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6章
出発
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ツァインにある城の中、その謁見の間にてツァイン王国騎士団長のソフィーナが王であるフィルディナンドに先の砦での戦いの報告をしていた。
「そうか、帝国の兵が魔鬼に……」
「はい、恐らくあの数から言って帝国の民のほとんどが魔鬼にされたのではないかと…」
「惨いことを……」
「魔族にとって人間は唯の道具でしかないのかもしれません……」
「うむ……だが、砦を護れたのは朗報だ、あの砦がなくなれば敵国からの進撃を監視する場所がなくなってしまうからな」
「う……それなのですが王よ……」
「ん、どうした?」
フィルディナンドの砦を護れたという言葉にソフィーナが言葉を詰まらせる。
「そ、そのですね……先ほど言った通り、帝国の兵すべてが魔鬼へと変貌しまして……」
「うむ、聞いたぞ、それを魔女殿が魔法で一掃したのだろう?凄まじき強さになったものだ……そして、その力で我が国の民を救ってくれたのだ感謝せねばな」
「は、はい……それはもう、その通りなのですが……その、魔鬼はあの時すでに砦の近くまで迫っており、あわや砦に侵入を許すところでした……」
「む、そうなのか?」
そう、カモメ達がついた時には操られた帝国の兵は砦の門を破り入り口付近まで攻め入っていたのだ。
それをレディたちがなんとか抑え込んでいた。
「はい、そして、砦の近くにも帝国の兵の死体はありました……たくさん」
「む……おい、待て……魔女殿が一掃したのだろう?」
「はい、魔鬼は全て魔女殿の魔法で消滅いたしました……砦ごと」
「な、なんだとっ……では砦は……」
「一緒に消滅いたしました……まるごと……跡形もなく……きれいさっぱりと」
「…………オーマイガー」
理解を超えたのか、余りのショックにおかしくなったのかフィルディナンドは普段では使わないような言葉をぽかんと開けた口から漏らすのだった。
そして、この後の処理に頭を抱えるのであった。
「で、ですが王よ、あの場合は仕方なく……魔女殿も悪気があったわけではっ」
「う、うむ、解っておる……魔女殿が我が国を救ってくれたことには変わらぬ、そのことを咎める気はない……はあ、今後の事も決めたいのでな、魔女殿達を呼んでくれ」
「はっ」
ソフィーナは踵を返すと扉の外へと出ていく、それを見送ったフィルディナンドは再び大きなため息を吐くのであった。
「王様……その、ごめんね?」
「よい……ソフィーナに聞いた、魔鬼を殲滅する為だったのだ仕方なかろう……数体でも逃せばそれだけで村や町が滅びるからな……それを防いでくれたのだ砦の一つくらいは仕方がない」
カモメに語り掛けながら自分に言い聞かせるように言葉を紡ぐフィルディナンド。
その言葉にカモメは胸をなでおろしていた。
「それで、魔女殿……今後の事で話し合っておきたいのだが……魔女殿はどうするつもりなのだ?」
「うーん、帝国は今、ほとんど人間がいないはずだからね、今のうちに攻め込んで魔王を倒しちゃいたいかな?」
「ほう、大きく出たな……魔女殿なら魔王を倒すことが出来ると?」
「解んない……でも、いつかは戦わないといけない相手だし……今なら人間のいない帝国だもん……手加減しないで戦えると思う」
「なるほど……だが、そうなるとなまじ力の足りない兵士を連れて行くわけにはいかぬのではないか?」
「うん、クオンとディータもそう言ってた、敵が魔族だけなら少数精鋭で行った方が良いって」
兵士を連れて行けば数で取り囲んで逃げ場を無くすことや、敵に休みを与えず攻撃することが出来るが、それはあくまでも個人の力にそれほど差が無い時の話である。
数百の兵士で一人に負けてしまうようでは被害ばかり大きくなって、怪我をした人の治療だけでも大変な手間になってしまう。
