Ex冒険者カイル

うさぎ蕎麦

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4章

34話「賢神の石の行方」

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「どうやら、私が報告を行った上層部以外の組織が動き、入手をした模様です」
「ふーん、少し面倒な話ねぇ?」

 まさか、エリクさんが!?
 いや、そんなハズはないと思いたい。

「そうなります」
「賢神の石を欲しがるウィザードって山程居るよねぇ」
「そうですね、国王軍の中にもその様な考えを持つ者も多いでしょう、しかし安定した仕事を失うリスクと天秤に掛けて実行出来る者は稀でしょう」

 一体誰が賢神の石を半ば強引に奪ったんだろうか? 腕の立つ人間だとは思うんだけど。

「けど、何者かってのが気になるわねぇ」
「そうですね、それを確かめる為、セフィアさんとカイルさんとで現場へ行きましょう」

 ルッセルさんが指示を出すと、ルッカさんからキース・クレッセントを借りに行った。
 無事借りる事が出来ると、転移石を使い神殿へ向かう事となった。

「あら? 賢神の石の間の入り口が空いてるわね」
「ホールス・ソーラもキース・クレッセントもここにあるのに変ですね」
「賢神の石が持ち出されたせいかもしれませんね」

 俺達はルッセルさん先導の下、賢神の石が封印されていた部屋に入った。
 台座の周囲に展開されていた魔法陣は消え、安置されていた賢神の石の姿はない。
 その上方で鈍い光を放つ球体が虚しさを物語っている。
 が、それよりも、部屋の中には5人のウィザードが地面に突っ伏していた!
 その中にはエリクさんの姿とジャイアントゾンビを召喚したネクロマンサー、セリカさんの姿もあった。

「ちょっと!」

 セフィアさんが掛けつけ、彼女達の脈を調べる。
 どうやら死んでいる訳では無さそうでセフィアさんはほっと一息ついた。
 生存を確認した所で俺が彼女達に『治療術(ヒーリング)』を掛けた。
 俺のヒーリングを受けた人達は体力を取り戻したのかゆっくりと立ち上がった。

「ふむ、これは何があったのでしょうか?」

 ルッセルさんが、エリクさんに近付き尋ねた。

「す、すみません、ルッセルさん。ある役所の人よりここに来いと言われました。この部屋に入って暫くするとまるで僕が来るのを待っていたかの様にダストと彼女達がやって来ました。ダストは彼女達に命令をすると半ば無理矢理魔法陣の中に彼女達を押し込めました。すると、魔法陣が彼女達の魔力をみるみると吸出し、魔力を奪いつくされた彼女達はその場に崩れます。それでも魔法陣が消えなかった為、今度は僕が無理矢理その中に押し込まれ、魔力を奪い取られました。そして最後はダスト本人の魔力を魔法陣に与えた所で魔法陣が消え去りました。魔法陣を壊したダストはそのまま賢者の石を奪って逃げました」
「ふむ、上層部への報告が必要ですが、エリクさんに指示をした役所の人間が怪しいですね、ダスト殿の事ですから彼女達はそう言う事でしょう」

 ルッセルさんの言う、そう言う事がどういう事なのか分からないけども、多分ウィザードの人達に配慮してるんじゃないかって思う。

「ひとまずこれを」

 ルッセルさんがエリクさんに魔力回復アイテムを手渡した。
 受け取ったエリクさんはお礼を言い、それを飲み干すと安堵の溜息を付いた。

「どうですか?」
「その、魔力が戻りきらないって言いますか」
「ふむ、例の魔方陣の力で魔力の最大値が削られてしまった感じでしょうか?」
「恐らく」
「彼女達は?」

 ルッセルさんが、3人のウィザードを指差しながら尋ねた。

「ルッカさんに近い魔力か下手したらそれ以下かも知れません」
「新人冒険者以下の魔力ですか」

 ルッセルさんが腕を組みながら少々思案した。

「ふ、ふざけるな犬っころ! このあたしが新人冒険者以下になるわけねぇだろ!」

 自分が新人以下という言葉を聞いたセリカさんが大声で叫んだ。
 しかし、既に大きく体力も消耗しているせいで大きく息をする事になってしまう。

「ちょっと!」

 その様子を見て、俺は再度『治療術(ヒーリング)』をセリカさんに掛けた。

「ちっ! またアンタかよ! あたしに情けを掛けて何がしたいんだ!」
「威勢は良いみたいですね、この分なら問題ないでしょう」
「お前は! ヴァイスリッターのギルドマスターか!」
「私がヴァイス・リッターのマスタールッセルですが、貴女方はシュバルツ・サーヴァラーのウィザードでしょうか?」
「ちっ! だから何だって言うんだよ!」
「ふむ、ダスト殿の性格を考えるところ、あなた達は用済みでしょう」

 ルッセルさんは彼女達に配慮してる訳じゃないみたいだ。
 でも、ルッセルさんの言う通りなら、ダストは幾らアーティファクトの入手とは言え同じギルドの人間を使い捨てたと言う事になる。
 酷い奴とは思っていたが、こういう現実を見せられると胸糞悪くなってくる。

「丁度ウィザードチームを編成したいと思っていましてね、宜しければどうでしょうか?」
「グッ、何であたしがお前何かに!」
「そうですか、では残り御三方は如何いたしましょう」
「お願いします」

 セリカさん以外のウィザードは、シュバルツ・サーヴァーラーへ戻ったとしても自分達が用済みと判断したのだろう。素直にルッセルさんの申し出を受け入れた。

「あの」

 エリクさんがセリカさんを説得しようと声を掛けたみたいだが。

「何よ! 犬っころの分際で!」
「すみません」

 物凄い速度で遮断されてしまった。

「みゃーお」

 セリカさんの肩に乗っかっていたみー太君が、ストン、と地面に降りるとトコトコとエリクさんの方に近付いた。

「ちょ! みー太君!」
「みゃーお」

 エリクさんに近付いたみー太は、しっぽをふりふりさせながら瞳をうるうるとさせセリカさんを見つめている。

「チッ、勘違いするなよ! みー太君がどうしてもつってるから従ってやるんだからな!」
「ご好意に感謝致します」

 ルッセルさんがセリカさん達にサッと一礼した。

「あら? 良かったわね、エリク君?」
「ななな、なんの事ですか!?」

 セフィアさんの茶化しに対してエリクさんが身振り手振りで惚けた振りをする。
 それじゃ何の事かバレバレに思うけども。

「チッ、犬っころの分際でそんなにみー太君が良いのかよ!」
「いえ、その、そ、そうです、はい」

 どうやらセリカさんはエリクさんがみー太君と一緒に居られる様になった事を嬉しく思っている、と思っているみたいだ。

「フフッ、これからが楽しそうね」
「それでは、転移石で一旦ヴァイスリッターに戻りましょう」

 兎も角、エリクさんが無事なのは良かった。
 後はダストが賢神の石をどうするかが気になるところだけど、嫌な予感しかしない。
 俺達は、ルッセルさんの転移石によりヴァイス・リッターへと帰還した。
 ギルドハウスに戻り、落ち着いた時間を取り戻したところで、

「中々大変そうねぇ」
「そうですね」

 セフィアさんの言う通り賢神の石が奪われてしまった事によりこれからどうなるのか俺も大変に思う。
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