炎の魔女は妖精の瞳を持つ男爵に恋をする~愛の囁きは危険な恋の始まり?~

清里優月

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36話 祝福11

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 シエナを腕輪の中に捕らえたティムは、書斎にいるアスター公爵へ報告をする。
「アスター公爵閣下、炎の魔女を捕らえました。全く、教会側は炎の魔女を捕らえるのにアスター公爵閣下のお力を借りるだけ借りて、自分たちの力では魔女ひとり捕らえられないとはね」
 ティムの嫌味に傍にいる神父は項垂れて聞いていた。

「そう言うな。今回は相手が悪かった。塔の頂点に立つ四大魔女のうちのひとり、炎の魔女だ。ティム、良くやった」
 アスター公爵は、配下であるティムを誉めた。ティムは真剣な顔をして、頷いた。
「アスター公爵閣下がお貸しくださったこの腕輪のお陰です。この腕輪はすごいですね」
 冷静を装いながらもティムは興奮を隠しきれない。

「これは過去に捕らえた水の魔女の力や他の魔女たちの力を取り込んだ腕輪だ。水の魔女には逃げられたがな。だが、ラッセル男爵を唆して、炎の魔女の力を弱まらせることに成功した」
 アスター公爵は当時のことを思い出し、悔しそうに語った。その悔しさをバネにシエナという強敵を弱体化させるため、ハリーを唆したのだ。主人の話を聞きながら、ティムは腕輪を光らせると、捕まっていたシエナの姿が現れる。

「ここはどこなの? 腕輪の中から見ていた風景からして、高位貴族のお屋敷ね」
 自分が教会側の魔の手に落ちたことを知りながら、シエナは落ち着いている。アスター公爵はそれに驚きつつ、感心した。
「ほう……。さすが四大魔女のひとりだな。私は現国王の弟でアスター公爵と言う」
 アスター公爵は、シエナに余裕たっぷりに自己紹介までしてみせた。シエナはその名に覚えがあった。

「アスター公爵! 水の魔女ユーリを捕らえた魔法使い!」
 アスター公爵の名を思い出して、驚愕する。それは塔の敵とされている人物だった。アスター公爵はシエナの言葉を聞いて、不愉快そうな顔をした。
「私は魔法使いではない……。人間だ」
 シエナはその強引な論理にはあと呆れて、笑った。

「私と同じ存在ね。元人間でしょう?」
 アスター公爵は、シエナを見下すように嘲笑した。
「はっ! 確かにな。私は元王子だ。お前とは違う」
「いいえ。同じよ。あなたからは高い魔法力を感じるわ。塔の並の魔法使いよりも高い魔力をね。そうね、私たち四大魔女と並ぶくらいの力を感じるわ」
 シエナの言葉に誇りを傷つけられたアスター公爵は反発した。

「お前とは違う。私は王族の血を引く。だが、始祖の王が妖精王の娘ジュリエットを娶ったばかりに、私は先祖返りの力を持ってしまった。その為にかつては暗殺されかかったのだ! 第二王子でありながら、隠されて育たざるを得なかった! 成長して、力を聖女出来るようになったのに、臣籍降下させれたのだ!」
 王族としての矜持が許さないのであろう。シエナに言わせれば、どうでもいい話だ。

「だから私たち魔女や妖精が憎いの?」
 それでシエナたち魔女が狩られているのは大いなる八つ当たりである。シエナは心底呆れていた。
「そうだ……。お前たち塔に住まう魔女やあの世に逃げた妖精たちが憎い。妖精たちは時の狭間に姿を消したが、お前たち魔女や魔法使いはまだ現世に執着している。それが見苦しいのだ」
 アスター公爵の私怨に巻き込まれただけと知り、シエナは憤慨していた。
「今は、シェラード王自ら塔との取引を行っているわ。王国では魔女狩りは禁止されたのよ。まだ魔女狩りを行うなんてどうかしているわ」
 シエナは呆れたと言わんばかりの態度だ。その態度がアスター公爵の怒りを買う。

「炎の魔女、この手で殺してやる。光栄に思うがいい。これは水の魔女から奪った力だ。あの腕輪に宿った力はほんの一部に過ぎない。そして、炎の魔女、私はラッセル男爵を唆して、お前の力を弱体化させることに成功した」
 アスター公爵の手から凄まじい水の力が出て、竜巻上になり、シエナを襲った。シエナは炎を操り、水を消した。詠唱しているので、力の差はないが、アスター公爵の操る水の力が上回っていた。

「きゃあ! 助けて! ハリー!」
 シエナは水に襲われて、思わずハリーの名を呼ぶ。
「無駄だ。あの青年は『妖精の瞳』を失った。お前に偽りの愛を告げたのだ。お前は捨てられたのだ」
「……嘘よ。信じないわ」
 シエナの金色の瞳は弱弱しかった。ハリーに嘘をつかれたことが、シエナの心を弱らせていたのだ。シエナははっとする。目の前のアスター公爵の銀色の瞳が輝く。シエナはその瞳に吸い寄せられていた。銀色が暗くなり、シエナの金色の瞳が焦点を失う。
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