相手は魔族、隙を与えるような真似はせず、魔族と対抗できるだけの力を持った者たちだけで戦うべきである。つまり……
「帝国には私とクオン、ディータにエリンシア、レディとミャアとコロ……この6人で行こうと思う」
「……騎士団長などと言う肩書を持ちながら……力になれぬとは……」
「ううん、皆で行っちゃうとここを攻められた大変だよ……だからソフィーナさんとアネルさん、それにコハクとリーナにはここを護って欲しい」
「……解った、我が故郷だ……この命に代えて護ろう」
「よろしく」
「ごめんなさいね、悪いのだけれど私も帝国のほうに加えてもらえない?」
「あ、アネルさん」
ヴィクトールと同じ、英雄のパーティに所属し、その中身は1000年前に人間に殺された女神レナの魂である、アネルが謁見の間の扉を開き、開口一番にそう言った。
「え、でも、ツァインは大丈夫なの?」
「確かにここの護りも必要ね、だから代わりにミャアちゃんをここに残して欲しいの」
「でも、どうして?」
「個人的な理由で申し訳ないのだけれど、私も魔王に恨みがあってね……この手で一発かましてやりたいのよ」
「ほう、初耳だな……アネル殿は魔王と面識があるのか?」
「ええ、かなり昔の話だけれど私の家族を殺されているの」
「なんだと?」
「そうなんだ……」
家族と言うのは当然、ディータである。
当のディータは素知らぬ顔でソウルイーターの姿になりカモメの周りをふよふよと飛んでいた……とても元気である。
「わかった、ミャアいいかな?」
「暴れたかったけど仕方ニャいニャ~」
「ごめんなさい、ミャアちゃん。帰ったら何か驕るわ」
「!!っ、解ったニャ!約束ニャよ!」
「ええ」
嬉しそうに飛び跳ねるミャアに優しく微笑むアネル。
「では、帝国へ行くメンバーは魔女殿、クオン殿、エリンシア殿、ディータ殿、レディ殿、コロ殿にアネル殿という事でよいか?」
「うん、みんな、いいかな?」
カモメの問いかけにそれぞれが返事を返す。
もちろん、誰も拒む者はいなかった。
「では、頼むぞ魔女殿」
「うん、まっかせて!」
こうして、魔王との最終決戦の場……帝国へとカモメ達は向かうのであった。
「そうか、帝国の兵が魔鬼に……」
「はい、恐らくあの数から言って帝国の民のほとんどが魔鬼にされたのではないかと…」
「惨いことを……」
「魔族にとって人間は唯の道具でしかないのかもしれません……」
「うむ……だが、砦を護れたのは朗報だ、あの砦がなくなれば敵国からの進撃を監視する場所がなくなってしまうからな」
「う……それなのですが王よ……」
「ん、どうした?」
フィルディナンドの砦を護れたという言葉にソフィーナが言葉を詰まらせる。
「そ、そのですね……先ほど言った通り、帝国の兵すべてが魔鬼へと変貌しまして……」
「うむ、聞いたぞ、それを魔女殿が魔法で一掃したのだろう?凄まじき強さになったものだ……そして、その力で我が国の民を救ってくれたのだ感謝せねばな」
「は、はい……それはもう、その通りなのですが……その、魔鬼はあの時すでに砦の近くまで迫っており、あわや砦に侵入を許すところでした……」
「む、そうなのか?」
そう、カモメ達がついた時には操られた帝国の兵は砦の門を破り入り口付近まで攻め入っていたのだ。
それをレディたちがなんとか抑え込んでいた。
「はい、そして、砦の近くにも帝国の兵の死体はありました……たくさん」
「む……おい、待て……魔女殿が一掃したのだろう?」
「はい、魔鬼は全て魔女殿の魔法で消滅いたしました……砦ごと」
「な、なんだとっ……では砦は……」
「一緒に消滅いたしました……まるごと……跡形もなく……きれいさっぱりと」
「…………オーマイガー」
理解を超えたのか、余りのショックにおかしくなったのかフィルディナンドは普段では使わないような言葉をぽかんと開けた口から漏らすのだった。
そして、この後の処理に頭を抱えるのであった。
「で、ですが王よ、あの場合は仕方なく……魔女殿も悪気があったわけではっ」
「う、うむ、解っておる……魔女殿が我が国を救ってくれたことには変わらぬ、そのことを咎める気はない……はあ、今後の事も決めたいのでな、魔女殿達を呼んでくれ」
「はっ」
ソフィーナは踵を返すと扉の外へと出ていく、それを見送ったフィルディナンドは再び大きなため息を吐くのであった。
「王様……その、ごめんね?」
「よい……ソフィーナに聞いた、魔鬼を殲滅する為だったのだ仕方なかろう……数体でも逃せばそれだけで村や町が滅びるからな……それを防いでくれたのだ砦の一つくらいは仕方がない」
カモメに語り掛けながら自分に言い聞かせるように言葉を紡ぐフィルディナンド。
その言葉にカモメは胸をなでおろしていた。
「それで、魔女殿……今後の事で話し合っておきたいのだが……魔女殿はどうするつもりなのだ?」
「うーん、帝国は今、ほとんど人間がいないはずだからね、今のうちに攻め込んで魔王を倒しちゃいたいかな?」
「ほう、大きく出たな……魔女殿なら魔王を倒すことが出来ると?」
「解んない……でも、いつかは戦わないといけない相手だし……今なら人間のいない帝国だもん……手加減しないで戦えると思う」
「なるほど……だが、そうなるとなまじ力の足りない兵士を連れて行くわけにはいかぬのではないか?」
「うん、クオンとディータもそう言ってた、敵が魔族だけなら少数精鋭で行った方が良いって」
兵士を連れて行けば数で取り囲んで逃げ場を無くすことや、敵に休みを与えず攻撃することが出来るが、それはあくまでも個人の力にそれほど差が無い時の話である。
数百の兵士で一人に負けてしまうようでは被害ばかり大きくなって、怪我をした人の治療だけでも大変な手間になってしまう。
相手は魔族、隙を与えるような真似はせず、魔族と対抗できるだけの力を持った者たちだけで戦うべきである。つまり……
「帝国には私とクオン、ディータにエリンシア、レディとミャアとコロ……この6人で行こうと思う」
「……騎士団長などと言う肩書を持ちながら……力になれぬとは……」
「ううん、皆で行っちゃうとここを攻められた大変だよ……だからソフィーナさんとアネルさん、それにコハクとリーナにはここを護って欲しい」
「……解った、我が故郷だ……この命に代えて護ろう」
「よろしく」
「ごめんなさいね、悪いのだけれど私も帝国のほうに加えてもらえない?」
「あ、アネルさん」
ヴィクトールと同じ、英雄のパーティに所属し、その中身は1000年前に人間に殺された女神レナの魂である、アネルが謁見の間の扉を開き、開口一番にそう言った。
「え、でも、ツァインは大丈夫なの?」
「確かにここの護りも必要ね、だから代わりにミャアちゃんをここに残して欲しいの」
「でも、どうして?」
「個人的な理由で申し訳ないのだけれど、私も魔王に恨みがあってね……この手で一発かましてやりたいのよ」
「ほう、初耳だな……アネル殿は魔王と面識があるのか?」
「ええ、かなり昔の話だけれど私の家族を殺されているの」
「なんだと?」
「そうなんだ……」
家族と言うのは当然、ディータである。
当のディータは素知らぬ顔でソウルイーターの姿になりカモメの周りをふよふよと飛んでいた……とても元気である。
「わかった、ミャアいいかな?」
「暴れたかったけど仕方ニャいニャ~」
「ごめんなさい、ミャアちゃん。帰ったら何か驕るわ」
「!!っ、解ったニャ!約束ニャよ!」
「ええ」
嬉しそうに飛び跳ねるミャアに優しく微笑むアネル。
「では、帝国へ行くメンバーは魔女殿、クオン殿、エリンシア殿、ディータ殿、レディ殿、コロ殿にアネル殿という事でよいか?」
「うん、みんな、いいかな?」
カモメの問いかけにそれぞれが返事を返す。
もちろん、誰も拒む者はいなかった。
「では、頼むぞ魔女殿」
「うん、まっかせて!」
こうして、魔王との最終決戦の場……帝国へとカモメ達は向かうのであった。
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