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第四章 ウォーグラフト領
土砂崩れ2
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俺はとりあえず、道を塞いでる土砂の前に歩いて行った。
俺が向かう先では、道を開けるように作業をしていた人たちの波が開けていく。皆、珍しそうにガンちゃんを見つめてた。
土砂は俺の背丈よりもずっと高くまで積み上がっていた。
長雨は止んで、ここ最近は小雨すら降っていなかったみたいだから、すっかり乾いていた。
『ガンちゃん、これどうするの?』
俺は心の中でガンちゃんに訊いてみた。ハンマーにブツブツ独り言を話しかける不審者って思われたくなかったし。
『今こそウルトラアトミックダイナマイトボンバーを披露する時だな!!』
「なんて?」
俺はあまりにもクソダサすぎる技名に、思わず素で訊き返していた。
『だーかーら、ウルトラアトミックダイナマイトボンバーだ! 俺に魔力を込めて、思いっきりぶっ放すだけの超簡単で最強の技だぜ!!』
「…………」
あまりにも技名が酷すぎて、それ以外の説明が脳内を右から左にすり抜けていった。
「ノアさん、聖武器は魔力を込めて振るうことで、特別な力を発揮するものが多いですよ」
「あ、そうなんですね」
ウィリアムさんが親切に要約してくれた。
『それっ! さっき俺が説明したやつだぞ!!』
ガンちゃんがぷりぷりと抗議の念話をあげた。
「そのウルトラ……? 何たらとかいうクソダサい技名を叫ぶかどうかは、技の発動と関係ありませんよ」
「よ、良かったぁ~!! そうなんですね!!!」
ウィリアムさんの追加説明に、俺は救いの道を見出したような気がした。
心なしか、ウィリアムさんがいつも以上にキラキラしく輝いて見える。
『クソダサいって何だよ!!?』
ガンちゃんがさらに抗議してきたけど、俺はサラッと無視した。
──うん、そんなクソダサい技名を叫びながら大技を発動させるなんて、俺には絶対無理!
「分かったよ、ガンちゃん。普通にいくよ!」
『普通って何だよ! 叫べよ、俺のウルトラカッコいい技名を!! 心から! 魂からよぉ~~~!!!』
ガンちゃんはさらに文句を言ってきたけど、俺はハンマーの持ち手を強く握りしめて、魔力を流し込んだ。ガンちゃんのヘッド側面に嵌められた真っ赤な魔石が、力強く輝き始める。
「大技を撃ちますので、皆さん、離れてくださ~い! 危ないですよ~!」
ウィリアムさんが、他の人に声をかけて、安全な場所まで誘導してくれた。
これで、思いっきりハンマーを振っても大丈夫なはず……!
『うぉおおおっ! 久っ々にたぎってきたぜぇ!!』
脳内に響いた念話に一瞬集中力が乱れたけど、俺は腰を落としてガンちゃんを大きく振りかぶった。
「うおぉおりゃあぁっ!!!」
ボッコーーーンッ!!!
道を塞いでいた岩や土が激しく弾け飛び、崖の方へと勢いよくぶっ飛んでいった。
辺りは立ち上がった土煙がもうもうと取り巻いて、一瞬前が見えなくなった。
「ゲホッ、ゴホッ……!」
土煙がおさまった後に目を開けてみると、そこには土砂が吹き飛んで、向こう側へ続く道が見えていた。
まだ道の端の方には少し土砂が残っているけど、馬車一台分くらいは通れそうなスペースが、十分に確保できていた。
「おぉっ! やったぞ!!」
「すげぇ!! 今のは何だったんだ!?」
「やったな! この先に進めるぞ!!」
村の人たちが、驚きと歓声の声をあげた。
『フンッ。初めてでこれなら上出来だな』
ガンちゃんも褒めてくれた。
「はぁ、良かった……っ!?」
気が抜けた瞬間に、俺はガクッと膝から一瞬で落ちた。ガンちゃんを支えにして、倒れ込まないように気を付ける。
さっきの一発で、かなり魔力を消費したみたいだ。
普段とは全く違った魔力の使い方をしたせいもあって、余計に体全体に怠さが出てきた。
「大丈夫か、ノア!?」
「ノアさん、大丈夫ですか!?」
グラントさんとウィリアムさんが、すぐさま駆けつけてくれた。
「聖武器の大技はかなり魔力を使いますからね。ノアさんは魔力量が多い方ですし、気を失わなくて良かったですね」
ウィリアムさんがのんびりとそんなことを口ずさんだ。
「とりあえず、魔力回復ポーションでも飲んどくか?」
グラントさんは、どこからか魔力回復ポーションを取り出して、渡してくれた。
俺はお礼を言って、一気にグビグビッとポーションを飲み干した。
「ぷはぁ! でも、これで隣町に行けそうで良かったですね!」
「「……」」
俺がニカッと笑って言うと、なぜか一瞬だけ沈黙が流れた。
「……確か、隣町までは何ヶ所か土砂崩れが起きていたのでは?」
「え゛っ!?」
ウィリアムさんに言われて、チラリと村人たちの方を確認してみると、めちゃくちゃ期待したようなキラキラした瞳で見られていた……!
これって、隣町と道が開通するまでやった方がいいってことだよね……?
「ウィリアムさんも、きっとガンちゃんで大技撃てますよね!?」
俺はふとある可能性に気づいて、ウィリアムさんの方を見上げた。
「可能ではありますが、ダメですよ。ミセリアに怒られてしまいます。大丈夫。重たいガラガルディアを運ぶくらいはできますよ」
「そんなぁーーーっ!!」
ウィリアムさんにすげなく断られて、俺は頭を抱えた。
「ノア、決して無理はするなよ?」
グラントさんがグッと俺の両肩を掴むと、真剣な目で俺の目を覗き込んできた。
その瞳からは、真面目に俺のことを心配してくれている気持ちが伝わってきた。
でも、俺の背後からも、村人たちの期待の視線が、突き刺さるほどに感じられた。
ガンちゃんを扱えるのは俺だけだし、ここで俺がやらなかったら、村人たちはかなりの時間をかけて土砂の撤去作業をしなきゃいけないから、村の復興作業は遅れるだろうし、物資不足も悪化するだろう。
それに、困ってる人たちを見捨てるなんて、慰問に来た意味がないじゃないか!
何より、今日は慰問最終日で、明日は特別休暇をいただいてるし……!
「もう少し、頑張ります……!」
俺はいろいろ考え込んだ後、腹を括った。
明日は絶対に動かない、いや、おそらく物理的に動けなくなるだろう……
「「「「「「「やったーーー!!」」」」」」」
『いやっほぉーーー!!!』
後ろで村人たちの歓声があがった。
脳内でも、久々の活躍に湧いているおっさん臭い声が響いていた。
***
「……それでノアは、隣町まで行ったの?」
リリアンが淡いラベンダー色の瞳を丸くして、呆れたように俺を見下ろした。
ここは聖鳳教会エルツ支部にある休憩室だ。
俺は長椅子に寝そべっていた。もう全身クタクタすぎて、指一本動かすのもキツかった。
「……うん……」
隣町までは、さらに三ヶ所ほど道が土砂で埋まっていた。
魔力回復ポーションでドーピングしながら、俺はガンちゃんで溜まっていた土砂を吹き飛ばしていった。
全部の土砂を取り除けたわけではないけど、人と馬車が通れるだけの道幅は確保できたし、ここから先はエルツ村の人たちと隣町の人たちが協力して、少しずつ道を整えていくらしい。
いきなり慣れない大技を同じ日に何発も撃てば、そりゃあ、魔力も体力も限界になる。
帰りはさすがに護衛の聖騎士におんぶしてもらって、俺はエルツ村まで戻って来た。
「……明日は一日中休むんだ……!」
「そうね、ノアは頑張ったものね」
あまりにも疲れて弱音を吐くと、リリアンがそっと頭を撫でてくれた。軽く触れるかどうかぐらいの力加減だったけど、なんだかとても心地良く感じた。
……俺、頑張って良かったかも。
それに、中途半端に諦めて隣町までの道を開通させてなかったら、それはそれできっと心残りができてたかもしれない。
体力的にはかなりキツかったけど、これはこれで良かったのかも……
やり切った満足感を感じながら、いつの間にか俺はストンと眠りに落ちていた。
俺が向かう先では、道を開けるように作業をしていた人たちの波が開けていく。皆、珍しそうにガンちゃんを見つめてた。
土砂は俺の背丈よりもずっと高くまで積み上がっていた。
長雨は止んで、ここ最近は小雨すら降っていなかったみたいだから、すっかり乾いていた。
『ガンちゃん、これどうするの?』
俺は心の中でガンちゃんに訊いてみた。ハンマーにブツブツ独り言を話しかける不審者って思われたくなかったし。
『今こそウルトラアトミックダイナマイトボンバーを披露する時だな!!』
「なんて?」
俺はあまりにもクソダサすぎる技名に、思わず素で訊き返していた。
『だーかーら、ウルトラアトミックダイナマイトボンバーだ! 俺に魔力を込めて、思いっきりぶっ放すだけの超簡単で最強の技だぜ!!』
