Ex冒険者カイル

うさぎ蕎麦

文字の大きさ
40 / 105
4章

32話「追跡エリク」

しおりを挟む
 ここで、エリクさんがシュバルツ・サーヴァラーに辿り着いた。
 エリクさんは周囲の様子を伺い、何も無い事を確認し入り口の扉をノックした。
 程無くして、入り口の扉は開かれ中から俺の知らない1人のウィザードが現れた。

「ボウヤ、ああ言う娘は興味ある訳無いよねぇ?」
「特にありませんし、あの娘だって俺に特別興味持たないと思いますよ?」
「あらあら? ボウヤ知らないの? 女の子の間ではボウヤを取り合って熾烈な取り合いが行われてるのよ?」
「ははっ、まさか?」
「フフ、まぁ良いわ、ボウヤの面白い情報を得られただけでも今日は十分ね」
「いや、エリクさんは」

 面白い情報ってなんなんだって。

「冗談よ。エリク君中に入ったわね。外側から聞き耳立てるわ」
「え?」
「大丈夫よ、ヴァイスリッターにだって似た様な事してくる人達居るもの、お互い様よ」
「そうですか」

 セフィアさんは、周囲の様子を伺い問題無いと判断すると俺と一緒にシュヴァルツサーヴァラー建物の近くに移動し、内部の様子を聞き始めた。

「ダストが賢神の石どうのこうの、の話してるわねぇ、あら? 怪しい魔方陣解いてやるから鍵寄越せって言ってるわ」

 鍵って事はホールス・ソーラとキース・クレッセントの事だがそれは俺の手元にある。

「賢者の石をうまく扱えたらエリク君にも力を貸すだってさー」
「約束守る気はしませんね」
「別の子に話し始めたわね。冒険者は普通の依頼を失敗しても死ぬしどうこうって言ってるわ」
「何だか意味深ですね」
「シュヴァルツサーヴァラーに入れるだけ光栄で、名誉を元に命を失っても本望だってさー」

 もしかしなくても、シュバルツ・サーヴァラーのギルドメンバーが例の魔方陣に触れて命を失う事に対して躊躇いが無く、その上でそれを行使させようとしているとか?
 いや、幾ら何でもまっとうなパーティギルドがそんなことする訳ないよな?
 ダストって奴だってギルドマスターで、ああ見えても国王軍に所属しているからそんな事は無いと思いたいけど。
 しかし、なんだかはらわたが煮えくり返りそうな気がして来たな。

「さて、これだけ情報が拾えれば十分ね、撤収しましょう」
「え?」
「フフ、これ以上話を聞かせてボウヤが暴走しちゃったら困るもの」
「はい」

 どうやら、セフィアさんには俺の抱いている感情を悟られてしまった様だ。
 セフィアさんに従いヴァイス・リッターのギルドハウスへ戻る事にした

「あら? デートはどうだったかしら?」

 俺とセフィアさんがギルドハウスに戻ってしばらく経った所でエリクさんが戻って来た。

「え? い、いや、そ、その」
「失敗ね。エリク君だし仕方ないわ」

 口籠りながら目を伏せるエリクさんに対し、それを分かった上で言うセフィアさんである。
 さて、今さっき把握した情報は本人に直接言うのかルッセルさんに秘密裏に報告するのか、セフィアさんはどうするのだろうか?

「ところでエリク君、セリカちゃんと再会出来たかしら?」
「え? え? いえ、その、セリカさんは、見当たりませんでした」
「あら? あれだけ興味津々だったのに? じゃ、他の女の子を漁ったのかしら?」
「そ、そうです!」

 セフィアさん? もしかしてエリクさん揺さ振っている?

