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カタクリ
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「君は楽しそうだね」
生徒会長の席に近い席だったので、封蝋印を待っている人だろうか。声を向けられているのが自分な気がして目線をそちらに向けると、カリーナの淡いグレーの瞳に、学園で噂の優等生の彼が映った。
彼から発せられたと思われる声を思い起こしてみる。
楽しそうだね。と言っていた気がするが、なんと答えるべきか迷う。
楽しいかと言われたら楽しい訳ではないし、嫌々やっている訳でもない。
やらなければいけないから、やっていたのだけど…と首を傾げる。
近くで聞く声は思っていた以上に心地よいものだった。
神様ありがとうございます。と先ずは、心の中で神に感謝していた。
どう返事をすればいいかとか、そんな細かいことを考えることは放棄していた。
こんなに近くで顔を見る日がきたことに感謝をし始め、彼の両親にもこの世に彼を存在させてくれたことに感謝しているところだった。
かろうじて瞬きはしていながらも、一つ席を挟んだテーブルの角にいる彼を、首を傾げたまま、動くことなく視界に入れていた。
心のどこかで、私に話しかけている訳がないと考えていたのかもしれない。
「隣に座っても?」
アルベルトは声をかける前も、意外と長い間そこにいたのだが、カリーナは気付いていないようだった。
返事を待たずに椅子を引いて腰をかけたのは確信犯だった。元からこの席に座るつもりでいたし、もちろん彼女の了承なんて最初から必要なかったのだが、もしかしたら彼女の顔を堂々と見る許可をもらいたかったのかもしれない。それも形だけのものだったのだが。
「どうぞ、ごゆっくりなさってください」
カリーナの色づいた唇は綻ぶように開らき、少し目を細めて笑みを作れば、口元に笑窪が咲いた。
席に座りたいから声をかけたのかと1人納得すると、僥倖の極みとばかりに溢れそうになる喜びを勿体無いとばかりに必死に閉じ込めていた。
彼女はより一層楽しそうに躍る筆を取って作業を再開する。隣には彼がいると思うと、この作業は一瞬で片付いてしまいそうだと思った。
確かに今は楽しい。と、彼にかけられた言葉を思い出していた。
そんな彼女の姿を、それはそれは甘い目で見つめているアルベルトの溢れでている気持ちに、周囲は目敏く気付いていた。
アルベルトが気づいていないわけもなく、何も気づいていないのは、1人で恋が完結してしまっている彼女のみであっただろう。
人が恋に落ちる瞬間は思いの外分かりやすいのかもしれない。
「アルベルト、終わったよ」
アルベルトとは同じクラスである生徒会長が声をかけると、アルベルトは仕方なしといった風で一度目線をやると席をたった。
呆れたような、でもどこか興味を隠せない視線をアルベルトは無視して受け取ると、当然のように先程の席に座り直していた。
「終わったかい?」
暫くして、彼女が最後の名前に線を引いたのを確認したアルベルトだったが、声をかけると彼女が驚いた顔をしたのはさすがに予想外だった。
カリーナはまるで、存在を忘れていたかのようにびくりと体をのけぞらせて、ガタッと椅子の音を鳴らせた。
大きな目がこぼれ落ちてしまうんじゃないかと心配になる程だった。
「驚かせてごめんね。んー今ちょうど手が空いたみたいだから早く確認してもらうといいよ」
軽い口調でそう言われて、彼が視線を投げた方を見ると、確かに生徒会長の手は止まっていた。
カリーナの心臓は爆発してしまったように暴れ回っている最中だった。
生徒会長がアルベルトの名前を呼んだ時、アルベルトが席を離れた事は気付いていた。
もうこの幸せは終わってしまうのかと寂しく感じていた
し、そのすぐ後に同じ席に座る人がいたが、次の人が同じように待機しているのだろうと、作業に集中していたのだ。
「ありがとうございます」
どうにかして声を出したが、椅子を鳴らす程驚いてしまった姿を周りに見られてしまったことが恥ずかしくて、カリーナは周囲から向けられた視線から避けるように生徒会長の元へ向かった。
