Ex冒険者カイル

うさぎ蕎麦

文字の大きさ
36 / 105
4章

28話「遺跡調査」

しおりを挟む
「ねぇ~カイル~?」

 だから何だよルッカさ。

「わ!? なになに、何だよ!? ルッカさん!?」

 振り返ると、そこには先の光体を顎の下に移動させたルッカさんの姿があった。
 おまっ、ふざけんな!

「へっへっへ、良い事見付けちゃった~♪」

 悪戯っぽい笑みを浮かべながら物凄く楽しそうにしているルッカさん。

「その辺にしておいたら?」

 セフィアさんが呆れながら仲裁をした。

「す、すみません、カイルさんがあまりにもモテてるのが羨ましく思ってちょっと仕返ししちゃいました。 ま、まぁこういう事は稀に良くある事で、安全対策を怠った末路ですから気にしても仕方がありません」

 人間の白骨死体を目の前にしても特に臆する事無く説明するエリクさんだ。

「エリク君の言う通りね、この人はレンジャーを連れずに宝箱の開錠をしたら罠に掛かって死んだみたい、そんな自業自得で死んだ人間の事を気にしても意味は無いわね」

 セフィアさんの言った通り、白骨死体の周囲を眺めて見ると近くに開かれた宝箱が置かれていた。
 残念ながら他の冒険者が罠を解除して回収したのか、中身は空っぽだった。

「時と場合によってはこの遺体から武器を拝借する必要もあります。今はもっと強力な武器がありますから良いのですが」

 エリクさんの言い分は分かりますけど、剣にとりついた怨霊にたたられる気がするのですが。

「Dランク冒険者みたいね」

 セフィアさんは、白骨死体が持っていた冒険者カードをそれとなく確認した。

「ある程度魔物も討伐し、実力も付き始めて少し調子に乗り始めた頃でしょうか? おそらく無鉄砲な方だったんですね、この人だってこんな結果になるって分かってここに来た訳ではないでしょうが」
「フフ、こういう事を教えるのもベテランの仕事よ」

 セフィアさんは、まるで俺が考えている事を分かっているかの様に言った。

「回復薬も解毒薬も持っている形跡がないわ、これじゃ死にに来たものじゃない? 誰か忠告してくれる人は居なかったのかしら?」
「分かりません、この手の人達は例え冒険者ギルドの人達、ギルドメンバーの人達が忠告をして止め様としても聞き入れないと思います。逆に周りに止められるような無謀な冒険を成功させたことを悦とする人達も居ますから」
「そうなのよね、私達も過去の経験から命を落とすかもしれないと忠告は出来るけど、私は親で無ければそんな権限も無いから以上干渉する筋合いは無いのよ、忠告無視して突撃して生還されたらいよいよもって私達の話は聞かなくなる、けど、遅かれ早かれそういう冒険者は命を落とす事になるわ」

 セフィアさんがルッカさんを見ながら言っている辺り、これは彼女に対しての忠告だろう。

「どうやらこの武器は鋼製ですね、武器を新調して有頂天になってここにやって来たのでしょう」
「そうみたいね、さっ行きましょ」

 俺達は元冒険者に対して軽く黙祷を捧げると先へ進んだ。

「荒れてますね、恐らく魔物の仕業でしょう。昔はこの一帯も緑が溢れる大地だったみたいで、この神殿には毎日沢山の巡礼者が訪れていたみたいです」

 確かに、俺が学校で勉強した歴史にもそうやって書いてあったっけ。
 魔物の力のせいで徐々にこの辺りから緑が失われ、砂漠化が進んだって。
 後は、ある日突然物凄い魔力を持つ鉱石が見つかり、それのせいって説もあったかな。

「あ、宝箱ねー?」

 更に歩き続けたところで見つけた小部屋の奥にある宝箱をセフィアさんが見つけた。

「え?」

 この遺跡って幾ら何でも色々な冒険者が探索してると思うから宝箱なんて今更残ってるとは思えないのだけど。

「ははは、いかにもって感じですね」
「そうねぇ? 魔物が擬態してるとか魔物含めた誰かが仕掛けた罠と考えるのが妥当な線ね、けれど金持ちの道楽で設置された可能性も僅かながらあるのよね」

