10 / 16
ファン代表の求め
しおりを挟む
深い深い池の底にいるような沈黙が続いた。
風ひとつ吹いていないので、木の葉が揺れることもない。
「今、なんと?」
リーリエは耳の穴が開いていることを確認した後、シェーラに質問する。
「シーセル様との結婚は大歓迎。私の理想に最も近い結果と言っていい」
「理想って、そりゃあマーサー卿はシェーラの理想だろうけど、それは私の結婚は関係ないじゃない」
周りに誰もいないことをよーーーく確認した後、シェーラはいつもの口調で話す。
「私は国に帰ったら結婚しなければならないし、友人がシーセル様と結婚してくれたら、その後もこの麗しい姿をたまに見ることが出来るだろう?結婚式のシーセル様はさぞ美しく輝いているだろう。リーリエが結婚してくれなければ、他の女に取られるかもしれない。それは到底許容出来ないな。その女を切り捨ててその辺の枯れ木の栄養分にしてやりたくなる」
「リーリエ、よかったわね。何の憂いもなく結婚出来そうね。この国の女の子が埋められる前に、結婚した方がいいわ」
カナリアはきっと、私がダメならばカナリアが結婚しろと言い出すんじゃないかと心配して押し付けている。
だって、目がとても必死だもの。
早期に危険を察知して逃げているのだわ!
とんでもない理由で、二人から結婚をごり押しされることになるとは思ってもみなかった。
「前向きに考えてもらえると私も嬉しい」
何故こうなったのか、私はその日授業には出ず帰宅した。
縁談の話を確かめずに呑気に授業なんて受けていられなかった。
まさかシェーラがシーセル側につくなんて思いもしていなかったのだから一大事だ。
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
「おぉ!リーリエ、具合が悪いんだって?大丈夫か?」
妙にご機嫌な父が執務室から廊下に出てきた。
「はい。それより、どこぞから縁談の話とか来ていたりしませんか?お父様?」
そう言えば、慌てふためく父はそのまま執務室に戻った。
なんて分かりやすいのだろう。
もちろんそのまま逃しはしない。
「お母様ーー!緊急事態ですー!!」
そのまま廊下で声を張り上げれば、二階から母が慌てて降りてくる。
ヒールで階段をものすごい勢いで降りてくる技術は天晴な代物だ。
「どーしたの可愛いリーリエ!」
つい昨日まで領地で療養していたところ大変申し訳ないが、父を止められるのは母しかいないのだ。
「父が私の縁談を隠し進めようとしているんです!」
「まさか!いくらなんでも、そんなはずないでしょう?昨日婚約破棄が成立したところなのに、いくらあんぽんたんだからって、娘を急いで売るような真似するわけな……えぇえぇ。そうよ。下級貴族にだって世間体くらいはあるのよ?」
母は後ろ手に父の執務室の扉を開けようとするが、その扉が開くことはない。
「あなたっ!ここを開けなさい!一体どう言うつもりなの!?」
バンバンと扉を叩く姿は、嫁入り前は白薔薇の乙女なんて呼ばれていたとは到底信じられない。
可憐な乙女でいたらこの家ではやっていけなかったのだ。
私もそうなのだから母の気持ちはよく分かる。と、母も私を見ては毎日同じことを思っているのだろう。
父を決して信用してはならない。
「マリー!許してくれ!これはリーリエのためでもある!」
父は、ドアが開かないように押さえ込んでいるようで、すぐ近くで声が聞こえる。
「そう…ならば私たちは実家に帰らせてもらうわ!リーリエ、行きましょう」
怒りに満ち溢れた母は、堪忍袋の緒が切れたとばかりに怖い顔でドアから離れ、そのままリーリエの横を通り過ぎようとした。
あまりのことに驚き固まってしまったリーリエの前の扉がバンッと音を立てて開いて、リーリエは別の驚きを味わうことになった。
「マリー…悪かった。君に実家に帰られたら私は生きていけない」
たしかに、母は生家は伯爵家であり、父は大分無理をして母を嫁に迎え入れたと聞いている。
実家に帰ったらお祖父様が絶対に返さないでしょうね…
「娘は婚約破棄したばかりなのよ?分かっているでしょう?」
そんなことを言っていたのに、母は縁談の相手がマーサー伯爵家だと聞くと、顔色を変えた。
「リーリエ、この縁談は少し考えてみてもいいんじゃないかしら?」
もう、この展開も見慣れたようになっていた。
