物という形をした羽の生えたお皿のないカッパのような形をした石像が一体だけ次の階層に続く階段の前に置いてあった。
あの石像の裏に隠れている可能性もあるか・・・だとしたら、小さな魔物かもしれないが。
「あの石像の裏を調べてくる」
僕はそう言って、石像に近づいていった。
石像に近づくと、やはり何者かの気配が先ほどよりはっきりと感じる。
あそこに・・・なにかいるね。
僕は石像の前に立つと、剣を抜いて裏を調べようとした。
その時―――――石像の眼が赤く光り、動き出したのだ。
「なっ!?」
僕は咄嗟に後ろに飛ぶ、先ほどまで僕がいた場所に石像の腕が振り下ろされた。
「ガーゴイル・・・」
ソフィーナさんがそう呟く。なるほど、これがガーゴイルか・・・。
本で読んだことがあったが、実物を見るのは初めてだ、見事に石像に化けているものだね。
とはいえ、気配を完全に消しきれないのなら次は騙されないぞ。
「クオン殿、こちらに!」
「はい!」
ソフィーナさんに呼び戻され、僕は一旦みんなの所にもどる。
ガーゴイルは再び石像のように動かなくなり、階段の近くから動こうとしなかった。
そうえいば、ガーゴイルは場所を護る特性を持つ魔物だって本に書いてあったな。
つまりあのガーゴイルは階段を護っているのか。
「大丈夫ですか、クオンさん」
「うん、問題ないよ」
リーナが心配をしてくれる。
確か、ガーゴイルはランクBの魔物だ、石像に擬態するのは厄介であるが、すでにあれがガーゴイルであることはバレている為、問題ないだろう。
ここに他にも石像があったら厄介だったろうが、幸いここはダンジョンである。石像なんて置いてはいない。
「では、クオン殿、ここも我々に任せていただけるか?」
「大丈夫ですか?ガーゴイルは石のように堅い皮膚を持つと聞きます」
「ですね、僕の矢もソフィーナさんの剣もヒスイの爪も殆どダメージを与えられないでしょう」
コハクの言う通り、ここにいるメンバーの攻撃は殆どが物理攻撃である。
カモメやエリンシアのように魔力を使った攻撃を出来るわけではない、一人を除いて。
そう、リーナの魔法であればダメージを与えることは可能だろう。
「任せてください、私だって、冒険者です!」
「解った、ここはみんなに任せるよ」
「感謝する!」
そう言うと、ソフィーナさんは剣を構える。
いざとなれば、僕も助太刀をするが、実力だけで言えば、このメンバーなら何とかなるだろう。
だが、ミノタウロスの時のように楽勝とはいかないかもしれないね。
「では、ヒスイと私で敵を撹乱する!コハクは奴の眼を狙うのだ!リーナは隙を見て魔法をガンガン打ち込んでくれ!」
「解りました!」
「わん!」
ソフィーナさんとヒスイがガーゴイルに向かって走り出す。
ガーゴイルは、ソフィーナさん達が近づくと、再び眼を赤く光らせ動き出す。
そこにコハクが赤く光った眼に向かって矢を放つが、眼もやはり石のように堅いのか的中するも弾かれてしまう。
「くっ」
「はあああああ!」
次にソフィーナさんが剣を振るいガーゴイルに攻撃するがガーゴイルはそれを軽々、右腕で受け止めると余っている方の腕の石の爪をとがらせソフィーナさんに攻撃をする。
ソフィーナさんはそれを身を捻り躱す、そこにヒスイが爪をガーゴイルの眼に浴びせるが、ガーゴイルはダメージを受けていないのか、微動だにしなかった。
「電爆撃!」
雷が走る。
リーナが雷の魔法でガーゴイルに攻撃を放った。
「グ、グア!」
ガーゴイルが初めて声を上げる。
やはり、魔法の攻撃はダメージが通るようだ。
「グルルル」
「しまったっ」
ガーゴイルが脅威とみなしたのか、今までその場から動こうとしなかったガーゴイルがリーナに向かって突進を始める。
ガーゴイルがその場から動くとは思わなかったのか、将又、あれほどのスピードで移動するとは思わなかったのか、ソフィーナさん達は隙を突かれ、追いかけることが出来なかった。
「風弾!」
リーナは咄嗟に風の魔法で迎撃しようとするが、ガーゴイルは右の拳でそれを打ち砕く。
魔法攻撃に弱いとはいえ、さすがはBランクの魔物である。
