聖女♂でございます。

拝詩ルルー

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初めての顔合わせ

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 数日後、国王陛下から俺に召集命令が下った。

 王宮に登城して、案内された会議室にいたのは、国王陛下、宰相閣下、騎士団長、女神教会の神官たちと、煌びやかなイケメンの若者たちだった。

「ここに君たちを呼んだ理由は他でもない、教会で女神様からお告げがあったのだ——魔王が復活した、と」

 会議が始まると、早速、国王陛下が重々しく口を開いた。

「詳しくは私から。女神様は、『南の隣国との境にある瘴気の森にて魔王が復活した』と告げられました。また女神様より、魔王討伐に向かうべきメンバーを告げられております。メンバーは、『勇者』アクセル王太子殿下、『剣聖』ベルンハルト様、『賢者』クリストフ様、『密偵』ディーター様、そして『聖女♂』エトムント様の以上五名です」

 女神教会の神官の一人が、説明を始めた。


 俺は魔王討伐メンバーを紹介されて、ピンッと閃いた——そうだ! 転生前の妹がやってた鬼畜乙女ゲームの続編だ。

『恋のセレニティ2~祈りの聖女~』——通称『恋セレ2』だ。

 ヒロインは日本の女子高生。聖女として異世界召喚され、イケメンな仲間たちと魔王討伐の旅をしながら、攻略対象者との好感度を上げて絆を深めていく。最終的には魔王を倒して世界を救いつつ、攻略対象者と結ばれてハッピーエンドを目指すという、ここまで聞くとよくある乙女ゲームだ。

 ただ、選択肢のトリッキーさと攻略対象者のクセの強さが売りで、選択ミス一つで即バッドエンドという初見殺しも満載だから、ゲーム難易度はかなり高い。

 さらには今作から戦闘システムが加わったため、きちんとレベルアップして魔物、ひいては魔王を倒せないと、攻略対象者との好感度うんぬんは一切関係無く、ガチでバッドエンドを迎える。
 当たり前だが、もちろんこの世界も滅ぶ。

 なんで俺がこんなに詳しいかというと、転生前に推してたVチューバーがゲーム実況してたからだ。
 明るくて少し抜けたキャラと可愛い声にハマって、何周も見た覚えがある……

 で、今の俺は聖女♂だから、いわゆる、ヒロイン役だ。


「『聖女♂』だと……?」
「『♂』とは一体?」
「こんなこと、今までに前例がないぞ」
「本当にそんなお告げが下ったのですか?」

 アクセル殿下たち攻略対象者四人が、顔色を変えて次々と疑問を口にした。

 国王陛下や宰相閣下、騎士団長や女神教会の神官たちまで、全員が沈痛な面持ちで黙りこくっていた。

 そんなに聖女が男であることが遺憾なのか!? 女であることが大事なのか!? ぶっちゃけ、魔王を討伐できればそれでいいだろ!!?

 会議室の気まずい雰囲気の中、神官たちが代わる代わる説明をしていった。

いにしえの時代より魔王が復活した折には、我が国では聖女召喚が行われ、異界より訪れた乙女と共に力を合わせて魔王を討伐してきました」

「魔王討伐が完了した暁には褒賞として、聖女様にはこの地で安らかに過ごしていただくためにも、好きな伴侶を選んでいただいておりましたからな」

「聖女様は皆、美しく可憐で、スタイルも良く、得も言われぬ芳しい香りがすると言い伝えられてますからね。それに、どうしても一緒に旅をして苦楽を共にしてきた仲間には情が湧き、聖女様にも選ばれる確率は高くなります」

 最後のやつ! それが理由かっ!!
 このイケメンどもは、その聖女様(美しく可憐でスタイルが良くていい匂い)が狙いかっ!?

「まずは魔王討伐メンバーで話し合ってみてはどうか? これから協力し合って魔王を倒しに行くのだ。自己紹介もまだだろう? 互いを知る良い機会ではないか」

 国王陛下に取りなされて、俺たち魔王討伐メンバーは会議室に残ることになった。

 俺たちを置いて行く国王陛下たちの背中が、なぜだか居た堪れない感じを醸し出していたのはなんでだろうな……


 初めての魔王討伐メンバーの顔合わせは、まるで葬式のような雰囲気だった。——おそらく、いや、もちろんその原因は俺だろうな。

 悪かったな。本来であれば、黒髪ストレートのかわいい女子高生ヒロインがここにいたんだけどな。

「なぜ、聖女が男なんだ……」

 勇者で第二王子のアクセル殿下が、世界中のありとあらゆる絶望をかき集めたかのような念のこもった声で呟いた。
 膝の上で固く握られた拳が、ブルブルと震えている。

 アクセル殿下は、王家特有の銀髪プラチナブロンドに紫色の瞳で、爽やか系のイケメンだ。
 元々は王太子ではなかったが、兄の第一王子が騒動を起こして廃太子されて、繰り上がりで王太子になった。ここはゲームとは違うところだ。

 ものすっごく残念そうにしてるけど、どんだけ聖女様に期待してたんだ? 
 そこまで悲しい顔をされると、こっちまで申し訳なく思えてくる……

「聖女といえば、古来より清く美しき乙女との言い伝えだったはずだが……何か神界で手違いでもあったのでしょうか?」

 賢者のクリストフ様が、訝しげに顔を顰めた。
 クリストフ様は、青髪のクール系インテリ眼鏡のイケメンだ。旅の仲間の中でも知恵袋的存在で、訊けば何でも答えてくれる。
 そしてゲーム上は、ヒロインのバトルのチュートリアル担当でもあった。

 鋭い! その通りです!! 女神様が聖女召喚コストを全部ポテチにぶっ込んだからですよ!!! ……と正直にぶちまけてやりたい……

「女神よ! なぜ男を聖女に選ばれたのですかっ!!」

 剣聖のベルンハルト様が、テーブルをダンッと拳で叩いて憤っていた。
 ベルンハルト様は、赤髪短髪の細マッチョ系のイケメンだ。確か、騎士団長のところの次男坊だ。
 元々、家督を継ぐ予定はなかったが、長兄が騒動を起こして廃嫡されたため、繰り上がりで家を継ぐことになった……ここもゲームとは違うところだ。

 ストレートだなぁ~。でもそれについては、俺も完全に同意だ。なんちゅうことをしてくれたんだ、あの女神様は!

「さっさと終わらせましょう。男ばかりのこんなむさいパーティーでずっとつるんでいたくない」

 密偵のディーター様があけすけに言い放った。

 ディーター様は、癖っ毛の亜麻色の髪に青い瞳をした甘いマスクのイケメンだ。確かゲームでは、元盗賊団の棟梁で、今は国王の影として仕えている、っていう設定だったか……

 ディーター様の言葉に呼応して、誰ともなく互いに顔を見合わせ合った。

 その時、俺たちの想いは一致していた——魔王討伐なんてさっさと終わらせよう、と。

 初対面で雰囲気は最悪だが、とにかく目的だけは皆同じだ。こんな俺たちでも、どうにかやっていけるかもしれない——


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