Ex冒険者カイル

うさぎ蕎麦

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4章

31話「不穏なエリク」

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「えーっと、カイルさんでしたっけ?」

 仕方無くリンカさんの前に行くと、妙にやる気が無さそうな態度をしていた。
 いや、初めて会った時のリンカさんはこんな感じだったっけ。

「ランクEで適当な依頼をお願いします」

 正直、自分に害が無ければどうでも良いのでいちいち気にせず依頼の受注を行った。

「はぁ~エリク様って素敵ですよね? カイルさんって新人冒険者と一緒に行動してくれますし、何よりハイウィザードですしランクも高いんですよね!」
「えーっと、いやまぁ、そうですね、すごく良い人って俺も思いますよ」

 手当たり次第女の子に手を出すとか、キツイ言葉を受けるとなんか喜んでるってのは黙っておこう。

「でも、エリク様って良い人すぎるじゃないですか? 私、エリク様が悪い人に騙されないか心配なんですよ」

 リンカさんが琥珀色の瞳をうるうるとさせながら力説している。

「俺もエリクさんが悪い女性に騙されないか心配ですね」

 その悪い人は俺の目の前に居る様な気がするが、言うのは止めておこう。

「やっぱりカイルさんもそう思いますよね! ほら、あの、シュバルツサーヴァラーのギルドマスター居るじゃないですかー?」
「確かダストとかいう人だっけ?」
「そうです! あのいけ好かないウィザードの!」

 へぇ? ダストってリンカさんからも嫌われてるんだ。
 エリクさんやルッセルさんに暴言吐いていて性格は多分悪いと思うけど、あんなのでもギルドマスターだから、リンカさんが望むものは持っていると思うけど。

「今朝方行き成りヴァイスリッターにやってきてエリクさんに暴言吐いてたよ」
「そうですか! やっぱ最低ですよ! 幾らお金を稼げても私はあの人嫌いです」
「俺も好きになれないよ」
「ですよねー、そうですよねー、良かったーカイルさんがまともな人で、今日の依頼はこの辺りが良いんじゃないですか?」

 リンカさんが依頼書を渡した。
 要求通り、内容は俺に取って楽勝な魔物だった。
 折角だし合体魔法の練習でもしてみようか。
 リンカさんに見送られ冒険者ギルドを出た俺は目的の魔物が居るセザール平原に向かった。
 早速『溶岩矢(マグマアロー)』を試してみたけどあまり上手く行かなかったが、何回か試す内に『炎矢(ファイアアロー)』と同じ位の威力は出せるようになった。
 また、このマグマ・アローは対象に命中させると、その足場にマグマを展開させられるからその場に留めさせられればマグマの熱で継続してダメージを与えられそうだ。
 続いて炎と氷を合体させてみた所予想通り水の矢が完成された。
 水で出来ているせいかあまり堅くなく、魔物に命中させてもダメージを与える事が出来ないみたいで使い道はあまり浮かばなかった。
 今日の依頼を終え、ギルドハウスへ戻るとエリクさんがいつになくそわそわしていた。

「あれ? エリクさんどうしたんですか?」
「い、いえ? な、何でもありませんよ」

 俺が話掛けた瞬間目線を逸らしたぞ?何か気になるが?

「あらぁー? もしかしてエリク君、女の子でも出来たのかしら?」

 近くに居たセフィアさんが間髪入れずに茶々を入れた。

「そ、そうです、そうですよ、僕にもやっと春が訪れたんですよ」

 何か目を泳がせてるのが気になるけど、でもリンカさんがエリクさんに興味示してたしリンカさんと上手く行ったのかな?

「ねぇボウヤ、エリク君に何かあったか知らない?」

 エリクさんの態度を可笑しいと思ったのかセフィアさんが俺の耳元で囁いた。

「冒険者ギルドの受付嬢がエリクさんに興味示してましたけど」
「ふーん? 珍しいわね、エリク君に興味を持つ女の子なんて」
「ははは、そう言う訳ですから僕はでーととやらに行ってきますね」

 エリクさんが俺達から逃げる様にヴァイス・リッターの外へ出た。

「感情こもって無かったわねぇ? 女の子以外に隠すような事って何かあるかしら?」
「賢神の石とか?」
「そうね。全く、マスターの命令位守りなさいよ」

 セフィアさんが呆れながらため息をついた。

「ダストとかいう人って知ってます?」
「さぁ? ゴミみたいな感じがする名前だけど誰なの?」
「シュバルツ何とかと言うギルドのマスターなんですけど」
「そう言えばそんなちんちくりんも居たわねぇ」

 どうやらダストはセフィアさんからも嫌われてるみたいだ。

「リンカさんもそうでしたけど扱い酷いんですね」
「仕方ないわよ、ウチのギルドマスターと違って人望のじの字も無いし、何か聞いた事あるって思ったらゴミって印象が出てきた位よ」
「今朝エリクさんに対して酷い事言ってましたしね」
「あら? あのゴミとエリク君が接触してたの?なら少しエリク君の後をつけるわ」

 セフィアさんが何か名案を思いついたみたいだ。
 絶対に拒否権が無いと分かった俺は適当に笑って誤魔化すが、やっぱり拒否権が無いのでそのまま無視されてエリクさんの後を追う事になった。
 エリクさんがヴァイス・リッターを出てから大した時間は経っていない、俺達は急ぎ足で外に出るとやや遠くながらも右手方向にエリクさんの背中が見えた。

「後をつけるにはちょうどいい距離、転移魔法を使われない事を祈るだけね」

 軽々しく言うセフィアさんであるが、ベテランレンジャーからしたらこういうのは慣れっこなのだろうとも思う。

「あら? 思った通りシュバルツサーヴァラーに向かってるんじゃない?」

 エリクさんの後を追いながらニヤニヤしながらセフィアさん。
 うーん、ここに来たって事はセリカさんと会いに行くって事なのかなぁ?
 少なくともリンカさんの可能性は無さそうなんだけど。
 
「やっぱりあの時の娘なんですかね」
「かもねぇ~エリク君も、もっと素直になればいいのにね~」
「十分過ぎる程素直だと思うんですけど」
「クス、それもそうね、。カイル君もウィザードの女の子でも捕まえてみたらどうかしら?」
「俺はそれよりも合体魔法や魔法剣の練習が大事ですよ」
「あら? そんな事言っちゃっていいの? ルッカちゃん、ああ見えてヴァイスリッターの男連中からは人気が高いのよ? 可愛い上に料理が上手いのは大きな武器なのよね」

 ルッカさんが? 確かに学生時代から男からモテてはいたから今更不思議でも無いけど。

「フフ、居なくなってから気付く大切なモノ、ってのはよくあるわねぇ~、でもボウヤは可愛いプリーストも居たわね。料理こそ壊滅してるけど優しいし、何ならお姉ちゃんも一緒に頂いちゃったら?」
「確かに可愛かったり美人だったりって娘達が多いですよね、この前街中の女の子を見てそう思いましたよ」
「随分のんきなのね、早くしないとみんな誰かに取られちゃうわよ?」
「と言われましても俺は自分の鍛錬で忙しいですし」
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