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ゴブリンの村

82:コロ

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 まあどう見ても江戸から昭和初期レベルの文化やし、性教育なんて無いわな、てかなんでこんなに皆潔癖というか極端なんや?西村寿行とか大藪春彦によると、昔はもっと性に開放的やったはずやで?祭りの夜とか乱交してたとか。旅人に娘を差し出すことによって外の血を入れるとか。夜這い上等、略奪婚なにそれ普通、っていう世界や無いのん?
 まあ、都会に行けば立ちんぼというか夜鷹とかいるやろ。いるやろ?昔の風俗にはある種独特なアクガレがあるねんけど、詳細は省くわ。
『頭の弱い素直な婦女子が好きなんですな』
『ちゃう!ちゃうちゃう!女の子に色々教えたげて!いや!そんなことはどうでもええねん!』
『ああ、若紫どすか』
『ぜんぜん違う!そんな教育ちゃう!』
『初手から仕込むとは夢がおありどすな』
『頼むから!念話で声枯れるから!ちゃうから!ていうか!リクのことも!聞かなあかんような!』
『主殿、鹿かれいかかとつかのようですな』
『……あー、そうね、うん、落ち着きましょう』
『もしかしてれいかではなくすてに仕込むお積もりか?』
『ちゃうから!ちゃうから!』
『ほんにからかい甲斐のある御方どすな』
 …………。

 あおいさんにやんわりと丁寧に睦事の正しいあり方について説明する。子作りの正当性について懇切丁寧に伝授する。顔がとても赤い。その程度はご褒美ということで。
 こっそりとれいかやすても聞いていたらしい。顔が赤い。
 今日は寝やすいかと思ったが、そうでもなかった。

 また明け方早くに一度目が覚める。
 どうするかな。
 あおいさんについては、どうしようもない、魔に囚われかけた只の人だ。解呪してもいいけど、したらすぐ寿命が来てしまう。今ならまだ神性の欠片が残っているから、そっちに行かれへんかな。
 んで、りくやな、まあ神さんいうのはわかった、宇賀神なんてマイナーな神さん、風◯大地の先輩キャラでなければ絶対覚えていない。基本は蛇神、蛇信仰と弁天がくっついてる、弁天は吉祥天女で、もとはインドの神さん、サラスヴァティやったかな。でも吉祥天はほんとはラクシュミーやったりするし、色々混ざりすぎ。
 で、久我家っていえばこれもなんで覚えているかというと、一瞬源氏の棟梁になってしまったから。江戸幕府が解体されて、徳川の代わりに探しに探して、名目上の総大将になった、んじゃなかったっけ?
 せやから華族やね、確か。華族のランクはようわからんけど、どうも今もあるっぽい。
 てか、江戸幕府もあるとかいうてなかったっけ、伏見課長。
 日々濃すぎて詳細を覚えきらんのが辛い。
 やとしたら、りくを届けなあかんはず。実際誘拐されてんねんからなあ。
 どのくらい、この村のおっさんおばさんの寿命が残っとるのかわからんけど、れいかとすては、とりあえず学校に行かんならん。いや、すて、絶対年齢ごまかしとるよなあ。
 そもそも、戸籍は?確かに「誰も知らない」やないけど、元世界の現代でも無戸籍者が少なからずいるとかいう話は聞いたことあるけど、こんな物の怪やら神様やらが混在する世界で登録すんのは、そら困難やわな。
 せやからこそ、伏見課長とか、安倍晴明なんてバケモンが暗躍しとるんやろうけど。
『わんわん(暗躍はひどいですね)』
 びっくりした。
『われおったんかい』
『わんわん わんわん(われ呼ばわりもひどいなー。これでも日の本陰陽師の総元締めですよん』
『いや失敬。にしても軽いですね』
『わんわん(そりゃあねえ。沈んだら浮かび上がれないほど、闇は深いっすから)』
『……自分に何か出来ることはありますかね?』
『わんわん!わんわん!(それはもう、いくらでも!じゃあ、明日伏見くんにまた行かせますから、雇用条件を確認してもらって。早速興福寺ーああ春日大社か、か御所まで来ていただければ』
『いや、速すぎませんか?それはそれとして。そうそう、久我やとり、じゃなかったっけ、久我家のお嬢さん、どうしましょう?』
『(それはおまかせしますよ、訳有なのは皆承知しておりますからね)』
 (手抜きか……)
『じゃあ、まありくさんに確認取ってからにしましょうか。それから、多分おわかりだと思うのですが、あおいさん、あの、女河童ですね、彼女の扱いはどうするようなものですかね?』
『(彼女は境界線ボーダー上にいるんですよねえ。ご存じないとは思いますが、特殊戸籍というのがありまして)』
『はい』
『(神仏精霊については、普通に登録されているんです。しかし物の怪そのものについては、基本登録しない方向なんですよ。神権、仏権、霊権は認められているんですが、妖怪に権利を保証しろというのも難しいでしょ)』
『あー。そうですよねぇ……』
『(もとが人ですから。人であればいいんですが。人から物の怪になった場合が判例も別れるところで)』
『なるほど。あ、じゃあ無機物というか付喪神はどういう扱いですか?』
『これもねえ。神といいながら、実質物の怪じゃないですか。悪さをするしないの線引なんてできませんから、ケースバイケースなんですよ』
『なるほど。うちの鹿杖はご覧になりましたか?』
「ああ、彼は重要文物ですね、間違いなく。仏宝すらありえます。実際歴史上の遺物で、精霊でしょう」
「精霊扱いですか、そうですね。納得できます」
 薄っすらと明るくなっている気配があって、目を開ける。
 れいかとすてとりくが顔を覗き込んでいる。うぉ、びびるやん。
「このわんちゃん、話せるんですね!」
「ああ、そう、ですね」
「はい、私はコロです。よろしくお願いします」
 コロ!名前あったんや、てこれ式やんな、ほんまは。まあ、なんでもええわな。そういえば、昔黒柴柄のコロっていう雑種を飼ってたことあるけど、ん?なんか作為が?
『(偶然です)』
 そう、かなあ……


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