相手は辺境伯家で、本来ならば子爵家に縁談を持ってくるような相手ではなく、縁談を持ってきていると言うことは、家としても爵位を継がない息子の生活を保障し、家と家のつながりを重視した結婚になると言うこと。
中々に美味しい話と言っていい。
「ですが、昨日、すでに彼には断りを入れていますし、お父様も昨日追い出したリーバス様の秘書ですよ?私は嫌です」
「あいつがシーセル・マーサーだと!?」
「まぁ!!」
今頃気付いたのかとガックシと項垂れたリーリエは、冷静になってほんの少しだけ、昨日のことがなくシーセル・マーサーという男から縁談が来ていたら、喜んで飛びついたのではないかなと考えていた。
風ひとつ吹いていないので、木の葉が揺れることもない。
「今、なんと?」
リーリエは耳の穴が開いていることを確認した後、シェーラに質問する。
「シーセル様との結婚は大歓迎。私の理想に最も近い結果と言っていい」
「理想って、そりゃあマーサー卿はシェーラの理想だろうけど、それは私の結婚は関係ないじゃない」
周りに誰もいないことをよーーーく確認した後、シェーラはいつもの口調で話す。
「私は国に帰ったら結婚しなければならないし、友人がシーセル様と結婚してくれたら、その後もこの麗しい姿をたまに見ることが出来るだろう?結婚式のシーセル様はさぞ美しく輝いているだろう。リーリエが結婚してくれなければ、他の女に取られるかもしれない。それは到底許容出来ないな。その女を切り捨ててその辺の枯れ木の栄養分にしてやりたくなる」
「リーリエ、よかったわね。何の憂いもなく結婚出来そうね。この国の女の子が埋められる前に、結婚した方がいいわ」
カナリアはきっと、私がダメならばカナリアが結婚しろと言い出すんじゃないかと心配して押し付けている。
だって、目がとても必死だもの。
早期に危険を察知して逃げているのだわ!
とんでもない理由で、二人から結婚をごり押しされることになるとは思ってもみなかった。
「前向きに考えてもらえると私も嬉しい」
何故こうなったのか、私はその日授業には出ず帰宅した。
縁談の話を確かめずに呑気に授業なんて受けていられなかった。
まさかシェーラがシーセル側につくなんて思いもしていなかったのだから一大事だ。
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
「おぉ!リーリエ、具合が悪いんだって?大丈夫か?」
妙にご機嫌な父が執務室から廊下に出てきた。
「はい。それより、どこぞから縁談の話とか来ていたりしませんか?お父様?」
そう言えば、慌てふためく父はそのまま執務室に戻った。
なんて分かりやすいのだろう。
もちろんそのまま逃しはしない。
「お母様ーー!緊急事態ですー!!」
そのまま廊下で声を張り上げれば、二階から母が慌てて降りてくる。
ヒールで階段をものすごい勢いで降りてくる技術は天晴な代物だ。
「どーしたの可愛いリーリエ!」
つい昨日まで領地で療養していたところ大変申し訳ないが、父を止められるのは母しかいないのだ。
「父が私の縁談を隠し進めようとしているんです!」
「まさか!いくらなんでも、そんなはずないでしょう?昨日婚約破棄が成立したところなのに、いくらあんぽんたんだからって、娘を急いで売るような真似するわけな……えぇえぇ。そうよ。下級貴族にだって世間体くらいはあるのよ?」
母は後ろ手に父の執務室の扉を開けようとするが、その扉が開くことはない。
「あなたっ!ここを開けなさい!一体どう言うつもりなの!?」
バンバンと扉を叩く姿は、嫁入り前は白薔薇の乙女なんて呼ばれていたとは到底信じられない。
可憐な乙女でいたらこの家ではやっていけなかったのだ。
私もそうなのだから母の気持ちはよく分かる。と、母も私を見ては毎日同じことを思っているのだろう。
父を決して信用してはならない。
「マリー!許してくれ!これはリーリエのためでもある!」
父は、ドアが開かないように押さえ込んでいるようで、すぐ近くで声が聞こえる。
「そう…ならば私たちは実家に帰らせてもらうわ!リーリエ、行きましょう」
怒りに満ち溢れた母は、堪忍袋の緒が切れたとばかりに怖い顔でドアから離れ、そのままリーリエの横を通り過ぎようとした。
あまりのことに驚き固まってしまったリーリエの前の扉がバンッと音を立てて開いて、リーリエは別の驚きを味わうことになった。
「マリー…悪かった。君に実家に帰られたら私は生きていけない」
たしかに、母は生家は伯爵家であり、父は大分無理をして母を嫁に迎え入れたと聞いている。
実家に帰ったらお祖父様が絶対に返さないでしょうね…
「娘は婚約破棄したばかりなのよ?分かっているでしょう?」
そんなことを言っていたのに、母は縁談の相手がマーサー伯爵家だと聞くと、顔色を変えた。
「リーリエ、この縁談は少し考えてみてもいいんじゃないかしら?」
もう、この展開も見慣れたようになっていた。
相手は辺境伯家で、本来ならば子爵家に縁談を持ってくるような相手ではなく、縁談を持ってきていると言うことは、家としても爵位を継がない息子の生活を保障し、家と家のつながりを重視した結婚になると言うこと。
中々に美味しい話と言っていい。
「ですが、昨日、すでに彼には断りを入れていますし、お父様も昨日追い出したリーバス様の秘書ですよ?私は嫌です」
「あいつがシーセル・マーサーだと!?」
「まぁ!!」
今頃気付いたのかとガックシと項垂れたリーリエは、冷静になってほんの少しだけ、昨日のことがなくシーセル・マーサーという男から縁談が来ていたら、喜んで飛びついたのではないかなと考えていた。
0
あなたにおすすめの小説
婚約破棄に、承知いたしました。と返したら爆笑されました。
パリパリかぷちーの
恋愛
公爵令嬢カルルは、ある夜会で王太子ジェラールから婚約破棄を言い渡される。しかし、カルルは泣くどころか、これまで立て替えていた経費や労働対価の「莫大な請求書」をその場で叩きつけた。
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる
葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。
アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。
アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。
市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。
「犯人は追放!」無実の彼女は国に絶対に必要な能力者で“価値の高い女性”だった
佐藤 美奈
恋愛
セリーヌ・エレガント公爵令嬢とフレッド・ユーステルム王太子殿下は婚約成立を祝した。
その数週間後、ヴァレンティノ王立学園50周年の創立記念パーティー会場で、信じられない事態が起こった。
フレッド殿下がセリーヌ令嬢に婚約破棄を宣言した。様々な分野で活躍する著名な招待客たちは、激しい動揺と衝撃を受けてざわつき始めて、人々の目が一斉に注がれる。
フレッドの横にはステファニー男爵令嬢がいた。二人は恋人のような雰囲気を醸し出す。ステファニーは少し前に正式に聖女に選ばれた女性であった。
ステファニーの策略でセリーヌは罪を被せられてしまう。信じていた幼馴染のアランからも冷たい視線を向けられる。
セリーヌはいわれのない無実の罪で国を追放された。悔しくてたまりませんでした。だが彼女には秘められた能力があって、それは聖女の力をはるかに上回るものであった。
彼女はヴァレンティノ王国にとって絶対的に必要で貴重な女性でした。セリーヌがいなくなるとステファニーは聖女の力を失って、国は急速に衰退へと向かう事となる……。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜
桐生桜月姫
恋愛
シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。
だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎
本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎
〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜
夕方6時に毎日予約更新です。
1話あたり超短いです。
毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる