31 / 130
策略
4
しおりを挟む丁寧に応接室に通され、和やかに話は進んでいた。
カリーナは父親に似ているようだった。
髪の色こそ深いアッシュだが、長いまつ毛にはっきりとした目鼻立ち、なにより口元の笑窪が彼女を連想させた。
「ところで、婚約期間を設けないということでしたが、急ぐ理由を聞いても構いませんか?」
王家からの推薦状がひっかかっているのだろう。控えめに訪ねてくるローランドに、アルベルトは背筋はきっちりと伸ばしていながらも少し申し訳なさそうに顔を崩していた。
「どこも同じかと思うのですが、アルベルトには昨年から縁談が多く寄せられており、伯爵家という立場から男爵家から公爵家まで幅も広く、断れない立場だからこそ断ることが出来ているという現状でして、さらに特進科へと進むと伯爵家を継ぐのではなく官僚として身を立てるのではないかと噂されているようでして、さらに縁談が増えておりました」
ベルナルドが話し出すとローランドは顔を顰める事となった。
カリーナからは伯爵家の長男だと聞いていたからだ。
ワーデン家なら安定した税収と、領民からの信頼が高いのでうまくやっていけると思っていたのだが、彼は特進科へと進んだ。それはどういうことなのかと考えて、なるほどと推薦状と結びついた。それが王命なのかと思い至った。
「殿下も婚約者を決められ、カリーナの元へも縁談は止まりません。ご苦労はお察しいたします。しかし、特進科に進んでは伯爵家はどうされる予定なのですか?王家からの官職への指名があったということでしょう。」
ワーデン家に息子が1人しかいないことは知っていた。
養子でもとるのか、子が増える予定があるのかどちらかだろう。しかしそれがうまくいかなければ、当然アルベルトにも負担がかかってくる。それはカリーナにも当然影響するだろう。
「伯爵家の爵位は私が引き継ぎます。官職と爵位を同時に保持し、邁進してまいりたいと思っています。これは王家からの提案でもあります。卒業後は同時に爵位も継ぎ、官職と並行して領地運営に励むことになります。領地と王都の往復で忙しいと思いますが、幸いにも数刻で着く距離に領地の屋敷はありますし、王都にも屋敷があります。自由に使える秘書が2人出来るということなので、何とかなるかと。カリーナには子ができれば領地に残って貰いたいと考えていますが、それまでは王都と行き来することも楽しめるでしょう。子が学園を卒業する時に爵位を渡し、私は官職に専念する予定です。」
思ってもいなかったことにローランドは目を瞬かせた。
アルベルトが官職に上がれば騒がしくなるだろう。待遇からして補佐官いや、将来的には大臣、宰相も視野に入れての指名だろうと推察される。
目の前の学生に、それほどの期待の目が向けられているということに動揺を隠せない。
危険ではないのか。ふと宮廷内の勢力図を思い浮かべる。ラースロー家は保守派として動いているが、近年内務大臣を中心に改革派が暗躍し始めていた。
侯爵家としては伝統を重んじることに賛成して保守派を支援していたが、改革派の言うことも理解できる部分も多かった。アルベルトがどちらの派閥に取り込まれるのかはとても重要なことだった。
「それはとても名誉なこと、大変なことと思いますが、カリーナでは役不足ではありませんか?情勢を考えれば派閥争いに巻き込まれることもあるでしょう。娘がうまく立ち回れるか少々不安が残りますが…」
ラースローが指摘することはアルベルトが懸念していることでもあった。ラースローがここに来て逃げ腰なのがアルベルトにもベルナルドにも分かった。
0
あなたにおすすめの小説
結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。
しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。
友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。
『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。
取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。
彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。
尾道小町
恋愛
登場人物紹介
ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢
17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。
ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。
シェーン・ロングベルク公爵 25歳
結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。
ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳
優秀でシェーンに、こき使われている。
コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳
ヴィヴィアンの幼馴染み。
アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳
シェーンの元婚約者。
ルーク・ダルシュール侯爵25歳
嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。
ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。
ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。
この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。
ジュリエット・スチール公爵令嬢18歳
ロミオ王太子殿下の婚約者。
ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳
私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。
一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。
正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?
砕けた愛
篠月珪霞
恋愛
新婚初夜に男に襲われた公爵令嬢エヴリーヌは、不義密通の罪を被せられた。反逆罪に問われた彼女の一族は処刑されるが、気付くと時間が巻き戻っていた。
あなたへの愛? そんなものとうに、砕け散ってしまいました。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる