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4章
油断
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再び、ガーゴイルに対峙する、三人と一匹。
ガーゴイルはリーナを一番の脅威と判断したのか、その眼光はリーナを捕らえている。
「ふっ、我々は眼中に無しか」
「確かに僕は魔法が使えません、まともなダメージを与えられない以上警戒する意味が無いのかもしれませんね」
「私もだな・・・この魔剣は腕力を上げはするが、その上げた腕力で攻撃をしても小さな傷を付けるのがやっとだろう・・・」
そう、魔法攻撃の類を持たない二人にはあのガーゴイルにダメージを与える術がない・・・まあ、同じ魔法攻撃を持たないヴィクトールさんはそんなのお構いなしに粉砕しそうだけど。
僕も多少の風の魔法が使えるようになっていたからこそ、脅威に感じずに済んでいるのだ、魔法の使い方を教えてくれたカモメに感謝だね。
しかし、僕がいるからいざという時は何とでもなるけど、その僕がいるせいで、皆は危機感を覚えられないんじゃないだろうか?そして、危機感のない戦いで本当に成長できるのかな?
僕が一緒じゃなければ、皆はもっと成長できているんじゃないだろうか?
そんなことを考えるが、かといって、さっきみたいに危ない場面を見過ごすなんてことは出来ないよね・・・・なんとも、どうしたいいものか?
「グケー!」
僕がそんなことを考えているとガーゴイルとの戦いは再開していた。
ソフィーナさんがガーゴイルの攻撃をなんとか抑えながらコハクとヒスイが攻撃を加える。
しかし、やはり魔力の籠っていない攻撃ではダメージを与えることは出来そうにない。
「リーナ、魔力を付与させる魔法とかって使えないのかい?」
「すみません」
エリンシアや僕が自分の武器に付与するように、他の人の武器に魔力を付与する魔法というのがある。
自分の武器に付与するのとは難易度が段違いに高いらしく、リーナにはその魔法を扱えないらしい。
かくいう僕も他人の武器に風の魔法を付与することは出来なかった。
カモメはやっていたような気がするけど・・・あの子は魔法に関しては天才的だから比較するほうがおかしいか。
「なら、やっぱりリーナの攻撃でなんとかするしかないね」
「はい!」
魔剣の力のお陰なのか腕力でガーゴイルを押さえつけるソフィーナさん。
だけど、何とか押さえつけているだけで、このままでは突破されるのは時間の問題だろう。
だが、押さえつけることが出来るという事は時間を稼げるという事だ。
リーナはその状況を見て、魔力を高めた。より高度な魔法を使うようだ。
しかし、今の状況で大技を使おうものならソフィーナさん達を巻き込むことになるんじゃないだろうか?
いや、リーナがそんなことを考えないとは思えないけど・・・一体どんな魔法を使うつもりなんだろう。
「氷束縛!」
ガーゴイルの足元に氷の魔法が発生する。
氷の茨のようなものがガーゴイルの足にまとわりつくと、そのまま氷の塊となり、ガーゴイルの動きを封じた。
「皆さん!離れてください!」
リーナがそう叫ぶと、ソフィーナさん達はガーゴイルから離れる。
そして、十分に距離をとったのを確認すると再び上げた魔力で新たな魔法をガーゴイルに放った。
「螺旋風槍 !!」
螺旋状の風の魔法がまるで槍のように敵へ一直線に突き進む。
氷に足をとられて動くことの出来ないガーゴイルはこの攻撃を躱すことが出来ず、その胸を貫かれるのだった。
「グ・・ガガ・・・・」
胸に風穴をあけられたガーゴイルは言葉にならない声を上げ、崩れ落ちる。
そして、淡く光るとその姿を魔石へと変えるのだった。
「はあっ・・・はあっ・・・」
「凄いぞリーナ!」
「ああ、あれほどの魔法を使うとは」
走り寄ってリーナをほめたたえる二人。
確かに、あれだけの魔法を使えるなんて僕も驚いた。Bランク冒険者くらいの実力が無いとあれほどの魔法は操れないのではないだろうか?
