星を継ぐ少年 ~祈りを受け継ぎし救世主、星命創造の力で世界を変え、星の危機に挑む~

cocososho

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飛躍篇

第二十四話:帰還と新たな礎

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『アステリア』が誕生してから、数ヶ月が過ぎた。
丘を越えた彼らの目の前に、信じられない光景が広がっていた。

「うそ…! あれが…アステリア…? ただの荒野だったのに、本物の村になってる…!」

エリアナが、驚きに目を丸くする。
そこは、もはやただの荒野ではなかった。堅牢な木の防護柵が村を囲み、その中には複数の長屋や工房が整然と立ち並び、畑からは緑の芽が力強く伸びている。出発の日に見た、か細い希望の光景は、今や確かな生活の営みへと姿を変えていた。

レンもまた、その発展速度に目を見張る。
「…ほう。見事なものですね。これだけの規模の柵と建物を、この短期間で…。合理的で、無駄がない」

ルシアンは、ただ一言、感嘆の声を漏らした。
「みんな…すごいな…」
彼の肩からネロがひらりと飛び降り、新しい村の匂いを確かめるように、くんくんと鼻を鳴らした。

監視塔に立っていたリックが、いち早く三人の姿を発見する。「ルシアンたちが帰ってきたぞー!」という彼の声が、村中に響き渡った。
やがて、完成したばかりの巨大な木の門が内側から開かれ、ガルバ、クララ、バルトたち、そして村人全員が、歓喜の表情で駆け寄ってくる。

「おう、ルシアン! お帰り! どうだ、驚いたか? 俺たちも、ただ遊んでたわけじゃねえんだぜ!」
バルトが、自慢げに胸を張る。
「おお…ルシアン様! エリアナ様も! ご無事で…!」
ガルバは、涙ながらにその帰還を喜んだ。

しかし、村人たちの歓声は、ルシアンとエリアナの隣に立つ、見慣れぬ金髪ショートカットのエルフ――レン――の姿を認めると、次第に戸惑いの囁きへと変わっていった。
その空気を感じ取ったルシアンが、一歩前に出る。
「紹介する。彼女はレン。俺たちの新しい仲間だ」

だが、突然のことに、村人たちの警戒はすぐには解けない。その硬直した空気を、ブレンナの明るい声が打ち破った。
「まあ、なんて綺麗な子! 長旅でお疲れだろう? さあさあ、中に入って! 詳しい話は、ゆっくり休んでからでいいさね!」

ブレンナが機転を利かせて場を和ませたことで、村人たちの顔にも再び笑顔が戻り、一行は温かい歓迎に包まれて、村の中へと招き入れられた。



完成したばかりの、真新しい木の香りがするアステリアの集会所。
その中央に置かれた大きなテーブルを、評議会のメンバーが囲んでいた。ブレンナが淹れた温かいハーブティーの湯気が、再会の喜びと、これからの報告への緊張が入り混じった空気を、わずかに和らげている。

「まずは、俺たちから報告させてもらう」
議長席に着いたルシアンが、静かに切り出した。
「俺とエリアナがルナリア公国へ向かったのは、フィアナさんの助言通り、俺たちの力のことを、もっと知るためだった。特に、エリアナの魔力は、彼女自身も制御できないほど強大で、危険なものだったから」

ルシアンは、隣に座るエリアナへと、誇らしげな視線を送る。
「ルナリアでの修練を経て、エリアナは、もう自分の力を恐れる必要はなくなった。そうだろ?」
「うん…!」
エリアナは、力強く頷いた。

「そして、その修練に力を貸してくれたのが、彼女だ」
ルシアンは、少し緊張した面持ちで皆の輪から一歩下がっていたレンへと、手を差し伸べた。
「彼女は、ルナリアの大賢者様の弟子、レンさん。エリアナの魔法の師であり、これからは、俺たちの新しい仲間になってくれる」
レンは、皆の視線を受け、エルフらしい優雅さで、しかしどこか固い表情のまま、小さく一礼した。

