炎の魔女は妖精の瞳を持つ男爵に恋をする~愛の囁きは危険な恋の始まり?~

清里優月

文字の大きさ
39 / 42

38話 祝福13

しおりを挟む
 一方、シエナは炎の力を放出しすぎて、膝をついた。魔道具も魔力を使い果たした。
「はあ……。水の力が強すぎて、もう駄目……」
 シエナは全てを諦めて、観念していた。

「水の力よ! 竜になれ!」
 アスター公爵の命令に水が竜の形を取り、シエナへと襲い掛かった。
「おっと! そうはいかないぞ!」
 頭上からの声にシエナはのろのろと顔を上げる。レイモンドはシエナの前に箒で飛びながら出ると、風の結界を張った。

「レイモンド?」
 シエナは目の前にいるレイモンドに驚く。
「行け! ハリー!」
 ハリーは、『妖精の瞳』の力で風の精霊の補助で着地した。

「ハリー! どうしてここに!」
 シエナはハリーが現れて、混乱した。
「シエナ、済まなかった。私は一度間違えた。だけど、君を失って始めて、君を愛しているとわかったんだ」
 ハリーの愛の言葉にシエナの金の瞳は潤んだ。
 
「ハリー……。だからって、こんな戦いの中にやってくるなんて、馬鹿よ」
 シエナの言葉にハリーは自嘲気味に笑った。
「そうだな。馬鹿かもしれない。だけど、君を失う前に想いを告げたかったんだ」
「ハリー」
「シエナ……。君を愛している」
 シエナは泣き出して、ハリーに抱き着いた。ハリーはシエナの唇に優しく唇を重ねる。その瞬間、光が二人を包み込んだ。シエナははっとする。力が身体に漲っているのだ。
「力が戻っている?」
 シエナは手をぐっと握りしめる。

 二人が抱き着く所を見たレイモンドは、叫んだ。
「おい! いちゃいちゃするな! 結界が持つのは後少しだぞ!」
 シエナは手でくいと涙を拭うと声を上げた。
「わかったわ! ハリー、炎の精霊を呼んで! 『妖精の瞳』を持つ者は、完全な力を手にした時、妖精に誰よりも愛されている存在になれるのよ!」
「わかった」
 ハリーは瞳を閉じて、心の中で炎の精霊に念ずる。シエナとハリーの周囲に炎の精霊が集まってくる。

「炎の精霊よ。力を貸して……」
 シエナは手を前に出し、魔法の呪文を詠唱する。
「無駄だ! 水の竜!」
 アスター公爵は手を前に出した。水の竜が再び、形成されてシエナ達を襲った。

「火の竜! いっけえ~!」
 シエナの両手から炎の竜が生まれて、水の竜を飲みこみ、屋敷に火が広がる。アスター公爵は火の竜に呑まれていくが、水がアスター公爵を庇った。

「嘘! やっぱりおかしいわ! ユーリの力だけじゃない!」
 シエナが悲鳴を上げる。このままでは、シエナやハリーたちが危ない。シエナは冷静になれと言い聞かせ、必死に考えた。そう言えば、アヴァが水の魔女ユーリや他の魔女や魔法使いの力も吸い取ったと言っていたとシエナは思い至った。シエナの頭がくるくると思考し始める。

(あの腕輪にはユーリや他の魔女や魔法使いたちの吸い取られた魔法が入っているんだわ。なら腕輪を破壊すれば……)
 シエナは腕を構えて、光の魔法陣を展開させる。魔法陣から魔法の箒が現れた。

「ハリー、後ろに乗って。アスター公爵の腕輪を狙うから精霊たちに指示して」
 ハリーが慌ててシエナの魔法の箒に跨る。シエナは魔法の箒を浮上させた。ふわりと浮き上がった魔法の箒はアスター公爵に接近していく。アスター公爵はまだ倒れたままだ。

「風の精霊よ、腕輪を狙って!」
 シエナの指示に竜巻が起こり、アスター公爵の右腕にはめられた腕輪を狙う。だが、身体を起こしたアスター公爵が水の結界を張った。

「風の精霊よ! 結界を打ち破ってくれ!」
 ハリーの願いに風の上級精霊たちが集まってきて、竜巻が再び力を増す。風が結界を打ち破った。シエナは炎の力で短剣を作り出した。

「ハリー! 剣をアスター公爵に投げつけて!」
 ハリーは強く頷くと、短剣を取り、アスター公爵の腕輪を狙い投げつけた。風の精霊たちが風を起こす。風が強く吹き、短剣がアスター公爵の腕輪に命中した。腕輪が粉々に打ち砕かれる。そして、腕輪からどす黒い思念が発生して、アスター公爵を飲みこんでいく。

「アスター公爵閣下!」
「まさか!」
 ティムと神父は呆然と立ち尽くしていた。

「はあ……。何とか勝てた」
 全身の力が抜けたシエナをハリーが支えた。二人は肩を寄せ合った。ハリーはアスター公爵を凝視する。その時、空飛ぶ箒が降りてきた。レイモンドとラブだ。

「あれは……」
 呆気に取られる一同へシエナは説明する。
「腕輪に飲み込まれて殺された魔女や魔法使いたちの思念よ。アスター公爵はもう生きてないわ。魔法を間違った方向へ使ったから。その反動でああなったのよ。魔法は善きものであるべきなのに……」
 シエナは泣いていた。殺された魔女や魔法使いの残された思念の残滓が微かに聞こえたのだ。無念の死を遂げた仲間たちを想い、シエナは涙した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

