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帝国
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しおりを挟む「ストラウス公爵夫人、私と一曲踊ってくれないか」
クロッカの去る後ろ姿を見届けていると、サッと周りの男性達が引いていった。
声をかけられた方を向くと皇帝陛下が遠巻きに何人もの側室を伴ってやって来ていた。
「皇帝陛下の誘いを断る訳がありませんわ。私でよければよろしくお願い致します」
側室達の顔を見るに、彼女達がキャサリンに助け舟を出したのだろう。
遠くから嫁いできた彼女達は自領を安定させる為に嫁いできたが、他の国と違いドロドロとした派閥争いを好まない。
それはあまりにも文化や言語が違う為なのだが、正妃や他の側室達と助け合うことで最初の孤独から解放される為だった。
1人では戦いようもないと早々に気付くのである。
「皇帝陛下、お手を煩わせてしまい申し訳ございません」
視界の端にクロッカとアガトンを捉えながら身を任せるように踊る。
しっかりとした指が腰を抱き、安心して身を預けることができた。
「いや、お目付役の君までこうも囲まれては手も足も出ないだろう。明日からは通訳もつくが問題はないか?」
「はい。王国の護衛含めても10人と言ったところ。彼女の安全を考えれば守りは固めるに越したことはありません。それにさすがに全ての地区の言葉を覚えるのは彼女にも無理な話でしょう」
「これまでは長く帝国に属している地区だったからアイナス語も話せる者も多かった。護衛が足りなければ遠慮なく申し出てくれ。何かあってからでは遅いからな」
「ありがとうございます」
「それで彼女はどうだ。この旅は各地の使者たちも泣きを入れるほどだが、問題ないか?」
皇帝陛下も旅を好んでしているわけではない。
自領が膨らみ、仕方なく始めたことだが領民達はその恩恵と、皇帝を見る機会を一生の記念とばかりに喜んでいて、部下から泣きが入っても止めるわけにはいかなかった。
「えぇ、彼女は適応力があるようで、しかも若さからか好奇心旺盛で勉強熱心ですわ。帯同の旅は今のところ問題なさそうです」
「そうか、じゃあ問題はアガトンの方かな」
皇帝補佐として帯同している第二王子の子がアガトンであるが現在の継承順位は13位である。将来的にも皇帝となることはほぼないとされる立ち位置だった。
「同世代の異性がいない旅ですから、仲が良くなることは必然でしょう。問題とまでは考えておりませんわ」
彼も一年したら帝都での学園生活を送ることになる。
それまでの淡い初恋なのだろうとキャサリンは考えていた。
「それならいいが、彼女は結婚せずこちらへ来たんだ。私としてはアガトンを応援していいのならしたいものだが…」
「ハイランス嬢が望むなら別ですが、彼女は真面目で優秀ですが、婚約者のいる身です。皇帝が口を出せば国家間でややこしいことになります。是非控えていただきたいものですわ」
背筋に冷たいものが掠めたかのようにピクリと反応した。
きっちりと言わなければ取り返しのつかないことになる。
彼女達の旅はまだ始まったばかりだ。
キャサリンは無事にクロッカを王国に帰す為にいる。
クロッカをただただ巻き込んだ大人の一人として、キャサリンはもう一度気を引き締めていた。
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