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6章
アスカの娘
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「ここは……」
「貴方の心の中です」
真っ暗な周りを見渡す、カモメに世界が答える。
「そっか、戻ってきたんだね……」
「はい」
「お母さんが女神の血を引いていて……それだけじゃなくて……『魔』の力まで受け継いでいて……」
「そうです、そして、あなたも」
そう、アスカの娘であるカモメもまた、両方の力を受け継いでいた。
「私が闇の魔法を使えるのはディータのお陰だと思ってた……」
「そうですね、闇の女神のお陰でもありますが……『魔』の力あってこそでしょう、普通の人間には御す事の出来ない力です」
「そうだったんだ……」
今まで、ディータに教えてもらった闇の魔法はディータから受け継いだものと思っていたカモメであったが、『魔』の力を持っているからこそ使えたという事に初めて、自分の闇の魔法が怖いと感じてしまった。
「それじゃあ、私の眼が見えなくなったのは……」
「貴方の使った光と闇の魔法の合成魔法、あれを使うためにあなたは自分の中の全てを解放しようとした……その結果あなたの中で『魔』の力が目覚めたのです」
「そんな……それじゃ、私もリーンさんみたいに?」
魔の力に捕らわれ、リーンは自分を失ってしまった。
大切なものを傷つけ、そのことに後悔し、再び見つけた幸せをも失ってしまったのだ。
「貴方に流れる『魔』の力は薄い……その為、その力を制御できる可能性はあります」
「どうやるんですか!?」
「気合です」
「……え?」
世界の答えにとんでもなく間抜けな声を上げるカモメ。
ここまで来て……根性論?
「残念ながら、それしかないのです……『魔』は弱い心に付け込む、リーンも竜達が傷つく姿に心を疲弊させているところに付け込まれました」
「そんな……そんなのどうしようも……」
「いえ、出来る筈です。あなたなら」
力強い言葉でそう言い切る世界。
「何を根拠にそんなことをいうの…?」
「貴方はこれまで普通の人間なら心が折れるであろう場面を体験しているはずです」
「え、どういうこと?」
「母親の死、父親の死……夢である冒険者になれず冤罪でお尋ね者となる、これらを経験してもなお貴方は真っ直ぐ生きている」
そう、カモメはこれまで何度も不幸な目に会ってきていた。
だが、彼女はそれを跳ねのけ今も元気に笑っている……だが、それは。
「それは、支えてくれた人がいたから……お母さんの時はお父さん、その後はクオンにディータにエリンシアが私の傍にいてくれたから……」
「なら、その者たちを失わないようにしなさい、そして、その為にも『魔』の力を操るのです。そうしなければこの世界は今度こそ『魔』に飲まれるでしょう」
「リーンはまだこの世界にいるの?」
今度こそ、『魔』に飲まれるという事はリーンはまだ……いや、リーンを飲み込んだ『魔』はまだこの世界にいるということだ。どこかで世界を狙っているのだろう。
「ええ、必ず私を狙ってくるでしょう」
「何処にいるの!」
「残念ながら『魔』となった彼女を見つけることは出来ません……私から隠れる術を持っているようです」
「え……でも、私にリーンの過去を見せてくれたよね?……過去は見れたけど今は見つけられないってこと?」
「いえ、あれは貴方に流れるリーンの血が見せた物、私が見せたわけではありません」
先ほどの映像は、カモメの中に流れるリーンの血を使い見せた者らしい、世界もリーンがあれほどの葛藤をしていることを知らなかった。世界と言えども万能ではないのだ。
「そうなんだ……」
「心を強く持つのです、貴方ならきっと『魔』を御す事ができるでしょう」
「でも、どうやっていいのか分からないよ……」
「出来ますよ……貴方はあの『アスカ』の娘なのですから……」
世界の言葉に顔を上げるカモメ。
今の世界の口ぶりだと世界はアスカの事を知っていた?
「お母さんを知ってるの?」
「……つ……人……尊……だ…」
「え、何!?」
世界の声が急に遠くなる、母親の事を聞きたかったカモメであったが、何かに引っ張られるような感じを受ける。
「ちょっ、何!?」
目の前が真っ白になったと思うと、耳から聞きなれた声が聞こえてきた。
「カモメ!」
「大丈夫ですの!?」
どうやら、現実に戻ってきたようだ。
「お母さんの事、聞きたかったな……」
ぽつりと呟くカモメであったが、その声は駆け寄ってくるクオン達までは届くことはなかった。
「貴方の心の中です」
真っ暗な周りを見渡す、カモメに世界が答える。
「そっか、戻ってきたんだね……」
「はい」
「お母さんが女神の血を引いていて……それだけじゃなくて……『魔』の力まで受け継いでいて……」
「そうです、そして、あなたも」
そう、アスカの娘であるカモメもまた、両方の力を受け継いでいた。
「私が闇の魔法を使えるのはディータのお陰だと思ってた……」
「そうですね、闇の女神のお陰でもありますが……『魔』の力あってこそでしょう、普通の人間には御す事の出来ない力です」
「そうだったんだ……」
今まで、ディータに教えてもらった闇の魔法はディータから受け継いだものと思っていたカモメであったが、『魔』の力を持っているからこそ使えたという事に初めて、自分の闇の魔法が怖いと感じてしまった。
「それじゃあ、私の眼が見えなくなったのは……」
「貴方の使った光と闇の魔法の合成魔法、あれを使うためにあなたは自分の中の全てを解放しようとした……その結果あなたの中で『魔』の力が目覚めたのです」
「そんな……それじゃ、私もリーンさんみたいに?」
魔の力に捕らわれ、リーンは自分を失ってしまった。
大切なものを傷つけ、そのことに後悔し、再び見つけた幸せをも失ってしまったのだ。
「貴方に流れる『魔』の力は薄い……その為、その力を制御できる可能性はあります」
「どうやるんですか!?」
「気合です」
「……え?」
世界の答えにとんでもなく間抜けな声を上げるカモメ。
ここまで来て……根性論?
「残念ながら、それしかないのです……『魔』は弱い心に付け込む、リーンも竜達が傷つく姿に心を疲弊させているところに付け込まれました」
「そんな……そんなのどうしようも……」
「いえ、出来る筈です。あなたなら」
力強い言葉でそう言い切る世界。
「何を根拠にそんなことをいうの…?」
「貴方はこれまで普通の人間なら心が折れるであろう場面を体験しているはずです」
「え、どういうこと?」
「母親の死、父親の死……夢である冒険者になれず冤罪でお尋ね者となる、これらを経験してもなお貴方は真っ直ぐ生きている」
そう、カモメはこれまで何度も不幸な目に会ってきていた。
だが、彼女はそれを跳ねのけ今も元気に笑っている……だが、それは。
「それは、支えてくれた人がいたから……お母さんの時はお父さん、その後はクオンにディータにエリンシアが私の傍にいてくれたから……」
「なら、その者たちを失わないようにしなさい、そして、その為にも『魔』の力を操るのです。そうしなければこの世界は今度こそ『魔』に飲まれるでしょう」
「リーンはまだこの世界にいるの?」
今度こそ、『魔』に飲まれるという事はリーンはまだ……いや、リーンを飲み込んだ『魔』はまだこの世界にいるということだ。どこかで世界を狙っているのだろう。
「ええ、必ず私を狙ってくるでしょう」
「何処にいるの!」
「残念ながら『魔』となった彼女を見つけることは出来ません……私から隠れる術を持っているようです」
「え……でも、私にリーンの過去を見せてくれたよね?……過去は見れたけど今は見つけられないってこと?」
「いえ、あれは貴方に流れるリーンの血が見せた物、私が見せたわけではありません」
先ほどの映像は、カモメの中に流れるリーンの血を使い見せた者らしい、世界もリーンがあれほどの葛藤をしていることを知らなかった。世界と言えども万能ではないのだ。
「そうなんだ……」
「心を強く持つのです、貴方ならきっと『魔』を御す事ができるでしょう」
「でも、どうやっていいのか分からないよ……」
「出来ますよ……貴方はあの『アスカ』の娘なのですから……」
世界の言葉に顔を上げるカモメ。
今の世界の口ぶりだと世界はアスカの事を知っていた?
「お母さんを知ってるの?」
「……つ……人……尊……だ…」
「え、何!?」
世界の声が急に遠くなる、母親の事を聞きたかったカモメであったが、何かに引っ張られるような感じを受ける。
「ちょっ、何!?」
目の前が真っ白になったと思うと、耳から聞きなれた声が聞こえてきた。
「カモメ!」
「大丈夫ですの!?」
どうやら、現実に戻ってきたようだ。
「お母さんの事、聞きたかったな……」
ぽつりと呟くカモメであったが、その声は駆け寄ってくるクオン達までは届くことはなかった。
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