虚弱姫はコワモテ将軍の筋肉に触りたい

隙間ちほ
恋愛
◼︎無骨な英雄×病弱な筋肉フェチ姫 ◼︎辺境伯の末娘エルナは、領軍の英雄マテウスとの結婚が決まった。政略結婚――のはずが、実は姫は将軍の熱烈なファン。姫がノリノリで嫁ぐ一方、当のマテウスは「か弱い姫君に嫌われている」と思い込み、距離を取ってしまう……。 ◼︎筋肉と鼻血とすれ違いラブコメ。 ◼︎超高速展開、サクッと読めます。

むにゃむにゃしてたら私にだけ冷たい幼馴染と結婚してました~お飾り妻のはずですが溺愛しすぎじゃないですか⁉~

景華
恋愛
「シリウス・カルバン……むにゃむにゃ……私と結婚、してぇ……むにゃむにゃ」 「……は?」 そんな寝言のせいで、すれ違っていた二人が結婚することに!? 精霊が作りし国ローザニア王国。 セレンシア・ピエラ伯爵令嬢には、国家機密扱いとなるほどの秘密があった。 【寝言の強制実行】。 彼女の寝言で発せられた言葉は絶対だ。 精霊の加護を持つ王太子ですらパシリに使ってしまうほどの強制力。 そしてそんな【寝言の強制実行】のせいで結婚してしまった相手は、彼女の幼馴染で公爵令息にして副騎士団長のシリウス・カルバン。 セレンシアを元々愛してしまったがゆえに彼女の前でだけクールに装ってしまうようになっていたシリウスは、この結婚を機に自分の本当の思いを素直に出していくことを決意し自分の思うがままに溺愛しはじめるが、セレンシアはそれを寝言のせいでおかしくなっているのだと勘違いをしたまま。 それどころか、自分の寝言のせいで結婚してしまっては申し訳ないからと、3年間白い結婚をして離縁しようとまで言い出す始末。 自分の思いを信じてもらえないシリウスは、彼女の【寝言の強制実行】の力を消し去るため、どこかにいるであろう魔法使いを探し出す──!! 大人になるにつれて離れてしまった心と身体の距離が少しずつ縮まって、絡まった糸が解けていく。 すれ違っていた二人の両片思い勘違い恋愛ファンタジー!!

愛しい人、あなたは王女様と幸せになってください

無憂
恋愛
クロエの婚約者は銀の髪の美貌の騎士リュシアン。彼はレティシア王女とは幼馴染で、今は護衛騎士だ。二人は愛し合い、クロエは二人を引き裂くお邪魔虫だと噂されている。王女のそばを離れないリュシアンとは、ここ数年、ろくな会話もない。愛されない日々に疲れたクロエは、婚約を破棄することを決意し、リュシアンに通告したのだが――

元恋人が届けた、断りたい縁談

待鳥園子
恋愛
シュトルム辺境伯の末娘ソフィに隣国の帝国第二皇子から届けられた『縁談』の使者は、なんと元恋人のジョサイアだった。 手紙ひとつで別れることになったソフィは、素直になれずジョサイアから逃げ回る。 「私に届けなければ、彼は帝国に帰ることが出来ない」 そう思いようやく書状を受け取ろうと決意したソフィに、ジョサイアは何かを言い掛けて!?

私を簡単に捨てられるとでも?―君が望んでも、離さない―

喜雨と悲雨
恋愛
私の名前はミラン。街でしがない薬師をしている。 そして恋人は、王宮騎士団長のルイスだった。 二年前、彼は魔物討伐に向けて遠征に出発。 最初は手紙も返ってきていたのに、 いつからか音信不通に。 あんなにうっとうしいほど構ってきた男が―― なぜ突然、私を無視するの? 不安を抱えながらも待ち続けた私の前に、 突然ルイスが帰還した。 ボロボロの身体。 そして隣には――見知らぬ女。 勝ち誇ったように彼の隣に立つその女を見て、 私の中で何かが壊れた。 混乱、絶望、そして……再起。 すがりつく女は、みっともないだけ。 私は、潔く身を引くと決めた――つもりだったのに。 「私を簡単に捨てられるとでも? ――君が望んでも、離さない」 呪いを自ら解き放ち、 彼は再び、執着の目で私を見つめてきた。 すれ違い、誤解、呪い、執着、 そして狂おしいほどの愛―― 二人の恋のゆくえは、誰にもわからない。 過去に書いた作品を修正しました。再投稿です。

届かぬ温もり

HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった····· ◆◇◆◇◆◇◆ 読んでくださり感謝いたします。 すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。 ゆっくり更新していきます。 誤字脱字も見つけ次第直していきます。 よろしくお願いします。

令嬢が眠る時

五蕾 明日花
恋愛
愛する婚約者と仲睦まじい元平民の男爵令嬢に嫉妬し、嫌がらせを続けた挙句に処刑された我儘で傲慢な公爵令嬢コーネリア。悪魔の力を借りて人生を繰り返していくうちに性格や言動を改め、〝完璧な令嬢〟と評されるようになっていく。しかしそうなっても婚約者は、男爵令嬢を選んでしまう運命は変えられない。濡れ衣を着せられ、結局はありもしない罪で処刑されてしまう。心が折れてしまいせめて処刑されてしまう運命だけでも変えたいコーネリアに、悪魔は〝仮死状態になり、死んだと誤解させた後でこっそり逃げ出してしまえばいい〟と提案する。 仮死状態(意識のみ有り)での性描写有り、嘔吐描写も一瞬 完結済。6話+エピローグ。♡マーク付きの話に性描写有り。 Nolaノベルにも同名義で投稿。

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

処理中です...