次に、報告の番はブレンナへと移った。彼女は、手元にまとめられた羊皮紙を広げる。
「それじゃあ、次はこっちの話だね。みんな、本当によくやってくれたよ」

「まずは建築。コンラッドさんの指揮で、見ての通り、この集会所と、全員が暮らせる長屋が三棟完成した。防護柵も、村の周囲を完全に囲っている。だけど、用水路や道路といった、生活に不可欠なインフラ整備は、まだ半分も終わっていない」
コンラッドは、腕を組みながら「人がいれば、あと一月もかからんのだがな」と、悔しそうに付け加えた。

「次に鍛冶。バルディンさんの工房からは、改良型のクワや斧が、もう100本以上も生み出されている。おかげで、開墾の速度が段違いになった。でも、この調子で作り続ければ、ギデオンから手に入れた鉄も、そう長くはもたない。いずれは、自分たちで鉱石を採掘しに行く必要がある」
バルディンは、「ふん、ワシの腕を振るうには、上等な鉱石がもっと必要だわい」と、髭をいじりながらぶっきらぼうに答えた。

「農業は、フィアナさんの計画通り、複数の試験農地で、この土地に合う作物の選定を進めている。すでに、いくつかの芋や薬草は、最初の収穫を迎えているよ。ただ、これも、皆が腹一杯食べるための大規模な農地を作るには、まだまだ人手が足りない」
フィアナは、穏やかに、しかし心配そうに微笑んだ。

「そして、経済。クララさんの手腕で、私が提案した給金制度が、もう村の仕組みとして完全に機能している。でも、村の金蔵にあるゴールドは、ルシアンが勝ち取ってきてくれた分だけ。この村が本当に豊かになるには、外の世界と交易をして、自分たちで通貨を稼いでいかないとね」
クララは、「ええ、そのためには、まず売れるだけの特産品を安定して生産する必要がありますわ」と、冷静に分析した。

報告会は、そのまま三人の帰還を祝う宴へと移行した。
長テーブルに並ぶのは、フィアナの畑で採れた芋を使った、ブレンナとクララが腕を振るった熱々のシチューだ。様々な過去を持つ者たちが、獣人語や人間の言葉を交わらせながら、一つのテーブルを囲んで笑い合っている。
「おい、バルディン殿! ドワーフは酒に強いと聞くが、この狼族のワシと勝負といくか!」「ふん、望むところだわい!」
獣人の若者とバルディンが、楽しそうに酒杯を打ち合わせる。

エリアナは、子供たちにせがまれ、修練の成果である「炎の花」を手のひらの上に咲かせてみせた。本物の花のように繊細で、温かい光を放つその魔法に、子供たちから大きな喝采が上がる。その光景を、ルシアンは心から誇らしげに見守っていた。

その宴の片隅で、レンは、真顔のまま、静かに動いていた。
彼女は、テーブルの下で丸くなっているネロの近くに、ごく自然に腰を下ろす。
(可愛い…)
レンは、誰にも気づかれぬよう、ゆっくりとネロの方へとにじり寄った。しかし、ネロは彼女の内に渦巻く、あまりにも強すぎる思念を感じ取り、すいっと身を翻して、テーブルの反対側へと移動してしまう。レンは、無表情のまま、今度はテーブルの反対側へと回り込む。すると、ネロはまた、ひらりと元の場所へ。
(可愛い…)
その、静かすぎる鬼ごっこは、宴の喧騒の中で、誰に気づかれることもなく、延々と繰り返されていた。

宴の喧騒の中、ブレンナがルシアンの隣に座り、静かに告げた。
「みんな、本当に頑張ってくれてる。コンラッドさんも、バルディンさんも、フィアナさんも、クララさんも、全員が、この村のために全力を尽くしてくれてる。報告で言った通り、それぞれの計画には、それぞれの課題がある。だけどね、ルシアン」

彼女は、真剣な目で、我が子を見つめた。

「結局のところ、問題は一つなんだよ。人が…圧倒的に足りないんだ」

村の発展が生んだ、「労働力不足」という、新たな壁だった。
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