「ありがとう・・・ございますっ」
魔力をかなり消耗したのか、肩で息を切らせているリーナ。
確かにあれだけの魔法を使えば、普通はそうなるよね、同じような威力の魔法をポンポン使うカモメの魔力がおかしいのだ。闇の魔法に関しては今の魔法の10倍以上の魔力を使うって言うしね。
「次の階に行く前に少し休憩を取ろうか?」
「そうだな、疲弊した状態で進むのは危険だ」
「はい、僕からもお願いします」
「・・・すみません」
「謝ることないよ、リーナは見事にガーゴイルを倒したんだ、胸を張っていいんじゃないかな?」
そう、ガーゴイルはBランクの魔物だ、それをリーナ達、新人の冒険者が倒したのだから快挙と言っていいだろう。
「それじゃ、少し休んで・・・ん?」
「どうしたのだ、クオン殿?」
「いえ、何か違和感が・・・」
「違和感ですか?」
「何か微かな魔力を感じたような気がしたんですけど・・・気のせいかもしれませんね」
一瞬、小さな魔力を感じた気がしたけど、それ程魔力を操ることを得意としていない僕なのでただの気のせいかもしれないな。僕より魔力を操ることに長けているリーナが気づいていないみたいだし・・・。
それに、生物の気配も感じないし、魔物がいると言うわけではないだろう、魔力の感知は疎くても敵意や気配には僕は敏感な方だしね。
「うん、やっぱり気のせいみたいですね・・・!!!っ」
僕がそう言った直後、僕の周りに魔法陣のようなものが現れる・・・一体、なんだ!?
そして、光の柱が僕を呑み込むと、次の瞬間には先ほどまでと違った風景になっていた。
「どういうことだ・・・?」
先ほどまでのボス部屋のフロアと同じで大きな部屋になっている。
おそらく、ダンジョンの中だろう・・・辺りを見回すと、ソフィーナさん達の姿は無いが、ダンジョンの中のどこかに転移したのだろうか・・・。
見たことのない場所なので今まで通ってきたところに逆戻りをしたというわけではないだろう・・・それどころか、今までの中で一番しっかりとした部屋になっている。
「転移の罠・・・か」
恐らく、ガーゴイルを撃破したことで発動する魔法の罠といったところだろう。
ボスを倒して休憩している冒険者をどこかに飛ばす罠ってところか・・・なんとも酷い罠だ。
飛ばされたのがリーナやコハクでなくてよかったよ。
とはいえ、このままではみんなが心配なので早めに合流しないとね、敵も強くなってきたし、いつ皆がピンチになるか分からない。
「ん?」
ふと、部屋の奥の方を見ると淡く光る物体がある。
何だろうと、よく目を凝らすと・・・宝箱?
赤く光る宝箱が、部屋の一番奥に置かれていた、その場所には光の精霊のような小さな光の玉が宝箱の周りを飛んでいる・・・その光景は幻想的で神秘的であった。
しかし、ちょっとまて。
「え・・・あれって・・・」
あれってもしかして、アネルさんが言っていたこのダンジョンに眠る、聖武具なんじゃ・・・ってことは?
「グオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
大きな咆哮が、僕の後ろから聞こえてきた。
僕がその方向を振り向くと・・・そこには巨大な竜のアンデット魔物がこちらを睨んでいるのだった。
「ドラゴンゾンビ・・・」
ゾンビとはいえ、ランクは本来のドラゴンと変わらない・・・それもあれは恐らく・・・。
「エンシェントドラゴンのゾンビか・・・」
エンシェントドラゴンはランクSSの魔物である・・・魔物の中で伝説級の力を持つエンシェントドラゴン・・・そのゾンビとはいえ・・・これは・・・。
「もしかして、ピンチは皆じゃなくて・・・僕なのかな?」
額に冷や汗を浮かべながら僕はそう呟いた。
ガーゴイルはリーナを一番の脅威と判断したのか、その眼光はリーナを捕らえている。
「ふっ、我々は眼中に無しか」
「確かに僕は魔法が使えません、まともなダメージを与えられない以上警戒する意味が無いのかもしれませんね」
「私もだな・・・この魔剣は腕力を上げはするが、その上げた腕力で攻撃をしても小さな傷を付けるのがやっとだろう・・・」
そう、魔法攻撃の類を持たない二人にはあのガーゴイルにダメージを与える術がない・・・まあ、同じ魔法攻撃を持たないヴィクトールさんはそんなのお構いなしに粉砕しそうだけど。
僕も多少の風の魔法が使えるようになっていたからこそ、脅威に感じずに済んでいるのだ、魔法の使い方を教えてくれたカモメに感謝だね。
しかし、僕がいるからいざという時は何とでもなるけど、その僕がいるせいで、皆は危機感を覚えられないんじゃないだろうか?そして、危機感のない戦いで本当に成長できるのかな?
僕が一緒じゃなければ、皆はもっと成長できているんじゃないだろうか?
そんなことを考えるが、かといって、さっきみたいに危ない場面を見過ごすなんてことは出来ないよね・・・・なんとも、どうしたいいものか?
「グケー!」
僕がそんなことを考えているとガーゴイルとの戦いは再開していた。
ソフィーナさんがガーゴイルの攻撃をなんとか抑えながらコハクとヒスイが攻撃を加える。
しかし、やはり魔力の籠っていない攻撃ではダメージを与えることは出来そうにない。
「リーナ、魔力を付与させる魔法とかって使えないのかい?」
「すみません」
エリンシアや僕が自分の武器に付与するように、他の人の武器に魔力を付与する魔法というのがある。
自分の武器に付与するのとは難易度が段違いに高いらしく、リーナにはその魔法を扱えないらしい。
かくいう僕も他人の武器に風の魔法を付与することは出来なかった。
カモメはやっていたような気がするけど・・・あの子は魔法に関しては天才的だから比較するほうがおかしいか。
「なら、やっぱりリーナの攻撃でなんとかするしかないね」
「はい!」
魔剣の力のお陰なのか腕力でガーゴイルを押さえつけるソフィーナさん。
だけど、何とか押さえつけているだけで、このままでは突破されるのは時間の問題だろう。
だが、押さえつけることが出来るという事は時間を稼げるという事だ。
リーナはその状況を見て、魔力を高めた。より高度な魔法を使うようだ。
しかし、今の状況で大技を使おうものならソフィーナさん達を巻き込むことになるんじゃないだろうか?
いや、リーナがそんなことを考えないとは思えないけど・・・一体どんな魔法を使うつもりなんだろう。
「氷束縛!」
ガーゴイルの足元に氷の魔法が発生する。
氷の茨のようなものがガーゴイルの足にまとわりつくと、そのまま氷の塊となり、ガーゴイルの動きを封じた。
「皆さん!離れてください!」
リーナがそう叫ぶと、ソフィーナさん達はガーゴイルから離れる。
そして、十分に距離をとったのを確認すると再び上げた魔力で新たな魔法をガーゴイルに放った。
「螺旋風槍 !!」
螺旋状の風の魔法がまるで槍のように敵へ一直線に突き進む。
氷に足をとられて動くことの出来ないガーゴイルはこの攻撃を躱すことが出来ず、その胸を貫かれるのだった。
「グ・・ガガ・・・・」
胸に風穴をあけられたガーゴイルは言葉にならない声を上げ、崩れ落ちる。
そして、淡く光るとその姿を魔石へと変えるのだった。
「はあっ・・・はあっ・・・」
「凄いぞリーナ!」
「ああ、あれほどの魔法を使うとは」
走り寄ってリーナをほめたたえる二人。
確かに、あれだけの魔法を使えるなんて僕も驚いた。Bランク冒険者くらいの実力が無いとあれほどの魔法は操れないのではないだろうか?