ガーゴイルがリーナの目の前に来ると、石の爪を尖らし、リーナ目掛けて振るった。
甲高い音が、ボス部屋に木霊する。
「クオンさん・・・」
僕は、危険と判断して、リーナとガーゴイルの間に入り込み、ガーゴイルの攻撃を受け止めた。
そして、足に風の魔法を纏い、ガーゴイルの腹に蹴りをいれると、ガーゴイルはその勢いで重い体を浮き上がらせ階段近くの壁まで飛んでいった。
「ガーゴイルを蹴り飛ばす・・・だと・・・」
「さすがクオンさん・・・すごいや・・・」
僕の行動に驚く二人。
「敵はリーナを狙い始めてます、油断はしないでください」
「すまない・・・」
僕の言葉に反省の色を見せる、二人とヒスイ、ここまで順調に進んでいたので少し気が緩んでいたのかもしれないな・・・もちろん、僕も含めて。
「もう、油断などしない!」
「リーナには近づけません!」
「ガウ!!」
そう言う、皆を見て、僕は「任せます」と答えて、再び後ろへと下がる。
戦い方次第でみんなならなんとか出来る敵だ、これから魔族とも戦うことを考えると、攻撃の効かない相手にどう戦うか、戦い方を工夫していく必要があるだろう。
その練習にはもってこいの相手である。
3人と1匹は再び、起き上がるガーゴイルに向かって構えると、大きく息を吐き、集中し直すのであった。
2階層のボスはミノタウロス、Cランクの魔物であったが、恐らくここは2階層より強い魔物になるだろう。
Bランクだとすれば、ここもみんなに任せてみようと思う。
「それじゃあ、扉を開けるよ」
「「はい」」
僕が声を掛けると、コハクとリーナが返事をし、ソフィーナさんは頷いた。
重い扉が音を立てて開く。
「・・・・・・・」
部屋の中には何もいない・・・いや、何か気配のようなものがある・・・。
「ボスがいない?」
「まだ、復活をしていないのでしょうか?」
ボスはダンジョンが生み出すのか、以前他のパーティが倒していても、次が来ると新たに魔物が配置されている。同じ魔物の場合もあるし違う魔物の場合もあるので、死んだ魔物が生き返っているというわけではないらしい。
「いや、何かの気配を感じる・・・気を付けて」
「解った」
僕がそう言うと、皆は警戒を始める。
どこからか、視線のようなものを感じるんだけど・・・どこだ?
僕は辺りを見るが、魔物らしきものは見えない、天井に張り付いていたり?と思って天井を見てみるがやはり何もいなかった。
透明な魔物なのだろうか?だとしたらやっかいだ・・・隠れられるような場所もないし・・・いや、あそこに一つ石像が置いてある。まさに魔物という形をした羽の生えたお皿のないカッパのような形をした石像が一体だけ次の階層に続く階段の前に置いてあった。
あの石像の裏に隠れている可能性もあるか・・・だとしたら、小さな魔物かもしれないが。
「あの石像の裏を調べてくる」
僕はそう言って、石像に近づいていった。
石像に近づくと、やはり何者かの気配が先ほどよりはっきりと感じる。
あそこに・・・なにかいるね。
僕は石像の前に立つと、剣を抜いて裏を調べようとした。
その時―――――石像の眼が赤く光り、動き出したのだ。
「なっ!?」
僕は咄嗟に後ろに飛ぶ、先ほどまで僕がいた場所に石像の腕が振り下ろされた。
「ガーゴイル・・・」
ソフィーナさんがそう呟く。なるほど、これがガーゴイルか・・・。
本で読んだことがあったが、実物を見るのは初めてだ、見事に石像に化けているものだね。
とはいえ、気配を完全に消しきれないのなら次は騙されないぞ。
「クオン殿、こちらに!」
「はい!」
ソフィーナさんに呼び戻され、僕は一旦みんなの所にもどる。
ガーゴイルは再び石像のように動かなくなり、階段の近くから動こうとしなかった。
そうえいば、ガーゴイルは場所を護る特性を持つ魔物だって本に書いてあったな。
つまりあのガーゴイルは階段を護っているのか。
「大丈夫ですか、クオンさん」
「うん、問題ないよ」
リーナが心配をしてくれる。
