クロッカ・マーガレット・ハイランスの婚約破棄は初恋と共に

佐原香奈

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ハイランス家の当主であるエドレッドにはクロッカの留学を決定事項として通達し、フェリペはアルベルトを自室に呼び寄せていた。



「伯爵令嬢1人を留学生として帝国にいかせる?そんな事が許されると思っているのか」


「あぁ誰かさんのせいだろう。高位官職のお前の妻ならば一つの噂もたつ訳もなかったのに、この事態はお前の責任だぞ」



フェリペとアルベルトは睨み合いを続けていた。


クロッカを止める手段をアルベルトが持ち得るはずもない。



「今からでも口説き落とせないのか」



フェリペは王族として個人のことに口を出すべきではないと考えていたが、つい口走ってしまった。
アルベルトの顔に明るさは一切なくなる。


「それが出来たらとっくにそうしている。ホルスは帯同しないのか」


フェリペに隣国への留学を提案したのは現在王位継承権第5位のホルス・リタだった。
彼は公爵の地位を与えられ、臣籍降下後は学生時代の留学で得た人脈を生かし、クシュリプト王国との貿易でその地位に見合った評価を得ていた。
王位継承権は臣籍降下しても消えることはない。
彼がクロッカと共に帯同するのであれば、皇帝周辺にも牽制が出来、さらに少しは意図しない噂を抑えられることだろう。



「ホルスには公爵領がある。だが、キャサリンなら利を示せば動いてくれるかもしれない。しかしこちらも相当覚悟をしないといけないぞ」



ホルスは帝国へ帰り公爵となった後、王国の男爵令嬢であったキャサリン・ルフェーベルと結婚した。


ホルスとの結婚後、王国でもっとも力のある商会の一つであるルフェーベル商会は帝国でも販路を広げ、王族お抱えの商会の一つとして、王族に帯同して帝国を回っている。
キャサリンならば本人が納得さえしてくれれば、クロッカの隣に立っても周りから見て不自然ではない。
ホルスも伯爵令嬢として帝国へ連れてくるのは予想していなかったこと。頷いてくれるだろう。



「キャサリンか。ホルスよりもいい案だ。彼女が帯同してくれるなら面倒な事を考えなくてもいいし安心もできる。俺から声をかけよう」



アルベルトはクロッカを護れるならばとキャサリンへクロッカの滞在中の同行を依頼することとなった。
フェリペもアルベルトならばそうするだろうと考えていたため、満足気に笑っていた。




「それで?結婚も許されず、婚約破棄も許されない君はこれから先どうするんだい」



フェリペは珍しくも腕を組み、アルベルトに同情するように目を向けている。
アルベルトはもう両手をあげて降参するしかなかった。



「クロッカはもう官職として自力で上に行くしかないだろう。女性の代表と祭り上げられても個々の思惑は違う。他者よりも多くの期待の上に立たなければならない。期待に応え続けても難しい立場はこの先ずっと変わらない。彼女を仕事の上でサポートすることは出来る。でもきっと、俺では彼女を幸せにすることは出来ないんだろう」



クロッカの吹っ切れたような顔を見た後に、アルベルトの残念そうな顔を見たフェリペは、男というものの方が女々しいと言う言葉が合うのではないかと思っていた。


彼らのタイミングは今ではないのかもしれない。


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