冒険者を辞めたら天職でした 〜パーティーを追放された凄腕治癒師は、大聖者と崇められる〜

拝詩ルルー

文字の大きさ
8 / 44
第一章 冒険者から神官へ

sideアイアン・ケルベロス(ローラ視点)

しおりを挟む
 あたしはローラ。
 グリーンフィスト一の冒険者パーティー「アイアン・ケルベロス」で槍使いをしているわ。

 最近のあたしたちは不調だった。
 そう、サポーター役のノアをアイアン・ケルベロスから追い出してからよ。

 戦闘の連携は上手くいかなくなったし、リーダーのアンガスはいつもイライラしているし、魔術師のコーディも常に疲れた顔をして、以前みたいな集中力も無くなってしまったみたいなの。

 初めは、三人パーティーになってまだ慣れていないからだとか、新人が入ってはすぐに抜けてを繰り返して落ち着かないからだと思ってたの。

 でも、よくよく考えたら、やっぱりノアが原因なんじゃないかって思ったの。


 ノアは、ギルドで紹介された時、亜麻色の髪は艶々と柔らかそうで、緑色の瞳はキラキラしてて、とっても可愛くて、初めは女の子かと思った。
 顔立ちは、カッコいいというよりかは、可愛らしいタイプかな。

 アンガスも、途中までずっと女の子だと思い込んでたみたいだし。

 男の人としては、身長は平均的だし、やや細身。
 いつもニコニコしてて誰にでも優しいし、笑顔が爽やかだから、ギルドの女の子たちには割とモテてたかも。

 なんだか癪だから、本人には教えてあげなかったけど!

 あたしは、冒険者っていう生業をしてることもあるし、やっぱり男は腕っ節が強い方がいいと思ってた。

 ノアは治癒とか雑用ぐらいしかできないし、サポート役だから、あたしの理想の「強い男」じゃない。何よりも、年下って頼りなさそうだし!

 せめて剣とか弓とか、何か武器が扱えればまだ良かったんだろうけど、戦うのが苦手なノアが選んだのは、盾役のタンク。だから余計に「ちょっと惜しい男の子」のイメージだった。

 アンガスに何か言われても、反抗も反論もしないし、魔術師のコーディとつるんで魔術の話ばかりしてて、なんだかなよなよしたイメージがあって、どこかで「ノアはタイプじゃないから」ってよく見ないようにしてたのかも。

 アイアン・ケルベロスで一人だけBランクだし、最近はずっと顔色が悪くて辛そうだったから、もうあたしたちについていくには無理があるんじゃないかって、心配してた。

 だから、ノアのためだと思って、彼をアイアン・ケルベロスから追い出すことに賛成した。


──でも、ノアを追い出して少し経ってから、なんだか急にいろいろ物足りなく感じるようになっていった。


 ノアがタンクを張ってくれてたから、あたしもアンガスも戦闘で落ち着いて立ち回れてたのかなって、今頃になって気づいた。

 ノアがアイアン・ケルベロスの雑用を一手に引き受けてくれてたから、コーディも戦闘に集中できてたんだなって分かった。

 ノアはいつもニコニコ笑ってあたしの話を聞いてくれたし、さりげなくアンガスのお触りから守ってくれたし、あたしが傷ついた時には、すぐに治癒魔術をかけて助けてくれた……

 あたしの方がお姉さんなんだし、戦えるんだし、ノアは弱いから、あたしが守ってあげなくちゃって、ずっと気を張りすぎてたのかも……

 グリーンフィスト領に移ってから、ずっと一緒だったから、あまりにも近すぎて気づかなかったっていうのもあるかも……

 とにかく、ノアのことをちゃんと見てあげられてなかったな、って気づいた。


 でも、ダンジョンの十階層に置いてきちゃったし、もう遅いよね……

 失ってから気づくことってあるんだ、ってしみじみ思った。

 あたし、もしかして本当はずっとノアのことが……?

 全然、理想の「強い男」じゃないのに……?

 このことに気づいた時には、あまりにもいろいろな事が遅すぎて、あたしはすごく後悔した。


 好きと後悔と「もういないんだ」っていう事実で、ずっと胸のあたりがモヤモヤして晴れない日が続いた。


 アンガスはやけに距離が近くてベタベタ触ってこようとしてくるし、コーディは相変わらず何考えてるか分かんないし、ノアみたいにさりげなくアンガスの気を散らして助けてくれる、なんてこともない。

 新人たちもどんどん辞めてっちゃっていつの間にか入れ変わってるから、誰が誰とかもう覚えてらんないし、いろんな事がもうどうでもよかった。


***


「そういえば、ノアのギルドに預けてる金って、俺たちが引き継げるんだよな?」

 ある日、ふと思い出したようにアンガスが言い始めた。

 そういえば、同じパーティーのメンバーが亡くなった時、他に家族とかがいなければ、パーティーメンバーがそのお金を引き継げるんだったよね?