「ふーん? いつものエリク君ならストレートに落胆してると思うのよねー」
「いや、その、今日は疲れてて」

 セフィアさんがニッと怪しげな笑みを浮かべて。

「あはは、ゴメンね、お節介なアドバイスをしてあげたくて少しばかりエリク君の後つけちゃったの」
「!」

 その言葉を聞いた瞬間、エリクさんが目を見開いて暫く呆然と立ち尽くした。

「い、幾らセフィアさんでも、よ、余計なお世話ですよ!」

 エリクさんは怒って何処かへ行ってしまった。

「いっちゃった。 それにしても相談でもしてくれればまだ良かったんだけどね。マスターに報告するのは悩むわ」
「そうするしかないんですかね?」
「そうねぇ、強大な力を目の前にすんなり引き下がる事なんて誰だって難しい事だからそれは仕方が無いと思うし、私だって駆け出しレンジャーの時賢神の石が出されたら平常心でいられないと思う」
「そんなもんですか」

 賢神の石を前にしても興味を抱かない俺が異端に思えて来たな。

「あの子もまだ若いからねぇ~エリク君騙されそうな気がするのよ」
「セフィアさんも十分若いと思いますけど」
「ウフ。ありがとね。やっぱ、マスターに報告するべきね」

 セフィアさんはルッセルさんに今回の件を報告した。

「マスターは、エリク君を見ておいて欲しい、その様子次第でマスター自身がどう動くか決める、ボウヤは出来るだけ私と行動してくれって言ってたわ」
「そうですか」
「良かったわね、綺麗なお姉さんと一緒に居られるそうよ?」
「え? いや、その」
「クスクス、冗談よ」
「そ、そうですか」

 ギルドマスターであるルッセルさんの指示なら従う。
 それにしても、隙あらば茶化してくるのはセフィアさんらしいと言えばセフィアさんらしい。 

「まっ、最近面白い事無くて暇だったから丁度良いわ、明日からが楽しみね」

 現状をポジティブに受け止めるセフィアさんだ。
 翌日、俺とセフィアさんは早速エリクさんの様子を見る事にした。

「それにしても暇よねぇ?」
「そうですね」

 アリアさんがいつも居るテーブルにお邪魔しながら遠巻きにエリクさんを眺めていたが、彼が外出すらしようとしなかった。

「もっとこう、派手に行動起こしてくれれば私達も楽なんだけど」
「そうですね」

 と、一人勉学に集中しているアリアさんの前で言うセフィアさんだ。

「それにしてもアリアちゃん、毎日飽きずに勉強してるわねぇ」
「そうしなければ生き残れませんから」
「そうね、沢山の魔法を覚えるのも大事よ」
「攻撃魔法の事をエリクさんに教えて貰いましたから」

 アリアさんは手元にある本をペラっとめくりながら呟いた。
 その内容を覗いてみると『風刃(ウィンドカッター)』の使い方について書かれていた。

「あら? プリーストの貴女が? 頑張るわねぇ」

 セフィアさんも勉強熱心なアリアさんに肯定的な様子だ。

「あらゆる状況に対応する為です」
「そうね、前衛の子達が守り切れない時は必要になるものね」
「はい」
「それで、エリク君、貴女に余計な事しなかったのかしら?」

 珍しくまともな会話を展開していたと思ったらセフィアさんはいつも通りの事を言い出した。

「いえ、特に」
「ホント?」
「はい」

 おっと、エリクさんがギルドハウスの外へ出そうだぞ?
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ

Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。 理由は決まって『従妹ライラ様との用事』 誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。 「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」 二人の想いは、重なり合えるのだろうか …… ※他のサイトにも公開しています。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

【完結】悪役令嬢ですが、断罪した側が先に壊れました

あめとおと
恋愛
三日後、私は断罪される。 そう理解したうえで、悪役令嬢アリアンナは今日も王国のために働いていた。 平民出身のヒロインの「善意」、 王太子の「優しさ」、 そしてそれらが生み出す無数の歪み。 感情論で壊されていく現実を、誰にも知られず修正してきたのは――“悪役”と呼ばれる彼女だった。 やがて訪れる断罪。婚約破棄。国外追放。 それでも彼女は泣かず、縋らず、弁明もしない。 なぜなら、間違っていたつもりは一度もないから。 これは、 「断罪される側」が最後まで正しかった物語。 そして、悪役令嬢が舞台を降りた“その後”に始まる、静かで確かな人生の物語。

処理中です...