「…………」
あまりにも技名が酷すぎて、それ以外の説明が脳内を右から左にすり抜けていった。
「ノアさん、聖武器は魔力を込めて振るうことで、特別な力を発揮するものが多いですよ」
「あ、そうなんですね」
ウィリアムさんが親切に要約してくれた。
『それっ! さっき俺が説明したやつだぞ!!』
ガンちゃんがぷりぷりと抗議の念話をあげた。
「そのウルトラ……? 何たらとかいうクソダサい技名を叫ぶかどうかは、技の発動と関係ありませんよ」
「よ、良かったぁ~!! そうなんですね!!!」
ウィリアムさんの追加説明に、俺は救いの道を見出したような気がした。
心なしか、ウィリアムさんがいつも以上にキラキラしく輝いて見える。
『クソダサいって何だよ!!?』
ガンちゃんがさらに抗議してきたけど、俺はサラッと無視した。
──うん、そんなクソダサい技名を叫びながら大技を発動させるなんて、俺には絶対無理!
「分かったよ、ガンちゃん。普通にいくよ!」
『普通って何だよ! 叫べよ、俺のウルトラカッコいい技名を!! 心から! 魂からよぉ~~~!!!』
ガンちゃんはさらに文句を言ってきたけど、俺はハンマーの持ち手を強く握りしめて、魔力を流し込んだ。ガンちゃんのヘッド側面に嵌められた真っ赤な魔石が、力強く輝き始める。
「大技を撃ちますので、皆さん、離れてくださ~い! 危ないですよ~!」
ウィリアムさんが、他の人に声をかけて、安全な場所まで誘導してくれた。
これで、思いっきりハンマーを振っても大丈夫なはず……!
『うぉおおおっ! 久っ々にたぎってきたぜぇ!!』
脳内に響いた念話に一瞬集中力が乱れたけど、俺は腰を落としてガンちゃんを大きく振りかぶった。
「うおぉおりゃあぁっ!!!」
ボッコーーーンッ!!!
道を塞いでいた岩や土が激しく弾け飛び、崖の方へと勢いよくぶっ飛んでいった。
辺りは立ち上がった土煙がもうもうと取り巻いて、一瞬前が見えなくなった。
「ゲホッ、ゴホッ……!」
土煙がおさまった後に目を開けてみると、そこには土砂が吹き飛んで、向こう側へ続く道が見えていた。
まだ道の端の方には少し土砂が残っているけど、馬車一台分くらいは通れそうなスペースが、十分に確保できていた。
「おぉっ! やったぞ!!」
「すげぇ!! 今のは何だったんだ!?」
「やったな! この先に進めるぞ!!」
村の人たちが、驚きと歓声の声をあげた。
『フンッ。初めてでこれなら上出来だな』
ガンちゃんも褒めてくれた。
「はぁ、良かった……っ!?」
気が抜けた瞬間に、俺はガクッと膝から一瞬で落ちた。ガンちゃんを支えにして、倒れ込まないように気を付ける。
さっきの一発で、かなり魔力を消費したみたいだ。
普段とは全く違った魔力の使い方をしたせいもあって、余計に体全体に怠さが出てきた。
「大丈夫か、ノア!?」
「ノアさん、大丈夫ですか!?」
グラントさんとウィリアムさんが、すぐさま駆けつけてくれた。
「聖武器の大技はかなり魔力を使いますからね。ノアさんは魔力量が多い方ですし、気を失わなくて良かったですね」
ウィリアムさんがのんびりとそんなことを口ずさんだ。
「とりあえず、魔力回復ポーションでも飲んどくか?」
グラントさんは、どこからか魔力回復ポーションを取り出して、渡してくれた。
俺はお礼を言って、一気にグビグビッとポーションを飲み干した。
「ぷはぁ! でも、これで隣町に行けそうで良かったですね!」
「「……」」
俺がニカッと笑って言うと、なぜか一瞬だけ沈黙が流れた。
「……確か、隣町までは何ヶ所か土砂崩れが起きていたのでは?」
「え゛っ!?」
ウィリアムさんに言われて、チラリと村人たちの方を確認してみると、めちゃくちゃ期待したようなキラキラした瞳で見られていた……!