「ありがとう・・・ございますっ」
魔力をかなり消耗したのか、肩で息を切らせているリーナ。
確かにあれだけの魔法を使えば、普通はそうなるよね、同じような威力の魔法をポンポン使うカモメの魔力がおかしいのだ。闇の魔法に関しては今の魔法の10倍以上の魔力を使うって言うしね。
「次の階に行く前に少し休憩を取ろうか?」
「そうだな、疲弊した状態で進むのは危険だ」
「はい、僕からもお願いします」
「・・・すみません」
「謝ることないよ、リーナは見事にガーゴイルを倒したんだ、胸を張っていいんじゃないかな?」
そう、ガーゴイルはBランクの魔物だ、それをリーナ達、新人の冒険者が倒したのだから快挙と言っていいだろう。
「それじゃ、少し休んで・・・ん?」
「どうしたのだ、クオン殿?」
「いえ、何か違和感が・・・」
「違和感ですか?」
「何か微かな魔力を感じたような気がしたんですけど・・・気のせいかもしれませんね」
一瞬、小さな魔力を感じた気がしたけど、それ程魔力を操ることを得意としていない僕なのでただの気のせいかもしれないな。僕より魔力を操ることに長けているリーナが気づいていないみたいだし・・・。
それに、生物の気配も感じないし、魔物がいると言うわけではないだろう、魔力の感知は疎くても敵意や気配には僕は敏感な方だしね。
「うん、やっぱり気のせいみたいですね・・・!!!っ」
僕がそう言った直後、僕の周りに魔法陣のようなものが現れる・・・一体、なんだ!?
そして、光の柱が僕を呑み込むと、次の瞬間には先ほどまでと違った風景になっていた。
「どういうことだ・・・?」
先ほどまでのボス部屋のフロアと同じで大きな部屋になっている。
おそらく、ダンジョンの中だろう・・・辺りを見回すと、ソフィーナさん達の姿は無いが、ダンジョンの中のどこかに転移したのだろうか・・・。
見たことのない場所なので今まで通ってきたところに逆戻りをしたというわけではないだろう・・・それどころか、今までの中で一番しっかりとした部屋になっている。
「転移の罠・・・か」
恐らく、ガーゴイルを撃破したことで発動する魔法の罠といったところだろう。
ボスを倒して休憩している冒険者をどこかに飛ばす罠ってところか・・・なんとも酷い罠だ。
飛ばされたのがリーナやコハクでなくてよかったよ。
とはいえ、このままではみんなが心配なので早めに合流しないとね、敵も強くなってきたし、いつ皆がピンチになるか分からない。
「ん?」
ふと、部屋の奥の方を見ると淡く光る物体がある。
何だろうと、よく目を凝らすと・・・宝箱?
赤く光る宝箱が、部屋の一番奥に置かれていた、その場所には光の精霊のような小さな光の玉が宝箱の周りを飛んでいる・・・その光景は幻想的で神秘的であった。
しかし、ちょっとまて。
「え・・・あれって・・・」
あれってもしかして、アネルさんが言っていたこのダンジョンに眠る、聖武具なんじゃ・・・ってことは?
「グオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
大きな咆哮が、僕の後ろから聞こえてきた。
僕がその方向を振り向くと・・・そこには巨大な竜のアンデット魔物がこちらを睨んでいるのだった。
「ドラゴンゾンビ・・・」
ゾンビとはいえ、ランクは本来のドラゴンと変わらない・・・それもあれは恐らく・・・。
「エンシェントドラゴンのゾンビか・・・」
エンシェントドラゴンはランクSSの魔物である・・・魔物の中で伝説級の力を持つエンシェントドラゴン・・・そのゾンビとはいえ・・・これは・・・。
「もしかして、ピンチは皆じゃなくて・・・僕なのかな?」
額に冷や汗を浮かべながら僕はそう呟いた。
応援ありがとうございます!
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