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帰国の知らせ
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白いレースがデコルテから手首までを飾り、白地のマーメイドドレスにブルーの花がいくつも咲き乱れている。膝上から入った幾つもの切り込みからは白いチュール布が垣間見える。
帝国のドレスとは異なる趣向に、視界の隅にいても存在感を感じていた。
「クロッカ!」
頭にはティアラが光り、王女だと主張している。
切れ込みから覗く裾のチュールだけがサラリと風を纏いながら、前を歩いている男性を押し除けるようにクロッカの方へ確実に向かっている。
「キャサリンどうかしたの?」
皇帝陛下が離れていくのを待っていたかのように声をかけてきたキャサリンは、つい先程までどうやってダンスを断りつつホールを抜けるかを考え合っていた姿からは想像も出来ないほど焦っているように見える。
「あぁ本当にごめんなさい。本当になんと謝ったら良いか…」
クロッカの両腕を掴んでいる手は震えている。
俯いているキャサリンまつ毛の間から覗く、居場所を無くしたような挙動不審な瞳を見る限り、とんでもない事が起こったに違いない。
「えっと…ここで話せる事かしら?今聞かない方がいい?」
パーティは始まったばかりだし、緊急事態ならば一時的に抜けても問題はないと思うが、皇帝陛下には一言伝えた方がいいのではないかと、既に会場を出る事を考えていたクロッカだったが、ホールの出口を見ると、ここにいるはずのない人達が小さく見える。
はっきりと顔は見えないが、首筋がびくりと反応して、さりげなく流れていった視線が戻る。
「主人たちが私に内緒でパーティに来ていたのよ…本当にごめんなさい」
「え…えぇ。そんな…謝る事ないわ。公爵だものパーティにいない方がおかしな話でしょう?アガトン殿下だって、参加するはずだったのだし………ところで……私、逃げ出すことは許されるの?」
無意識のうちに後退りし、身体が既に逃げていたのだろう、キャサリンの掴んでいる両腕が少し上がり、キャサリンも一歩前へ足を踏み出す。
「少なくとも陛下へ紹介しなければ帰る事は許されないわ…」
そ、そうでしょうね。
今日は壇上で挨拶までさせてもらって、その上ファーストダンスまで踊ってもらって準主役とも言える扱いをしてもらっておいて、婚約者がこの会場にいるのに、一緒に挨拶をしないわけにはいかないわよね。
ストラウス公爵とそのちびちゃんズの横にいたのはフェリペ殿下だろうし、その横にいたあの背の高いのは、幻の婚約者様のようにみえたのは見間違えじゃなかった。
「手を…離してくださる?」
「何故手を離して欲しいの?」
キャサリンの血走った目がガッと開かれ、掴まれている手に力が入ったのが分かる。
「何故って、分かるでしょう?」
「あなたこそ分かっているでしょう?私がこの手を離さないって」
ホールの出口から脱出できないのならば、確か庭に出る扉があったはずだ。
横目で扉を確認するがホールが広すぎて走ればみっともないし、そもそも目立ち過ぎる。
「キャサリン、激しいダンスの後で頭が熱っているの。外で風を受けたいのだけど」
「そ、そう。私もなんだか矢が刺さったように頭が痛むの。ご一緒するわ」
ごくりと息を飲んでから歩き出した2人に、遠巻きに見ていた男性方が近づいてくる。
「あの、ハイランス伯爵令嬢?」
「すみません。陛下とのダンスで緊張してしまいまして、後程」
「ストラウス公爵夫人!」
「風に当たってきますの。失礼」
声をかけられるたびに遠慮なくぶった斬り、平静を装ってはいたが足速に扉へと向かっていた。
クロッカの左腕にはキャサリンの右手がガッチリと添えられていた。
帝国のドレスとは異なる趣向に、視界の隅にいても存在感を感じていた。
「クロッカ!」
頭にはティアラが光り、王女だと主張している。
切れ込みから覗く裾のチュールだけがサラリと風を纏いながら、前を歩いている男性を押し除けるようにクロッカの方へ確実に向かっている。
「キャサリンどうかしたの?」
皇帝陛下が離れていくのを待っていたかのように声をかけてきたキャサリンは、つい先程までどうやってダンスを断りつつホールを抜けるかを考え合っていた姿からは想像も出来ないほど焦っているように見える。
「あぁ本当にごめんなさい。本当になんと謝ったら良いか…」
クロッカの両腕を掴んでいる手は震えている。
俯いているキャサリンまつ毛の間から覗く、居場所を無くしたような挙動不審な瞳を見る限り、とんでもない事が起こったに違いない。
「えっと…ここで話せる事かしら?今聞かない方がいい?」
パーティは始まったばかりだし、緊急事態ならば一時的に抜けても問題はないと思うが、皇帝陛下には一言伝えた方がいいのではないかと、既に会場を出る事を考えていたクロッカだったが、ホールの出口を見ると、ここにいるはずのない人達が小さく見える。
はっきりと顔は見えないが、首筋がびくりと反応して、さりげなく流れていった視線が戻る。
「主人たちが私に内緒でパーティに来ていたのよ…本当にごめんなさい」
「え…えぇ。そんな…謝る事ないわ。公爵だものパーティにいない方がおかしな話でしょう?アガトン殿下だって、参加するはずだったのだし………ところで……私、逃げ出すことは許されるの?」
無意識のうちに後退りし、身体が既に逃げていたのだろう、キャサリンの掴んでいる両腕が少し上がり、キャサリンも一歩前へ足を踏み出す。
「少なくとも陛下へ紹介しなければ帰る事は許されないわ…」
そ、そうでしょうね。
今日は壇上で挨拶までさせてもらって、その上ファーストダンスまで踊ってもらって準主役とも言える扱いをしてもらっておいて、婚約者がこの会場にいるのに、一緒に挨拶をしないわけにはいかないわよね。
ストラウス公爵とそのちびちゃんズの横にいたのはフェリペ殿下だろうし、その横にいたあの背の高いのは、幻の婚約者様のようにみえたのは見間違えじゃなかった。
「手を…離してくださる?」
「何故手を離して欲しいの?」
キャサリンの血走った目がガッと開かれ、掴まれている手に力が入ったのが分かる。
「何故って、分かるでしょう?」
「あなたこそ分かっているでしょう?私がこの手を離さないって」
ホールの出口から脱出できないのならば、確か庭に出る扉があったはずだ。
横目で扉を確認するがホールが広すぎて走ればみっともないし、そもそも目立ち過ぎる。
「キャサリン、激しいダンスの後で頭が熱っているの。外で風を受けたいのだけど」
「そ、そう。私もなんだか矢が刺さったように頭が痛むの。ご一緒するわ」
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「あの、ハイランス伯爵令嬢?」
「すみません。陛下とのダンスで緊張してしまいまして、後程」
「ストラウス公爵夫人!」
「風に当たってきますの。失礼」
声をかけられるたびに遠慮なくぶった斬り、平静を装ってはいたが足速に扉へと向かっていた。
クロッカの左腕にはキャサリンの右手がガッチリと添えられていた。
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