確か、ガーゴイルはランクBの魔物だ、石像に擬態するのは厄介であるが、すでにあれがガーゴイルであることはバレている為、問題ないだろう。
ここに他にも石像があったら厄介だったろうが、幸いここはダンジョンである。石像なんて置いてはいない。
「では、クオン殿、ここも我々に任せていただけるか?」
「大丈夫ですか?ガーゴイルは石のように堅い皮膚を持つと聞きます」
「ですね、僕の矢もソフィーナさんの剣もヒスイの爪も殆どダメージを与えられないでしょう」
コハクの言う通り、ここにいるメンバーの攻撃は殆どが物理攻撃である。
カモメやエリンシアのように魔力を使った攻撃を出来るわけではない、一人を除いて。
そう、リーナの魔法であればダメージを与えることは可能だろう。
「任せてください、私だって、冒険者です!」
「解った、ここはみんなに任せるよ」
「感謝する!」
そう言うと、ソフィーナさんは剣を構える。
いざとなれば、僕も助太刀をするが、実力だけで言えば、このメンバーなら何とかなるだろう。
だが、ミノタウロスの時のように楽勝とはいかないかもしれないね。
「では、ヒスイと私で敵を撹乱する!コハクは奴の眼を狙うのだ!リーナは隙を見て魔法をガンガン打ち込んでくれ!」
「解りました!」
「わん!」
ソフィーナさんとヒスイがガーゴイルに向かって走り出す。
ガーゴイルは、ソフィーナさん達が近づくと、再び眼を赤く光らせ動き出す。
そこにコハクが赤く光った眼に向かって矢を放つが、眼もやはり石のように堅いのか的中するも弾かれてしまう。
「くっ」
「はあああああ!」
次にソフィーナさんが剣を振るいガーゴイルに攻撃するがガーゴイルはそれを軽々、右腕で受け止めると余っている方の腕の石の爪をとがらせソフィーナさんに攻撃をする。
ソフィーナさんはそれを身を捻り躱す、そこにヒスイが爪をガーゴイルの眼に浴びせるが、ガーゴイルはダメージを受けていないのか、微動だにしなかった。
「電爆撃!」
雷が走る。
リーナが雷の魔法でガーゴイルに攻撃を放った。
「グ、グア!」
ガーゴイルが初めて声を上げる。
やはり、魔法の攻撃はダメージが通るようだ。
「グルルル」
「しまったっ」
ガーゴイルが脅威とみなしたのか、今までその場から動こうとしなかったガーゴイルがリーナに向かって突進を始める。
ガーゴイルがその場から動くとは思わなかったのか、将又、あれほどのスピードで移動するとは思わなかったのか、ソフィーナさん達は隙を突かれ、追いかけることが出来なかった。
「風弾!」
リーナは咄嗟に風の魔法で迎撃しようとするが、ガーゴイルは右の拳でそれを打ち砕く。
魔法攻撃に弱いとはいえ、さすがはBランクの魔物である。
ガーゴイルがリーナの目の前に来ると、石の爪を尖らし、リーナ目掛けて振るった。
甲高い音が、ボス部屋に木霊する。
「クオンさん・・・」
僕は、危険と判断して、リーナとガーゴイルの間に入り込み、ガーゴイルの攻撃を受け止めた。
そして、足に風の魔法を纏い、ガーゴイルの腹に蹴りをいれると、ガーゴイルはその勢いで重い体を浮き上がらせ階段近くの壁まで飛んでいった。
「ガーゴイルを蹴り飛ばす・・・だと・・・」
「さすがクオンさん・・・すごいや・・・」
僕の行動に驚く二人。
「敵はリーナを狙い始めてます、油断はしないでください」
「すまない・・・」
僕の言葉に反省の色を見せる、二人とヒスイ、ここまで順調に進んでいたので少し気が緩んでいたのかもしれないな・・・もちろん、僕も含めて。
「もう、油断などしない!」
「リーナには近づけません!」
「ガウ!!」
そう言う、皆を見て、僕は「任せます」と答えて、再び後ろへと下がる。
戦い方次第でみんなならなんとか出来る敵だ、これから魔族とも戦うことを考えると、攻撃の効かない相手にどう戦うか、戦い方を工夫していく必要があるだろう。
その練習にはもってこいの相手である。
3人と1匹は再び、起き上がるガーゴイルに向かって構えると、大きく息を吐き、集中し直すのであった。
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