これって、隣町と道が開通するまでやった方がいいってことだよね……?
「ウィリアムさんも、きっとガンちゃんで大技撃てますよね!?」
俺はふとある可能性に気づいて、ウィリアムさんの方を見上げた。
「可能ではありますが、ダメですよ。ミセリアに怒られてしまいます。大丈夫。重たいガラガルディアを運ぶくらいはできますよ」
「そんなぁーーーっ!!」
ウィリアムさんにすげなく断られて、俺は頭を抱えた。
「ノア、決して無理はするなよ?」
グラントさんがグッと俺の両肩を掴むと、真剣な目で俺の目を覗き込んできた。
その瞳からは、真面目に俺のことを心配してくれている気持ちが伝わってきた。
でも、俺の背後からも、村人たちの期待の視線が、突き刺さるほどに感じられた。
ガンちゃんを扱えるのは俺だけだし、ここで俺がやらなかったら、村人たちはかなりの時間をかけて土砂の撤去作業をしなきゃいけないから、村の復興作業は遅れるだろうし、物資不足も悪化するだろう。
それに、困ってる人たちを見捨てるなんて、慰問に来た意味がないじゃないか!
何より、今日は慰問最終日で、明日は特別休暇をいただいてるし……!
「もう少し、頑張ります……!」
俺はいろいろ考え込んだ後、腹を括った。
明日は絶対に動かない、いや、おそらく物理的に動けなくなるだろう……
「「「「「「「やったーーー!!」」」」」」」
『いやっほぉーーー!!!』
後ろで村人たちの歓声があがった。
脳内でも、久々の活躍に湧いているおっさん臭い声が響いていた。
***
「……それでノアは、隣町まで行ったの?」
リリアンが淡いラベンダー色の瞳を丸くして、呆れたように俺を見下ろした。
ここは聖鳳教会エルツ支部にある休憩室だ。
俺は長椅子に寝そべっていた。もう全身クタクタすぎて、指一本動かすのもキツかった。
「……うん……」
隣町までは、さらに三ヶ所ほど道が土砂で埋まっていた。
魔力回復ポーションでドーピングしながら、俺はガンちゃんで溜まっていた土砂を吹き飛ばしていった。
全部の土砂を取り除けたわけではないけど、人と馬車が通れるだけの道幅は確保できたし、ここから先はエルツ村の人たちと隣町の人たちが協力して、少しずつ道を整えていくらしい。
いきなり慣れない大技を同じ日に何発も撃てば、そりゃあ、魔力も体力も限界になる。
帰りはさすがに護衛の聖騎士におんぶしてもらって、俺はエルツ村まで戻って来た。
「……明日は一日中休むんだ……!」
「そうね、ノアは頑張ったものね」
あまりにも疲れて弱音を吐くと、リリアンがそっと頭を撫でてくれた。軽く触れるかどうかぐらいの力加減だったけど、なんだかとても心地良く感じた。
……俺、頑張って良かったかも。
それに、中途半端に諦めて隣町までの道を開通させてなかったら、それはそれできっと心残りができてたかもしれない。
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