62 / 130
気持ち
4
しおりを挟む
いつかクロッカを自分の元に戻すつもりでいるとシュゼインに聞いた時、アルベルトは身体中に怒りに満ちるような感覚に襲われていた。
いつかでは遅いのだと。いつかと言ってる内はそのいつかは来る事はない。
明確なビジョンもなく、ただただ夢物語を願っているだけなのだ。
「お前ではクロッカを修道院へ行かせる事を止める事はできない。諦めろ」
賭けに負けた自分を嘲笑いながらもシュゼインにも失望していた。
自分の見立てが甘かったのだと苦水を飲むことになったのだ。
自分がまだ婚約者であるうちに修道院行きを止めなければならない。
アルベルトはこれまでになく焦っていた。
アルベルトの言葉に漸く追いついたイリアは首を傾げた。では何故そんな話をするのかと。
「君ならカリーナの気持ちが分かるのではないかと思って尋ねて来たんだ」
アルベルトはクロッカを名実ともに妻にすることに決めていた。
しかしそうなると、やはり妻はカリーナだけだと思う自分がいる。
クロッカの言い放った言葉たちが、妻にする事を決めたアルベルトの手を止めさせるのだ。
愛せないのなら妻にするべきではないと。
「仰っている意味がわかりませんわ」
イリアは困惑していた。
眉を寄せ、視線を逸らしたままのアルベルトの様子を伺うように見つめる。
「隠れ蓑ではなく、クロッカを妻に置きたいと考えているんだ。シュゼインにはステファニーを捨てる覚悟も公爵家を敵に回す覚悟もないんだ。官職のみとなる私の妻になっても彼女の才は生かせない。それでも彼女を失いたくないと思うんだよ」
こんなことを話すのは不服だとでも言うように口元を隠し、決してイリアを見ようとはしない。
こんなアルベルトを見る日が来るとは誰が想像できただろうか。
「まさかあなた、恋愛相談をしにこちらにいらしたの!?」
思わず立ち上がってしまったイリアは驚愕していた。
冷静になれば聞きたい事は山ほどある。しかしそれどころではなかった。
目の前にいるのは、カリーナを嵐のように一瞬で奪っていった男だ。
それがハイランス伯爵令嬢を妻に置きたいと考えているのに行動に移さず思い悩んでいる。
しかも、カリーナへの裏切りと考えているのなら妻に置きたいと考えるわけもない。
その選択を絶対にしない男がアルベルトだと思っていたのだ。信じられない話である。
「恋愛と言えばそうかもしれないが、まだ私には娘にしか思えていない。ハイランス嬢にも婚約する前に、自分を愛さない男の妻になるくらいなら修道院にいった方がマシだと言われているんだ。実際今は婚約破棄される寸前の状態なんだ」
あのアルベルトがフラれる寸前とは信じ難い。
ハイランス伯爵令嬢はそれほど凄い娘なのだろう。
自分がアルベルトを見下げていることにここでやっと気づいた。
何事もなかったように座り直して一口お茶を含むと少し冷静さが戻ってきた気がした。
「ハイランス伯爵令嬢は、あなたとの婚約する事を拒否していたような言い方ですが、シュゼインと結ばれる為の婚約だったのでしょう。ハイランス伯爵令嬢はあくまでシュゼインが離婚して、正式に婚姻を結びたいと考えているということですの?今はそれがダメそうだから婚約破棄するとおっしゃっていると…」
イリアはまず、そのありえない情報を整理しようと考えた。事実確認というのはとても大事なものである。
「いや、ハイランス嬢は今でも知らないんだ。シュゼインが全てを捨てる覚悟を持てなければ辛いだけだと思って話していない。ただ私は時間稼ぎのつもりで手元に置いたに過ぎないが、彼女はそれを知らないんだ。2年経っても娘にしか見えないなら婚約を継続するのは無意味だと考えたようで、婚約破棄寸前というわけだ」
右から左へ言葉が流れていくようにイリアの頭には文字が入ってこなかった。
もう一度アルベルトのセリフを頭の中で再生させた。
イリアの頭の中ではクロッカの立場で物語が進んでいた。
いつかでは遅いのだと。いつかと言ってる内はそのいつかは来る事はない。
明確なビジョンもなく、ただただ夢物語を願っているだけなのだ。
「お前ではクロッカを修道院へ行かせる事を止める事はできない。諦めろ」
賭けに負けた自分を嘲笑いながらもシュゼインにも失望していた。
自分の見立てが甘かったのだと苦水を飲むことになったのだ。
自分がまだ婚約者であるうちに修道院行きを止めなければならない。
アルベルトはこれまでになく焦っていた。
アルベルトの言葉に漸く追いついたイリアは首を傾げた。では何故そんな話をするのかと。
「君ならカリーナの気持ちが分かるのではないかと思って尋ねて来たんだ」
アルベルトはクロッカを名実ともに妻にすることに決めていた。
しかしそうなると、やはり妻はカリーナだけだと思う自分がいる。
クロッカの言い放った言葉たちが、妻にする事を決めたアルベルトの手を止めさせるのだ。
愛せないのなら妻にするべきではないと。
「仰っている意味がわかりませんわ」
イリアは困惑していた。
眉を寄せ、視線を逸らしたままのアルベルトの様子を伺うように見つめる。
「隠れ蓑ではなく、クロッカを妻に置きたいと考えているんだ。シュゼインにはステファニーを捨てる覚悟も公爵家を敵に回す覚悟もないんだ。官職のみとなる私の妻になっても彼女の才は生かせない。それでも彼女を失いたくないと思うんだよ」
こんなことを話すのは不服だとでも言うように口元を隠し、決してイリアを見ようとはしない。
こんなアルベルトを見る日が来るとは誰が想像できただろうか。
「まさかあなた、恋愛相談をしにこちらにいらしたの!?」
思わず立ち上がってしまったイリアは驚愕していた。
冷静になれば聞きたい事は山ほどある。しかしそれどころではなかった。
目の前にいるのは、カリーナを嵐のように一瞬で奪っていった男だ。
それがハイランス伯爵令嬢を妻に置きたいと考えているのに行動に移さず思い悩んでいる。
しかも、カリーナへの裏切りと考えているのなら妻に置きたいと考えるわけもない。
その選択を絶対にしない男がアルベルトだと思っていたのだ。信じられない話である。
「恋愛と言えばそうかもしれないが、まだ私には娘にしか思えていない。ハイランス嬢にも婚約する前に、自分を愛さない男の妻になるくらいなら修道院にいった方がマシだと言われているんだ。実際今は婚約破棄される寸前の状態なんだ」
あのアルベルトがフラれる寸前とは信じ難い。
ハイランス伯爵令嬢はそれほど凄い娘なのだろう。
自分がアルベルトを見下げていることにここでやっと気づいた。
何事もなかったように座り直して一口お茶を含むと少し冷静さが戻ってきた気がした。
「ハイランス伯爵令嬢は、あなたとの婚約する事を拒否していたような言い方ですが、シュゼインと結ばれる為の婚約だったのでしょう。ハイランス伯爵令嬢はあくまでシュゼインが離婚して、正式に婚姻を結びたいと考えているということですの?今はそれがダメそうだから婚約破棄するとおっしゃっていると…」
イリアはまず、そのありえない情報を整理しようと考えた。事実確認というのはとても大事なものである。
「いや、ハイランス嬢は今でも知らないんだ。シュゼインが全てを捨てる覚悟を持てなければ辛いだけだと思って話していない。ただ私は時間稼ぎのつもりで手元に置いたに過ぎないが、彼女はそれを知らないんだ。2年経っても娘にしか見えないなら婚約を継続するのは無意味だと考えたようで、婚約破棄寸前というわけだ」
右から左へ言葉が流れていくようにイリアの頭には文字が入ってこなかった。
もう一度アルベルトのセリフを頭の中で再生させた。
イリアの頭の中ではクロッカの立場で物語が進んでいた。
0
あなたにおすすめの小説
結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。
しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。
友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。
『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。
取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。
彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。
尾道小町
恋愛
登場人物紹介
ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢
17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。
ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。
シェーン・ロングベルク公爵 25歳
結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。
ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳
優秀でシェーンに、こき使われている。
コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳
ヴィヴィアンの幼馴染み。
アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳
シェーンの元婚約者。
ルーク・ダルシュール侯爵25歳
嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。
ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。
ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。
この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。
ジュリエット・スチール公爵令嬢18歳
ロミオ王太子殿下の婚約者。
ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳
私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。
一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。
正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?
砕けた愛
篠月珪霞
恋愛
新婚初夜に男に襲われた公爵令嬢エヴリーヌは、不義密通の罪を被せられた。反逆罪に問われた彼女の一族は処刑されるが、気付くと時間が巻き戻っていた。
あなたへの愛? そんなものとうに、砕け散ってしまいました。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる