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18話 レヴィの怒り2
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男たちが逃げ惑う中、レヴィは尚も炎の力を放出する。
紅の炎がレヴィの手から発せられた。
男たちに炎が命中する。
「よくも……エリンに……」
レヴィは、怒りの感情に吞まれている。反対に先ほどまで泣いていたエリンが冷静になっていた。暴走しているレヴィを止めねばと叫ぶ。
「レヴィ様! 止めて! 私は大丈夫だから!」
レヴィはエリンの呼びかけに我に返り、炎を操る手を止める。
「エリン?」
「レヴィ様」
紅の瞳がエリンの青の瞳を見て、レヴィの感情はまるで湖の水面に波紋が広がるように揺れて、正気に戻った。レヴィは、はっとする。エリンは先ほどまで男たちに襲われていたのだ。なのに今、自分を気遣ってくれている。
「エリン。大丈夫か?」
レヴィは手早くエリンのロープを解くと、破けた服を隠すようにスーツの上着をエリンにかける。
炎は人の身体を温める優しい一面もあるが、すべてを燃やし尽くす破壊の一面もある。過去に於ける炎の精霊王の愛し子とは、その両面を合わせ持つが苛烈な気性の者が多かった。レヴィは、炎の精霊王の愛し子にしては、気性が水のように冷たいとエリンは思っていたが、違ったようだ。まるで自分を心配して、力が暴走したみたいだと思って、エリンは首を振った。
(ううん……。迷惑だと言われたのに、自惚れだわ)
ならば、何故ここまで来たのだろうかと疑問に思う。
「レヴィ様」
レヴィに問いかけてみようと思案する。
「何だ?」
レヴィの紅の瞳がエリンを捉える。
現金なもので先ほどまで絶望に囚われていたのにエリンの心臓が早鐘を打った。頬を染めたエリンは、それを誤魔化すようにレヴィに問いかける。
「な、なんでここがわかったのですか?」
「ああ……。緑の精霊たちが俺の許にきて……」
レヴィが口を開きかけたが、人の気配に気づいた。
気配を消した人間の存在に。
レヴィは、炎の精霊王の愛し子であると共に王を守る近衛騎士団の一員だ。
幼いころから父親に剣を教えられ、鍛えてきた。
その騎士としての嗅覚が働く。
レヴィはエリンをすっと腕でエリンを後ろに庇うように前に出る。戸惑うエリンに心配ないと視線をやる。
「誰だ!」
レヴィの怒鳴り声に右に傷跡のある男が現れる。
「ほお……。俺の気配を察するとはな……」
男は短剣を手に持つとレヴィに襲いかかってきた。レヴィは、腰に備えていた剣を取ると軽くいなすように相手をする。まるで剣を教える子供と大人のようだ。レヴィの剣が流れるような動きで男の短剣を叩き、男の手から短剣が落ちた。
エリンはレヴィの流麗な剣裁きに見惚れていて、横から別の男が近づいてきたことに気づかなかった。後ろから首をぐいっと引っ張られて気づいた。
「炎の愛し子! 水の愛し子がどうなってもいいのか!」
短剣の冷たい感触がエリンの首に近づく。必死に抵抗するが遅かった。
「エリン!」
「レヴィ様……。ごめんなさい、逃げて!」
エリンは、魔封じの腕輪のせいで精霊が呼べなければ魔法も使えなかった。
エリンの必死の呼びかけに被せるように男が声を出す。
「剣を捨てろ」
レヴィは剣を捨てるように投げる。
「エリンを解放しろ」
レヴィの声に男がせせら笑った。
「嫌だね。折角の水の精霊の愛し子を手に入れたんだ。それに随分とこの愛し子の身体は魅力的だった。身体も、な……。そんな女を手放すわけがないだろう」
男は噓をついていた。
だけど。
レヴィがそんな事実を知るわけがない。
「エリンを傷つけたのか?」
レヴィの顔は怒りに満ちていた。身体から紅の炎の力が今にも暴発しそうだ。
「止めろ!」
右に傷跡のある男が制止しようとするが、全く気付いていなかった。
「ああ……。愛し子の身体の締まり具合と言ったら……」
レヴィの炎が男に飛び、男の身体は炎に包まれてあっという間に全身火だるまとなる。エリンは、レヴィの凄まじい炎の力に驚愕して、足を震わせた。
「レヴィ様!」
レヴィ自身も炎の力に呑まれていて、エリンの声も届かない。
紅の炎がレヴィの手から発せられた。
男たちに炎が命中する。
「よくも……エリンに……」
レヴィは、怒りの感情に吞まれている。反対に先ほどまで泣いていたエリンが冷静になっていた。暴走しているレヴィを止めねばと叫ぶ。
「レヴィ様! 止めて! 私は大丈夫だから!」
レヴィはエリンの呼びかけに我に返り、炎を操る手を止める。
「エリン?」
「レヴィ様」
紅の瞳がエリンの青の瞳を見て、レヴィの感情はまるで湖の水面に波紋が広がるように揺れて、正気に戻った。レヴィは、はっとする。エリンは先ほどまで男たちに襲われていたのだ。なのに今、自分を気遣ってくれている。
「エリン。大丈夫か?」
レヴィは手早くエリンのロープを解くと、破けた服を隠すようにスーツの上着をエリンにかける。
炎は人の身体を温める優しい一面もあるが、すべてを燃やし尽くす破壊の一面もある。過去に於ける炎の精霊王の愛し子とは、その両面を合わせ持つが苛烈な気性の者が多かった。レヴィは、炎の精霊王の愛し子にしては、気性が水のように冷たいとエリンは思っていたが、違ったようだ。まるで自分を心配して、力が暴走したみたいだと思って、エリンは首を振った。
(ううん……。迷惑だと言われたのに、自惚れだわ)
ならば、何故ここまで来たのだろうかと疑問に思う。
「レヴィ様」
レヴィに問いかけてみようと思案する。
「何だ?」
レヴィの紅の瞳がエリンを捉える。
現金なもので先ほどまで絶望に囚われていたのにエリンの心臓が早鐘を打った。頬を染めたエリンは、それを誤魔化すようにレヴィに問いかける。
「な、なんでここがわかったのですか?」
「ああ……。緑の精霊たちが俺の許にきて……」
レヴィが口を開きかけたが、人の気配に気づいた。
気配を消した人間の存在に。
レヴィは、炎の精霊王の愛し子であると共に王を守る近衛騎士団の一員だ。
幼いころから父親に剣を教えられ、鍛えてきた。
その騎士としての嗅覚が働く。
レヴィはエリンをすっと腕でエリンを後ろに庇うように前に出る。戸惑うエリンに心配ないと視線をやる。
「誰だ!」
レヴィの怒鳴り声に右に傷跡のある男が現れる。
「ほお……。俺の気配を察するとはな……」
男は短剣を手に持つとレヴィに襲いかかってきた。レヴィは、腰に備えていた剣を取ると軽くいなすように相手をする。まるで剣を教える子供と大人のようだ。レヴィの剣が流れるような動きで男の短剣を叩き、男の手から短剣が落ちた。
エリンはレヴィの流麗な剣裁きに見惚れていて、横から別の男が近づいてきたことに気づかなかった。後ろから首をぐいっと引っ張られて気づいた。
「炎の愛し子! 水の愛し子がどうなってもいいのか!」
短剣の冷たい感触がエリンの首に近づく。必死に抵抗するが遅かった。
「エリン!」
「レヴィ様……。ごめんなさい、逃げて!」
エリンは、魔封じの腕輪のせいで精霊が呼べなければ魔法も使えなかった。
エリンの必死の呼びかけに被せるように男が声を出す。
「剣を捨てろ」
レヴィは剣を捨てるように投げる。
「エリンを解放しろ」
レヴィの声に男がせせら笑った。
「嫌だね。折角の水の精霊の愛し子を手に入れたんだ。それに随分とこの愛し子の身体は魅力的だった。身体も、な……。そんな女を手放すわけがないだろう」
男は噓をついていた。
だけど。
レヴィがそんな事実を知るわけがない。
「エリンを傷つけたのか?」
レヴィの顔は怒りに満ちていた。身体から紅の炎の力が今にも暴発しそうだ。
「止めろ!」
右に傷跡のある男が制止しようとするが、全く気付いていなかった。
「ああ……。愛し子の身体の締まり具合と言ったら……」
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