「ああ。そうだな。ノアは孤児だから家族はいないし、ノアが亡くなっていれば、アイアン・ケルベロスに引き継ぐ権利があるな」

 コーディが冷静に相槌を打ってる。

「もう野垂れ死んでんじゃねぇのか?」

 アンガスが面倒くさそうに言い放った。

 コーディはその後、アンガスに「お前、行ってこい」って言われて、ギルドに手続きに向かってた。


 あたしは、アンガスとコーディの「ノアが死んでる」って言葉に、頭の中が一瞬真っ白になるぐらいショックを受けた。
 それから、胸のあたりがやけにズキズキと痛んだ。

 ノアが死んでるって、認めたくなかったんだと思う。


 その後もいろいろ考えて、結局、「もうノアはいないけど、せめて最後に何か弔いができれば、何か思い出にできれば」と思って、ギルドに手続きに行ったコーディに確認してみた。

「ねぇ。ノアのお金どうだった?」

 ギルドから出て来たコーディは、やけに顔色が悪かった。

「それが……俺たちには権利が無いらしい」
「えっ!? どうして!?」

 嘘でしょ!? あたしたち、三年も一緒にパーティーを組んでいたのに!? どういうこと!?

「ノアが生き残ってたみたいなんだ。王都の方で、アイアン・ケルベロスからの脱退手続きをしたらしい。だからもう、俺たちはノアの預金を引き継げないんだ」
「王都で……そっか……」

 お金を引き継げないって聞いた時はすごくびっくりしたけど、ノアが生きてるって聞いて、なんだかすごくホッとした。

——王都に行けば、ノアに会える。そしたら、今のあたしのモヤモヤした想いもスッキリするかも。それに、次にノアに会ったら、ちゃんと……

 その後も「アンガスにどう説明すれば……」とコーディがブツブツ言って悩んでたけど、あたしの役割じゃないから、口を出すのは止めておいた。アンガスって怒るとすごく怖いし。


 その頃からだった。
 ギルドに行くと、みんなから遠巻きにされるようになったのは。

 以前は普通に挨拶していた人たちも、よくおしゃべりしてた子たちも、あたしがギルドに顔を出すと、顔色を変えて避けるようになった。

 最近は、聞くに堪えないあたしたちの変な噂ばかり耳にするし、ギルドの居心地がすごく悪くなった。

 ギルドのことはコーディに任せて、あたしはギルドに近づかないようになっていった。


***


 ある日、アンガスに街の酒場に連れて行かれた。もちろん、コーディも一緒。

「そろそろ、ここいらで一つ、デカい仕事をしようぜ」

 アンガスがバンッと酒場のテーブルに叩きつけたのは、Aランクの依頼票だった。
 アイアン・ケルベロスなら受けられる依頼ね。

 討伐対象はBランクのブラックホーンディア。今までも何度か討伐してきたし、大丈夫でしょ。
 
 場所はウルフィアだから、グリーンフィストと王都のちょうど真ん中ぐらい……これなら、この依頼をこなした後は、王都に行ってノアに会えるかもしれない!

「いいじゃない、やりましょう!」

 もちろん、あたしは即決した。

 あたしは早くも浮き足立っていた。
 王都に行けば、ノアに会える!

 それに、またノアをアイアン・ケルベロスに誘えば、元のようなあたしたちに戻れるかも!
 あたしたちにはやっぱりノアが必要なのよ!

——この時は、そんな淡い期待を抱いていた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます

里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。 だが実は、誰にも言えない理由があり…。 ※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。 全28話で完結。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

冤罪で追放された令嬢〜周囲の人間達は追放した大国に激怒しました〜

影茸
恋愛
王国アレスターレが強国となった立役者とされる公爵令嬢マーセリア・ラスレリア。 けれどもマーセリアはその知名度を危険視され、国王に冤罪をかけられ王国から追放されることになってしまう。 そしてアレスターレを強国にするため、必死に動き回っていたマーセリアは休暇気分で抵抗せず王国を去る。 ーーー だが、マーセリアの追放を周囲の人間は許さなかった。 ※一人称ですが、視点はころころ変わる予定です。視点が変わる時には題名にその人物の名前を書かせていただきます。

散々利用されてから勇者パーティーを追い出された…が、元勇者パーティーは僕の本当の能力を知らない。

アノマロカリス
ファンタジー
僕こと…ディスト・ランゼウスは、経験値を倍増させてパーティーの成長を急成長させるスキルを持っていた。 それにあやかった剣士ディランは、僕と共にパーティーを集めて成長して行き…数々の魔王軍の配下を討伐して行き、なんと勇者の称号を得る事になった。 するとディランは、勇者の称号を得てからというもの…態度が横柄になり、更にはパーティーメンバー達も調子付いて行った。 それからと言うもの、調子付いた勇者ディランとパーティーメンバー達は、レベルの上がらないサポート役の僕を邪険にし始めていき… 遂には、役立たずは不要と言って僕を追い出したのだった。 ……とまぁ、ここまでは良くある話。 僕が抜けた勇者ディランとパーティーメンバー達は、その後も活躍し続けていき… 遂には、大魔王ドゥルガディスが収める魔大陸を攻略すると言う話になっていた。 「おやおや…もう魔大陸に上陸すると言う話になったのか、ならば…そろそろ僕の本来のスキルを発動するとしますか!」 それから数日後に、ディランとパーティーメンバー達が魔大陸に侵攻し始めたという話を聞いた。 なので、それと同時に…僕の本来のスキルを発動すると…? 2月11日にHOTランキング男性向けで1位になりました。 皆様お陰です、有り難う御座います。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。 友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。 マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に…… そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり…… 武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~

ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。 そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。 シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。 ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。 それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。 それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。 なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた―― ☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆ ☆全文字はだいたい14万文字になっています☆ ☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

処理中です...