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帰国の知らせ
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「キャサリンもクロッカも久しぶり。会いたかったよ」
呑気にシャンパンを片手に声を掛けてきたアルベルトに2人はキッと睨みつけた。
しかしいつまでも文句を言っている場合ではないので、仕方なく挨拶回りへ向かうキャサリンとは別れた。
「アルベルト、本当に久しぶりね。久しぶりついでに貴方に最後に送った言葉をもう一度送りますわ。思慮分別。貴方はここにくる前に私に知らせるべきでしたね。憎たらしい再会に殺意すら湧きましたわ」
帝国では仲が良いと言い張っているのだから、揉めるわけにはいかない。
礼装の概念が薄い帝国に合わせた、紺色のスーツにブルーのタイはドレスと合っているようだが、色味が違いすぎてやはり衣装合わせをしてきたようには到底思えない出来栄えだ。
「俺は怒られるとは言ったんだが、殿下が行くと言ったならしょうがないだろう」
「クロッカもそんなに怒らなくてもいいのに…さぁ、皇帝陛下に挨拶に行こうか。到着が遅れたことも謝らなくては」
これが王子でなければ二発くらい頬を叩いてやりたいが、これでも王族である。
シンプルな燕尾服も見ただけで上質だと分かる。
この豪華な招待客の中でも、立っているだけでも存在感があるのは、王子である自分に誇りを持ち、その自信に見合う実績を残してきたからだろう。
彼は紛れもなく王子なのだ。
「フェリペ殿下も私たちと一緒に行くのですか?」
「あぁ。アルベルトは私の秘書として連れてきているからね」
「ややこしいですね。では殿下に紹介していただくついでに私の婚約者であることも伝えて下さい」
私の婚約者であるけれど、何も言わないで来るから、殿下の秘書として入場することになるんだ。
私を巻き込まないで欲しい。
「そんな、ついでみたいに言わなくても良いだろ?」
「アルベルト、私は陛下とダンスを踊った後なのよ?もう一度挨拶させるんですから文句を言わないで貰いたいわ」
王国へ戻ってアルベルトと会ったら、何と言おうかとずっと考えていた。
指輪のこともお礼を言わなければならないが、婚約は情勢を見て解消するのか、ワーデン家側からの婚約破棄をしてくれるのか、その間のパーティはどうするのか。
たくさんのことを考えていたのに、結果はこの再会。
無駄にした時間を返して欲しい。
ホールを回り、来賓へと声を掛けている皇帝陛下に再び声を掛けるのは忍びない。
しかしフェリペ殿下の挨拶と同時と考えれば仕方のないこととして割り切るしかない。
もう少しすればダンスが再び始まってしまうだろう。
皇帝陛下が壇上へ上がる前に声を掛けれれば良いなと考えていた。
「ハイランス伯爵令嬢」
フェリペ殿下の後ろを、アルベルトと共に歩いていると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「アガトン殿下?」
今日はなんだと言うんだ。途中の道で橋の崩落があり、アガトン殿下始め、学園に通う陛下の御子息は不参加だと聞いていた。
条件反射でカーテシーをとれたことは誉めてもらいたい。
「久しぶり会えて嬉しいよ。つい先程到着したんだ。夜会にだけ参加してもよかったんだけど、クロッカに早く会いたくて」
「私も久しぶり会えて嬉しいわ。また背が伸びたんじゃない?もう半年会ってないだけでどんどん大人になっていくわね」
久しぶりに会えた喜びで、難しいことは口から出てこなかった。
陛下も参加することは知らなかったんだもの。
きっと本当に着いてすぐに来たに違いない。
「クロッカ、こちらの方は?」
アガトンの目線を追うと、分かってはいたけどそこにはアルベルトが立っている。
アガトンの為にも彼の前でボロを出すわけにはいかない。
アルベルトの仲は問題ないと思わせなければいけないのだ。
呑気にシャンパンを片手に声を掛けてきたアルベルトに2人はキッと睨みつけた。
しかしいつまでも文句を言っている場合ではないので、仕方なく挨拶回りへ向かうキャサリンとは別れた。
「アルベルト、本当に久しぶりね。久しぶりついでに貴方に最後に送った言葉をもう一度送りますわ。思慮分別。貴方はここにくる前に私に知らせるべきでしたね。憎たらしい再会に殺意すら湧きましたわ」
帝国では仲が良いと言い張っているのだから、揉めるわけにはいかない。
礼装の概念が薄い帝国に合わせた、紺色のスーツにブルーのタイはドレスと合っているようだが、色味が違いすぎてやはり衣装合わせをしてきたようには到底思えない出来栄えだ。
「俺は怒られるとは言ったんだが、殿下が行くと言ったならしょうがないだろう」
「クロッカもそんなに怒らなくてもいいのに…さぁ、皇帝陛下に挨拶に行こうか。到着が遅れたことも謝らなくては」
これが王子でなければ二発くらい頬を叩いてやりたいが、これでも王族である。
シンプルな燕尾服も見ただけで上質だと分かる。
この豪華な招待客の中でも、立っているだけでも存在感があるのは、王子である自分に誇りを持ち、その自信に見合う実績を残してきたからだろう。
彼は紛れもなく王子なのだ。
「フェリペ殿下も私たちと一緒に行くのですか?」
「あぁ。アルベルトは私の秘書として連れてきているからね」
「ややこしいですね。では殿下に紹介していただくついでに私の婚約者であることも伝えて下さい」
私の婚約者であるけれど、何も言わないで来るから、殿下の秘書として入場することになるんだ。
私を巻き込まないで欲しい。
「そんな、ついでみたいに言わなくても良いだろ?」
「アルベルト、私は陛下とダンスを踊った後なのよ?もう一度挨拶させるんですから文句を言わないで貰いたいわ」
王国へ戻ってアルベルトと会ったら、何と言おうかとずっと考えていた。
指輪のこともお礼を言わなければならないが、婚約は情勢を見て解消するのか、ワーデン家側からの婚約破棄をしてくれるのか、その間のパーティはどうするのか。
たくさんのことを考えていたのに、結果はこの再会。
無駄にした時間を返して欲しい。
ホールを回り、来賓へと声を掛けている皇帝陛下に再び声を掛けるのは忍びない。
しかしフェリペ殿下の挨拶と同時と考えれば仕方のないこととして割り切るしかない。
もう少しすればダンスが再び始まってしまうだろう。
皇帝陛下が壇上へ上がる前に声を掛けれれば良いなと考えていた。
「ハイランス伯爵令嬢」
フェリペ殿下の後ろを、アルベルトと共に歩いていると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「アガトン殿下?」
今日はなんだと言うんだ。途中の道で橋の崩落があり、アガトン殿下始め、学園に通う陛下の御子息は不参加だと聞いていた。
条件反射でカーテシーをとれたことは誉めてもらいたい。
「久しぶり会えて嬉しいよ。つい先程到着したんだ。夜会にだけ参加してもよかったんだけど、クロッカに早く会いたくて」
「私も久しぶり会えて嬉しいわ。また背が伸びたんじゃない?もう半年会ってないだけでどんどん大人になっていくわね」
久しぶりに会えた喜びで、難しいことは口から出てこなかった。
陛下も参加することは知らなかったんだもの。
きっと本当に着いてすぐに来たに違いない。
「クロッカ、こちらの方は?」
アガトンの目線を追うと、分かってはいたけどそこにはアルベルトが立っている。
アガトンの為にも彼の前でボロを出すわけにはいかない。
アルベルトの仲は問題ないと思わせなければいけないのだ。
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