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〈第一章〉出会いと冒険
裏で動く聖騎士団一行
しおりを挟むそんな頃王都の下層部から数キロ先にある村で一休みしていた男騎士とその仲間達がいた。馬に水をやり辺りに情報を聞き回っている。
なんでもこの国の王が奇病だという。その奇病を治すための癒してを探し求めて今、王都の騎士団が動いていたのだ。
先に戻り馬に寄りかかっている青い髪色の男が後から帰ってきた青年に声をかける。
「どうだ?何か噂を聞けたか?」
そう呟く男は瞳を開けて黄金色と赤色の瞳をギラつかせた。その瞳に怯えつつも青年は調査の報告をした。
「は、はい。例の癒やしてとなる人物の情報はまだ。」
「そうか。時空の変動はここらには無かった。だとするともっと下のほうか。」
「団長、どうされますか?もう数日調査を範囲を広めてしますか?」
「あぁ、ウォルトを呼んでくれ。スコル、来い。」
主人の声が聞こえていたのか屋根下で大人しく待っていた黒い狼は片目を開け伸びをすると物言わずに主人の下へ駆け寄っていく。そんな彼を視認した男は馬へと足をかけて乗って歩いて行く。狼を使いにやらせて帰りを待つ間スコルという狼を褒めた。
「本当に賢いですねースコル。」
「お前の狼は水と風だったか?」
「そうです。カヌと言う雌の狼です。少し大人しくて困りますけどいざって時は頼りになります。」
「そうか。」
「団長の狼は何の加護を受けたんですか?」
そう聞く新入りの頭をぐしゃりと撫でた。それに怒る新入りは撫でた後に駆け足で去る男を追いかけるように馬を早歩きさせる。
「ちょ!何するんですか!」
「お前にゃ早いって事だ。アーサー。」
「よぉー新入り~何団長に頭よしよしされてたんだ?」
いつの間にかそばを歩いていた男にからかわれた。そんな彼を怒ろうとした瞬間団長から怒号が飛んできた。
「アレル!アーサーに絡む前に報告だ。」
「はいはい。やっぱここらへんも何も変わらずですね。ただ一つの情報だとだいぶ遠くの村の酒場で動乱があったらしく近々王都に指名手配犯が護送されてくるそうで。」
「また冒険者の連中か。まったく。危険を顧みない連中だな。」
「口を慎め。あいつらにも食いブチがないと生きていけないからだ。我々王都の兵だけが戦いに立ち向かう物ではないんだぞ。覚えておけ。アーサー。」
「は、はい。」
「まだこの世界を王都の中だけで知ろうとしてもわからねえものなー」
「アレルさんには言われたくないですよ!」
「は、俺はこの世界を知ってるぜ?」
「ほう、それは、女を口説くための技か?アレル。」
いきなり後方から声をかけられ肩をすくめるアレルという男の首に腕を回し現れた男。その男に絡まれ苦笑いをしているとげんこつが振ってきて頭にたんこぶを一個もらったアレルが涙を流して後方をついていく。カヌから癒やしの回復術をかけてもらいながら心配そうにアレルの隣を歩いていた。
「カ、カヌ;そんなに回復をかけないでよ;僕の狼だろ?」
「まったく。妙な連中を連れることになったな。団長さんよ。」
「言うな。もう俺は騎士団の団長じゃない。」
「またまたそんなこと言って。眉間の皺が増えるぞ。まだ若いだろ?お前も……」
「うるさい。それより、報告。」
「は、騎士団の団長を外されてもその気難しい仕事の癖は抜けねえな。なんもなしだが南の酒場で騒動があったって言っていたな。」
「お前は一言多いんだよ。ここしばらくこの辺には異常はないらしい。ただ南の方にある村で人買いの連中が一斉捕縛されたらしい。」
「ほう、またもや冒険者の手柄か。やるねぇ。」
タバコを一つ懐から出して口にくわえると火をつけた。それを煙たそうに睨むシェードに男は気にせず話を続ける。
「それで?どうする?まだ調査するか?もう三日も王都から出ている。様子を見に来たがその様子じゃまだ旅を続ける気か?」
「あぁ。その騒動のあった村へ赴くつもりだ。それまで王都を頼む。」
「戻ったら一杯奢ろう。星見の連中が騒いでいる通り本当に来訪者が来たのなら100年ぶりの来訪者だ。」
「普通の来訪者なら死んでいるが次元の歪みを感知した星見が言うほどだ。間違いなく何かがこの世界にまた来たんだ。」
「そういえば父親にもらったペンダント、どうしてるんだ?」
「さあな。もっと小さい頃になくした。」
「は、そうか。まあ良い報告を待っているよ。これが終わればお前もまた騎士団長へ戻れるんだ。」
「ウォルト、その話はやめてくれ。俺は進んで王都の騎士団長を降りた。今は一塊の放浪騎士だ。だから後は頼んだ。」
「シェード…」
「じゃ、またな。おい!行くぞ!お前ら!!」
別れの挨拶を交わすと後方にいる2人に声をかけ馬を走らせていってしまった。その背中をウォルトは少し心配そうに見つめた。
噂の根源となっていた酒場へと向かい後々キリが重要人物とされる。がそんなことは知らずに夜も更けた頃1度だけ目を覚ましたダリエルが椅子に座ったままぶら下げた首飾りを持って見つめている姿のキリを見つめた。その瞳は何かを思い出そうとしているような不思議な目をしていた。
「(この首飾りがこの世界の軍のもの。と言うことは王都に行けばわかるのか?)」
「キリ?」
その声にハッとして首飾りをしまうと目が覚めたダリエルに話しかけた。
「ダリエル、ようやく目が覚めたか?」
「あぁ。だが、まだ体がだるいんだ。」
「そうか。そうだ、さっきここの亭主のマーサさんがあんた用にってスープを持ってきてくれた。」
入り口付近に置いてあるまだ冷めていないスープとパンを彼の前にトレーごと置いた。
「口に合えばいいがソレ食べて休んだらそのけだるさも回復するよ。」
「あぁ。じゃあいただこうかな。本当においしそうな香りだよ。」
「ふふ、お手製のスープ明日からもたらふく食べれるよ。しばらくの間この酒場で働くことが決まったからね。」
「そうか。ってえ!?」
急な展開に驚くダリエルにキリは困った笑みを浮かべながら続ける。
「このまま食い扶持無しで生活するよりギルドにいた方が情報網としては色々入ってくる。稼ぎ仕事もたくさんあるそうだ。」
「そうなのか?」
「あぁ。この世界がどんな物か見るためにここにしばらく滞在するつもりだ。」
「まあ、お前がそうしたいなら好きにすればいいさ。」
「ふふ、あぁ。というか、すごい食欲だな。」
「話している間にうますぎて止まらなかったんだ。」
すべてを食べてしまったダリエルにキリは呆れながらそのトレーを引きあげた。それを下に持って行こうとする時にダリエルが彼女を引き止めた。
「なぁ、お前、その首飾り本当に骨董品か?」
「?どうしてそう思うの?」
「あちらにいた時それが震えてるのを俺も見た。何かの現象なら危険すぎる。捨てた方がいいんじゃないか?」
「それはできないよ。なんだか手放してはいけないと思ってしまう。」
「そうか…なら、仕方ないんだが。あまりその首飾りに頼ってるといつか本当に危険な目に遭うかもしれない。気をつけるんだぞ?」
「わかってるよ。ダリエルもわかってるでしょ?危険な修羅場なんか何度だって乗り越えてきたじゃない。今回だって大丈夫よ。きっとね。」
「あぁ、そうかもな。」
「休めない?」
「いいや、お前はどこで寝るんだ?」
「隣の部屋だよ。今はあんたが起きるまで見守ってたんだ。」
「そうか…迷惑かけちまったみたいだな。」
「いいよ。それよりまた明日ね。おやすみ。」
「あぁ、おやすみ。」
そう言ってキリは部屋を後にした。遠のく足音を聞きながらダリエルは大きなため息をつき布団に潜り、少し小汚い天井を見上げて一言呟いた。
「一緒には寝てくれない…か。」
ダリエルが思っていた恋心は彼女には届いていない。いつも単なる相棒としか思わない彼女に少し彼は傷ついていた。
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