生徒会長の席に近い席だったので、封蝋印を待っている人だろうか。声を向けられているのが自分な気がして目線をそちらに向けると、カリーナの淡いグレーの瞳に、学園で噂の優等生の彼が映った。
彼から発せられたと思われる声を思い起こしてみる。
楽しそうだね。と言っていた気がするが、なんと答えるべきか迷う。
楽しいかと言われたら楽しい訳ではないし、嫌々やっている訳でもない。
やらなければいけないから、やっていたのだけど…と首を傾げる。
近くで聞く声は思っていた以上に心地よいものだった。
神様ありがとうございます。と先ずは、心の中で神に感謝していた。
どう返事をすればいいかとか、そんな細かいことを考えることは放棄していた。
こんなに近くで顔を見る日がきたことに感謝をし始め、彼の両親にもこの世に彼を存在させてくれたことに感謝しているところだった。
かろうじて瞬きはしていながらも、一つ席を挟んだテーブルの角にいる彼を、首を傾げたまま、動くことなく視界に入れていた。
心のどこかで、私に話しかけている訳がないと考えていたのかもしれない。
「隣に座っても?」
アルベルトは声をかける前も、意外と長い間そこにいたのだが、カリーナは気付いていないようだった。
返事を待たずに椅子を引いて腰をかけたのは確信犯だった。元からこの席に座るつもりでいたし、もちろん彼女の了承なんて最初から必要なかったのだが、もしかしたら彼女の顔を堂々と見る許可をもらいたかったのかもしれない。それも形だけのものだったのだが。
「どうぞ、ごゆっくりなさってください」
カリーナの色づいた唇は綻ぶように開らき、少し目を細めて笑みを作れば、口元に笑窪が咲いた。
席に座りたいから声をかけたのかと1人納得すると、僥倖の極みとばかりに溢れそうになる喜びを勿体無いとばかりに必死に閉じ込めていた。
彼女はより一層楽しそうに躍る筆を取って作業を再開する。隣には彼がいると思うと、この作業は一瞬で片付いてしまいそうだと思った。
確かに今は楽しい。と、彼にかけられた言葉を思い出していた。
そんな彼女の姿を、それはそれは甘い目で見つめているアルベルトの溢れでている気持ちに、周囲は目敏く気付いていた。
アルベルトが気づいていないわけもなく、何も気づいていないのは、1人で恋が完結してしまっている彼女のみであっただろう。
人が恋に落ちる瞬間は思いの外分かりやすいのかもしれない。
「アルベルト、終わったよ」
アルベルトとは同じクラスである生徒会長が声をかけると、アルベルトは仕方なしといった風で一度目線をやると席をたった。
呆れたような、でもどこか興味を隠せない視線をアルベルトは無視して受け取ると、当然のように先程の席に座り直していた。
「終わったかい?」
暫くして、彼女が最後の名前に線を引いたのを確認したアルベルトだったが、声をかけると彼女が驚いた顔をしたのはさすがに予想外だった。
カリーナはまるで、存在を忘れていたかのようにびくりと体をのけぞらせて、ガタッと椅子の音を鳴らせた。
大きな目がこぼれ落ちてしまうんじゃないかと心配になる程だった。
「驚かせてごめんね。んー今ちょうど手が空いたみたいだから早く確認してもらうといいよ」
軽い口調でそう言われて、彼が視線を投げた方を見ると、確かに生徒会長の手は止まっていた。
カリーナの心臓は爆発してしまったように暴れ回っている最中だった。
生徒会長がアルベルトの名前を呼んだ時、アルベルトが席を離れた事は気付いていた。
もうこの幸せは終わってしまうのかと寂しく感じていた
し、そのすぐ後に同じ席に座る人がいたが、次の人が同じように待機しているのだろうと、作業に集中していたのだ。
「ありがとうございます」
どうにかして声を出したが、椅子を鳴らす程驚いてしまった姿を周りに見られてしまったことが恥ずかしくて、カリーナは周囲から向けられた視線から避けるように生徒会長の元へ向かった。
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