 やっぱそうだよね。
 でも、金持ちの道楽で設置って面白いパターンもあるんだなぁ。

「確かに、レンジャーを目指す人を絶やさ無い為にも定期的に宝箱を配備している謎の組織の話は聞いた事ありますね」
「そ、罠と分かってても、もしかしたら宝物があるかもしれないってワクワク感が堪らないのよね~、で、明らかに初心冒険者用の宝箱って分かった瞬間そっと閉じるのも意外と楽しいのよね」

 確かに、初心冒険者にとってのお宝ってセフィアさん達からしたら大した事無いモノだよなぁ。

「宝箱の開錠に失敗して爆発させちゃったけど、プリーストの防御魔法のお陰で助かった事もあったわね~あー懐かしい」
「ははは、その話、聞いた事あります」

 随分お気楽に言ってくれるけど、それってプリーストが居なかったら死んでませんか?
 うーん、セフィアさんみたいな性格だからこそレンジャーって職業が務まるのかもしれないなぁ。
 そう言えば、ルッド君は宝物に関してどう考えてるんだろうか?

「じゃ、折角だし空けてみましょうか?」
「お任せします」

 セフィアさんは、道具を取り出し宝箱の開錠を試みた。

「あーはいはい、これは空けた瞬間毒針が手に刺さる罠ねぇ、比較的簡単な罠だけどきっとさっきの冒険者はこれが毒針とすら気付かないでそのまま放置してたら毒が回ったのかもね」

 セフィアさんの鮮やかな手捌きで宝箱の罠は解除された。

「はは、中身は切ない物ですね」

 エリクさんが宝箱の中身を確認すると、そこには幾ばくかのお金が入っていた。
 確かに俺からしたら数日分の食費になるけど、ここまで来て罠を解除して出て来た物にしてはショボイと思うのは否めない。
 いや、本当はもっと入ってたけど、先に空けた人がご丁寧に罠を元に戻して少しだけお金を残してくれたのかもしれないけど、それはそれで嫌がらせ以外の何者でもないと思う。

「ま、宝箱なんてそんなものよ」

 セフィアさんがフフッと笑って見せると宝箱のあった小部屋を後にし、神殿1階部分の調査を再開した。

「うーん、この神殿は中央にある大広間をベースとして、外周に小部屋が設置されている感じですね、その大広間の中央部分に少し大きめの柱があるのが少しだけ気になりますが」

 エリクさんがそう言う通り、宝箱が安置されていた部屋と似た様な小部屋が幾つもあった。
 それ等も同じ様に宝箱が安置されていたり、何も無い部屋だったり、俺達が今住んでる家に配備されている風呂場じゃないかと思うモノだったりと様々な小部屋があった。

「めぼしいモノは何もなかったわね」
「そうですね、まだ1階部分ですしそんなものでしょう」
「そうね、2階に行きましょう」

 俺達は、階段を使い2階へと登った。
 階段を登った先に俺達を待っていた物は特に何も無く、第一印象は1階とあまり変わらなかった。

「カイルさん、魔法を使う魔物と戦った事はありますか?」
「いえ、無いですけど」
「そうですか、それでは少し実戦経験を積んでみましょうか!」

 と、エリクさんが言う。
 遠くを見ると杖を装備した小柄の魔物が居た。
 だが、先手必勝とルッカさんが突撃し俺もそれに続く。
 ルッカさんの性格が幸いし、敵は魔法を使う間も無く一瞬で魔石へ変化した。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ

Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。 理由は決まって『従妹ライラ様との用事』 誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。 「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」 二人の想いは、重なり合えるのだろうか …… ※他のサイトにも公開しています。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

【完結】悪役令嬢ですが、断罪した側が先に壊れました

あめとおと
恋愛
三日後、私は断罪される。 そう理解したうえで、悪役令嬢アリアンナは今日も王国のために働いていた。 平民出身のヒロインの「善意」、 王太子の「優しさ」、 そしてそれらが生み出す無数の歪み。 感情論で壊されていく現実を、誰にも知られず修正してきたのは――“悪役”と呼ばれる彼女だった。 やがて訪れる断罪。婚約破棄。国外追放。 それでも彼女は泣かず、縋らず、弁明もしない。 なぜなら、間違っていたつもりは一度もないから。 これは、 「断罪される側」が最後まで正しかった物語。 そして、悪役令嬢が舞台を降りた“その後”に始まる、静かで確かな人生の物語。

処理中です...