72 / 130
出発
1
しおりを挟む
ハイランス家の当主であるエドレッドにはクロッカの留学を決定事項として通達し、フェリペはアルベルトを自室に呼び寄せていた。
「伯爵令嬢1人を留学生として帝国にいかせる?そんな事が許されると思っているのか」
「あぁ誰かさんのせいだろう。高位官職のお前の妻ならば一つの噂もたつ訳もなかったのに、この事態はお前の責任だぞ」
フェリペとアルベルトは睨み合いを続けていた。
クロッカを止める手段をアルベルトが持ち得るはずもない。
「今からでも口説き落とせないのか」
フェリペは王族として個人のことに口を出すべきではないと考えていたが、つい口走ってしまった。
アルベルトの顔に明るさは一切なくなる。
「それが出来たらとっくにそうしている。ホルスは帯同しないのか」
フェリペに隣国への留学を提案したのは現在王位継承権第5位のホルス・リタだった。
彼は公爵の地位を与えられ、臣籍降下後は学生時代の留学で得た人脈を生かし、クシュリプト王国との貿易でその地位に見合った評価を得ていた。
王位継承権は臣籍降下しても消えることはない。
彼がクロッカと共に帯同するのであれば、皇帝周辺にも牽制が出来、さらに少しは意図しない噂を抑えられることだろう。
「ホルスには公爵領がある。だが、キャサリンなら利を示せば動いてくれるかもしれない。しかしこちらも相当覚悟をしないといけないぞ」
ホルスは帝国へ帰り公爵となった後、王国の男爵令嬢であったキャサリン・ルフェーベルと結婚した。
ホルスとの結婚後、王国でもっとも力のある商会の一つであるルフェーベル商会は帝国でも販路を広げ、王族お抱えの商会の一つとして、王族に帯同して帝国を回っている。
キャサリンならば本人が納得さえしてくれれば、クロッカの隣に立っても周りから見て不自然ではない。
ホルスも伯爵令嬢として帝国へ連れてくるのは予想していなかったこと。頷いてくれるだろう。
「キャサリンか。ホルスよりもいい案だ。彼女が帯同してくれるなら面倒な事を考えなくてもいいし安心もできる。俺から声をかけよう」
アルベルトはクロッカを護れるならばとキャサリンへクロッカの滞在中の同行を依頼することとなった。
フェリペもアルベルトならばそうするだろうと考えていたため、満足気に笑っていた。
「それで?結婚も許されず、婚約破棄も許されない君はこれから先どうするんだい」
フェリペは珍しくも腕を組み、アルベルトに同情するように目を向けている。
アルベルトはもう両手をあげて降参するしかなかった。
「クロッカはもう官職として自力で上に行くしかないだろう。女性の代表と祭り上げられても個々の思惑は違う。他者よりも多くの期待の上に立たなければならない。期待に応え続けても難しい立場はこの先ずっと変わらない。彼女を仕事の上でサポートすることは出来る。でもきっと、俺では彼女を幸せにすることは出来ないんだろう」
クロッカの吹っ切れたような顔を見た後に、アルベルトの残念そうな顔を見たフェリペは、男というものの方が女々しいと言う言葉が合うのではないかと思っていた。
彼らのタイミングは今ではないのかもしれない。
「伯爵令嬢1人を留学生として帝国にいかせる?そんな事が許されると思っているのか」
「あぁ誰かさんのせいだろう。高位官職のお前の妻ならば一つの噂もたつ訳もなかったのに、この事態はお前の責任だぞ」
フェリペとアルベルトは睨み合いを続けていた。
クロッカを止める手段をアルベルトが持ち得るはずもない。
「今からでも口説き落とせないのか」
フェリペは王族として個人のことに口を出すべきではないと考えていたが、つい口走ってしまった。
アルベルトの顔に明るさは一切なくなる。
「それが出来たらとっくにそうしている。ホルスは帯同しないのか」
フェリペに隣国への留学を提案したのは現在王位継承権第5位のホルス・リタだった。
彼は公爵の地位を与えられ、臣籍降下後は学生時代の留学で得た人脈を生かし、クシュリプト王国との貿易でその地位に見合った評価を得ていた。
王位継承権は臣籍降下しても消えることはない。
彼がクロッカと共に帯同するのであれば、皇帝周辺にも牽制が出来、さらに少しは意図しない噂を抑えられることだろう。
「ホルスには公爵領がある。だが、キャサリンなら利を示せば動いてくれるかもしれない。しかしこちらも相当覚悟をしないといけないぞ」
ホルスは帝国へ帰り公爵となった後、王国の男爵令嬢であったキャサリン・ルフェーベルと結婚した。
ホルスとの結婚後、王国でもっとも力のある商会の一つであるルフェーベル商会は帝国でも販路を広げ、王族お抱えの商会の一つとして、王族に帯同して帝国を回っている。
キャサリンならば本人が納得さえしてくれれば、クロッカの隣に立っても周りから見て不自然ではない。
ホルスも伯爵令嬢として帝国へ連れてくるのは予想していなかったこと。頷いてくれるだろう。
「キャサリンか。ホルスよりもいい案だ。彼女が帯同してくれるなら面倒な事を考えなくてもいいし安心もできる。俺から声をかけよう」
アルベルトはクロッカを護れるならばとキャサリンへクロッカの滞在中の同行を依頼することとなった。
フェリペもアルベルトならばそうするだろうと考えていたため、満足気に笑っていた。
「それで?結婚も許されず、婚約破棄も許されない君はこれから先どうするんだい」
フェリペは珍しくも腕を組み、アルベルトに同情するように目を向けている。
アルベルトはもう両手をあげて降参するしかなかった。
「クロッカはもう官職として自力で上に行くしかないだろう。女性の代表と祭り上げられても個々の思惑は違う。他者よりも多くの期待の上に立たなければならない。期待に応え続けても難しい立場はこの先ずっと変わらない。彼女を仕事の上でサポートすることは出来る。でもきっと、俺では彼女を幸せにすることは出来ないんだろう」
クロッカの吹っ切れたような顔を見た後に、アルベルトの残念そうな顔を見たフェリペは、男というものの方が女々しいと言う言葉が合うのではないかと思っていた。
彼らのタイミングは今ではないのかもしれない。
0
あなたにおすすめの小説
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。
しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。
友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。
『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。
取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。
彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。
尾道小町
恋愛
登場人物紹介
ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢
17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。
ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。
シェーン・ロングベルク公爵 25歳
結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。
ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳
優秀でシェーンに、こき使われている。
コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳
ヴィヴィアンの幼馴染み。
アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳
シェーンの元婚約者。
ルーク・ダルシュール侯爵25歳
嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。
ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。
ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。
この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。
ジュリエット・スチール公爵令嬢18歳
ロミオ王太子殿下の婚約者。
ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳
私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。
一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。
正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?
砕けた愛
篠月珪霞
恋愛
新婚初夜に男に襲われた公爵令嬢エヴリーヌは、不義密通の罪を被せられた。反逆罪に問われた彼女の一族は処刑されるが、気付くと時間が巻き戻っていた。
あなたへの愛? そんなものとうに、砕け散ってしまいました。
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる